8月の日朝実務者協議で合意した拉致問題の再調査開始が大幅に延び、「可能な限り秋まで」としていた終了は不可能となる見通しとなった。外務省幹部が明らかにした。福田康夫首相の辞任表明が原因だが、新首相就任後も直後の衆院解散・総選挙が予想されるなかでは北朝鮮側が再調査開始に踏み切るかどうかは不透明。福田政権下の合意が白紙になる可能性も強まっている。
外務省幹部は「北朝鮮は様子を見る。日本の都合と言われればそうだ。秋までという結果が遅れるのはやむをえない」と語った。
8月の合意では再調査について「迅速に行われ、可能な限り秋には終了する」とし、開始と同時に日本が制裁を一部解除することで合意していた。
ただ新首相の決定前には日本側が制裁解除する政治的な判断は困難。日本が制裁解除しない可能性があるのに、北朝鮮は再調査を開始しないとの見方が強まっていた。
外務省幹部は「事務方では判断できない」として、当面は日本側から再調査を開始するよう求める考えもないことも明らかにした。
外務省は「北朝鮮から連絡はない」として認めていないが、北朝鮮から何らかの連絡があった可能性もある。
一方で、新首相選出後も早期に衆院解散・総選挙が行われる見通しで、さらに北朝鮮が政権の行方を見定めようとする態度に出る可能性が強い。8月の合意は事実上空文化し、衆院選後の新政権が白紙からの仕切り直しを迫られる可能性もある。【須藤孝】
毎日新聞 2008年9月3日 21時37分(最終更新 9月3日 23時33分)