北海道で発覚した聴覚障害偽装疑惑で、道警は近く、実態とかけ離れた重い障害の認定を行った虚偽診断書作成の疑いで、札幌市の耳鼻科医(73)の医院をはじめ、関係先の家宅捜索など強制捜査に乗り出す方針を固めた。道警は、この医師の診断を受けて障害者手帳や障害年金の交付を受けた約600人を対象に聴取していた。
一連の疑惑では、問題の医師の診断で約800人が最重度の聴覚障害と認定されて障害者手帳を取得した。しかし、道や札幌市などの面談の結果、大半の人が認定基準にあてはまらないことが判明。約700人が手帳を返還する事態となっていた。
道警はこのうち聴取可能な約600人を対象とし、すでに半数から事情を聴いており、一部の人から「医師が実際よりも重い診断をした」との証言も得ている。医師が最重度の聴覚障害に該当しない患者に対し、虚偽の診断書を作成した疑いが強まったと判断した模様だ。
手帳の取得者らによると、複数の仲介役の人物から「簡単に手帳が手に入る」などと声をかけられ、集団でこの医師のもとに連れていかれたという。仲介役には数万〜数十万円の謝礼を渡すことが多く、医師に「小さな音に反応したら障害を認定できない」などと助言されたこともあったという。
医師側はこれまで、行政や報道機関に対し「患者が症状を偽った詐病で、自分もだまされた」などと主張している。
道警は、身体障害者福祉法違反容疑や刑法の虚偽診断書作成容疑での医師の立件の可否に加え、仲介役や手帳取得者についても刑事責任の有無を判断するとみられる。