場面が変わった。
五月は相変わらず敬礼のポーズのままだが、俺は目を剥いた。
卑猥で低俗な落書きが体中びっしりと描き込まれている。
思わず目を覆いたくなるような無様な姿で、五月は路上に立たされていた。
「お、おめかし完了であります…」
涙声で、五月は言った。
「これから大勢の人に、生まれ変わった私の姿を見て貰います」
拘束もされずに外へ連れ出されたと言うのに、五月は逃げる素振りも見せない。
なにか弱みを握られているのか…。
そんな俺の考えを読んだかのように、五月が言った。
「私のおなかの中には…爆弾が仕込まれています…」
「逃げたり助けを求めたりしたら、どかんです…」
「私は…私はまだ…死にたく無いです…」
「また…圭くんに会いたいです…」
目を潤ませながら、五月が言う。
「圭くん…見ていてね…私の頑張るところ…」
「私は一人で行かなきゃならないけど…ちゃんと隠しカメラで撮ってくれるからって…」
言い終わると、五月は後ろを向き、とぼとぼと歩き始めた。