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海外調査報告


東京都議会海外調査報告
(12月1日)

    都議会民主党調査団 大沢 昇



 平成十八年都議会海外調査の報告をさせていただきます。
 都議会民主党の岡崎幸夫、いのつめまさみ、大西さとる、私、大沢昇の四名は、去る十月十二日から二十一日までの十日間、ブラジル連邦共和国のサンパウロ州、パラナ州を訪問し、エネルギー施策、環境施策、交通施策、都市計画などの調査を行ってまいりました。

 以下、調査の概要についてご報告申し上げます。
 サンパウロ州では、州環境局、エタノール製造工場、近郊農業と環境保全の現場、そして日本人移民の歴史に触れてまいりました。
 ブラジルは、一八八八年の奴隷廃止により、奴隷にかわる労働力としての移民の受け入れを始めました。二〇〇八年には日本人移民百周年を迎えますが、資料館では、なれない土地で苦労と工夫を重ねて生み出した生活が当時のまま残されていて、日本人移民の生活と社会背景を学ぶことができました。
 我々の先輩は、他国の移民に比べ行儀がよく、むだ口をきかず、おとなしく整列をし、静かに食事を待つ姿に、ブラジル人からとても高い評価を受けたそうであります。現在でも、日本人は信頼できると、ブラジル人の高い評価を得ています。日本を離れ、異国の地で苦労した日本人移民の方々に頭が下がります。
 日本で暮らしている私たちは、日本人が持っていた勤勉で奥ゆかしい心を時代とともに置き忘れてきてしまったのではないでしょうか。日本のよき文化、精神がブラジルの地で残っておりました。

 まず、エタノール関係を申し上げます。
 ブラジルでは、一九七三年の石油危機を契機に、サトウキビを原料とするエタノールによって石油を代替する国家アルコール計画が実施されました。まず、無水エタノールをガソリンに二〇%混合し、自動車の燃料として使用を始め、その後、一九八〇年には、含水エタノールを一〇〇%燃料とする自動車が販売されました。一九八五年にはエタノール生産量は年間で百億リットルに達し、自動車燃料の約半数を賄うまでに発展をなし遂げました。
 現在では、各自動車メーカーから、ガソリン、エタノール、それらのいかなる割合での混合燃料にも対応可能なフレックス燃料車が販売され、ガソリンとエタノール価格の変動に応じて燃料を変更できるフレックス燃料車が主流となっております。
 エタノール製造工場においては、世界最大級の会社でありますコザン社の工場を視察してまいりました。この工場は、徹底したエネルギーの再利用を行うとともに、エタノール製造過程から排出される廃棄物も徹底して再利用して、一トンのサトウキビから平均八十五から九十リットルのエタノールをつくり出しますが、発生する廃棄物がほとんどないことに驚きました。

 東山農場においては、近郊農業の現場を視察してまいりました。この農場は、安全な作物の生産、自然環境の保護、社会への貢献を使命とした姿勢に感銘を受けてまいりました。
 また、この農場では、不審者の侵入を防ぐため、防犯上の塀や鉄条網を設けず、雑木林で農場を囲み、もともとその土地に生息しているタランチュラや毒蛇が結果的に侵入者を防いでいるというユニークな取り組みをしておりました。人に害を与える動物を排除するのではなく、きちんとすみ分けをして、さらに防犯に用いている共生の現場を見てまいりました。

 続いて、パラナ州では、州都のクリチバ市とフォース・ド・イグアス市において、都市計画、公共交通、世界遺産、環境保護について視察をしてまいりました。
 フォース・ド・イグアス市では、世界第二位の発電能力を持つイタイプー水力発電所で、超巨大ダムによる環境負荷を徹底的に調査研究し、生態系への配慮、自然動物の保護、森林のケアなど、環境保護の現状を視察をしてまいりました。
 また、三十二万ヘクタールの広大な自然が広がる世界遺産のイグアス国立公園は、年間百万人の観光客を迎え入れる世界的に有名な公園で、生物多様性、天然資源の保全と、それらの合理的かつ持続的な利用による、将来及び現世代の生活の質の向上の両立が提唱されております。この目的達成のため、北海道の約一・八倍に相当する保護区を設定するとともに、その管理体制の強化を図り、生物多様性の保全、自然環境保全のための活動を多岐にわたり実施しております。
 保護区の中でも、国立公園、州立公園は、厳正な保護、管理を実施するために、居住を含む入場者数の制限や経済活動の禁止等、さまざまな規制を設けて保護地域の保全に努めております。公園内を移動する手段として、電気自動車やトロッコ等、自然環境に配慮した観光振興の現場を視察してまいりました。

 続いて、パラナ州の州都であるクリチバ市において都市計画を視察してまいりました。
 クリチバ市は、この二十年余り、市を挙げて計画的なまちづくりを進めてきた結果、ラテンアメリカで最も美しい町の一つといわれるようになり、都市計画の模範とされております。
 二十数年前は、クリチバ市も大変な交通渋滞、大気汚染、スラムの増加などの問題に直面しておりました。交通渋滞を地下鉄の整備で解決するには予算面での制約があり、バス路線の整備での問題解決に取り組みました。バス路線整備の特徴としては、第一に、道路の半分を、緊急車を除き終日バスが走る専用路線につくりかえるという徹底したバス専用車線の確保であります。その結果、朝夕のラッシュもバスがおくれることなく、利用者から信頼性も高まりました。
 第二の特徴は、バスの停留所に、電車でいうところのプラットホームを設け、切符の販売と検札を行い、電車のように一斉に乗降を行うことで、停車時間を十秒程度にできることであります。そのためにバスの車体に大きな扉が複数設けられていたり、三両編成の車両があったりと、車両にも工夫が施されておりました。
 第三に、三本の環状線と四本の放射道路をつなぎ、交差する乗りかえ地点では大きなターミナルをつくり、プラットホームから出ない限り、一枚のチケットで乗りかえ自由で、どこでも時間どおりに移動できるバスシステムが構築をされておりました。
 結果、多くの人が自家用車を使わなくなり、交通渋滞や大気汚染の解決、市の収入への寄与に結びついたそうであります。
 交通施策のほかにも、ごみを市民に収集してもらうことにより、町の美化とスラムの解消を同時になし遂げたり、市民一人当たりの公園の面積を六十倍以上にふやした都市計画を推進した、当時の市長と担当者から詳しく話を聞くことができました。

 つけ加えますが、都市計画を行った担当者は日本人であります。
 以上、概略の報告とさせていただきます。
 なお、今回の詳細は、後日、海外調査報告書として取りまとめ、配布させていただきます。
 オブリガード。ご清聴ありがとうございました。
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