警察が言うには、五月は俺と別れた直後に何者かに連れ去られた可能性が高いらしい。
重要な目撃証言も無ければ、身代金請求や脅迫の電話も掛かってきていない。
五月の事を思うと居ても立っても居られず、授業が終わると街中を飛び回って五月を探した。
意味の無い事だと分かってはいたが、俺に出来ることなんて、他には何も無かった。
進展の無い捜査に苛立ち、何度も眠れない夜を過ごし━━━
━━━そして事件から1ヶ月が過ぎた。
眠い目をこすりながら帰宅し、玄関の郵便受けを覗くと、新聞と一緒に茶色い封筒が入っていた。
宛名は俺。
瞬間的に目が覚めた。
五月の字だ。
几帳面な細っこい字。
10年間見続けた字だ。
間違いようが無かった。
俺は自分の部屋に飛び込むと、引き千切るように封筒を開けた。
中には数枚のDVDが入っていた。
DVDには油性ペンで1から順番に番号が書かれている。
しばらく逡巡した後、俺は震える手で1と書かれたDVDをパソコンにセットした。