米国を震源地とした景気減速の波が世界に広がってきた。経済協力開発機構(OECD)は2日、日本や欧州の2008年の成長見通しを下方修正した。新興国でも成長に陰りが見える国が増えている。世界的な成長鈍化が続けば、外需依存度が強い日本の景気の下振れにつながりかねない。世界経済の行方をこれまで以上に注意深く見守る必要がある。
OECDの今回の見通し改定で注目されるのは、欧州の景気の先行きに慎重な見方を示した点だ。米国発のサブプライムローン(信用力の低い個人向け住宅融資)問題の影響で欧州の金融機関が痛手を受けただけでなく、欧州発の住宅バブルが各地で崩壊していることが大きい。
英国、スペイン、デンマークなどではすでに住宅価格が下落しているが、こうした波がほかの国にも広がり始めている。ドイツをはじめとした主要国では年内は基本的にゼロ成長になるとOECDはみている。
OECDは米国の成長見通しについては上方修正したが、これは4―6月期の実質成長率が、個人への税の還付などの効果もあり、予想より高くなったことによる。住宅価格下落や金融機関の自己資本不足という根本的な問題はなくなっておらず、本格回復はなお見込めない。
景気減速は先進国にとどまらない。新興諸国はこれまで、米国景気が悪化しても高成長を続けてきた。だが、対米輸出の鈍化が最近目立ってきたほか、資源高に伴うインフレの悪影響で内需も減速し始めた。
もっとも、明るい材料もある。世界経済の足を引っ張ってきた原油高が一服していることだ。ただちに物価上昇率の低下につながらないにしても、インフレ懸念が薄れて企業や消費者心理は好転するかもしれない。インフレへの警戒感から閉ざされていた米欧の金融緩和が選択肢として浮上してくる可能性もある。
ただ、原油価格がどこまで下落するかは見えない。銀行間の取引金利が高止まりしていることでも明らかなように、米欧の金融不安や、それに伴う金融の引き締まりはなお続いている。引き続き不透明な状況が続くとみておいた方がよさそうだ。
日本が景気後退に陥った主因は、資源価格の上昇に伴う海外への所得流出と輸出の悪化だ。海外景気の減速は輸出をさらに押し下げるが、原油価格の下落が続けば企業収益の改善や消費者心理の改善につながる公算が大きい。こうした外部環境の変化が日本経済にどう影響してくるかを冷静に見極めることが、日本の経済政策当局者には求められる。