「またか」の衝撃が続いている。一年前の安倍晋三前首相を思い起こさせる福田康夫首相の突然の退陣表明が政界を揺るがしたと思えば、今度は角界である。
日本相撲協会による抜き打ちの尿検査で、ロシア出身の兄弟力士から大麻の陽性反応が出た。警視庁は相撲部屋を家宅捜索し、任意で事情聴取した。二人は大麻との関係を否定しており、現在詳しい検査の結果待ちだ。
八月には大麻取締法違反容疑で、ロシア出身の元幕内若ノ鵬が逮捕されている。協会としては「他にはいない」との証しを得て再出発したかったところだろうが、疑惑を広げてしまった。
事実とすれば、国技を愚弄(ぐろう)する由々しき事態だ。元若ノ鵬逮捕の教訓は生かされず、協会の対応に問題を残す。しかも、弟の力士は日本相撲協会の北の湖理事長の部屋所属だ。「不祥事を再発させないことが私の使命」と語っていた理事長の責任は重い。
相撲部屋は親方が弟子との生活の中で技術とともに相撲文化を伝える場である。外国人力士が居並ぶ状況からは、短期間で強くなる効率性を重視して相撲道の教育を怠っている状況も見え隠れする。
不祥事のたびに仕切り直しを繰り返してきた角界。もはや、鋭い立ち合いで抜本改革の大技を見せない限り、観客は納得しない。待ったなしだ。