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【主張】雇用開発機構解体 実のある職業訓練実現を
厚生労働省所管の独立行政法人「雇用・能力開発機構」の改廃論議で、茂木敏充行革担当相は行政減量・効率化有識者会議にたたき台を提示した。機構を「解体」し個別の事業ごとに存廃を判断するとの内容だ。
具体的には、同機構が運営する中高生向け職業体験施設「私のしごと館」や職業訓練指導員の養成を目的とする職業能力開発総合大学校を廃止し、全国62カ所の職業能力開発促進センターを都道府県に移管する方向を示した。
政府は昨年末に閣議決定した独立行政法人の整理合理化計画で、機構本体について「存廃を1年をめどに検討」としていた。厚労省と機構側は解体に反発しているが、「行政の無駄ゼロ」を推進するためにも解体すべきだろう。それを雇用政策の抜本的見直しにつなげてほしい。
機構の前身は炭鉱離職者の再就職斡旋(あっせん)を目的に、昭和36年に設立された雇用促進事業団である。コスト意識がないままに、保養施設事業などを拡大した末に大赤字を抱えるなど、失敗事業が少なくない。「私のしごと館」も入場者が少なく毎年度赤字を計上し、雇用保険料で穴埋めする状態で、廃止は妥当といえる。
職業能力開発総合大学校についても卒業生のほとんどが職業訓練指導員にならない現実がある。他に指導員資格取得制度もあるから、大学校を廃止しても問題はあるまい。
政府は今年7月末に「5つの安心プラン」を掲げ非正規労働者支援を決めた。総合経済対策でも柱のひとつとしてフリーターの正社員化を掲げている。そうした政策を実現するためにも、機構の解体と事業の地方移管は有効でなければならない。
それには技能向上につながる実践的な職業訓練が重要だ。とくに、地場企業との連携を強め、地方の実情にあった職業訓練を行う必要がある。
例えばドイツを参考に平成16年度から始まった、職業訓練を受けながら企業で働くデュアルシステム訓練はまだまだ工夫の余地がある。公共職業安定所が実施している職業紹介事業の民間開放の拡大も依然として課題である。
相談から訓練、就職までを一貫して支援する実のあるシステムをどう実現するか。厚労省は機構廃止に反対するのではなく、そのための政策を練り上げることだ。