勝手に思ってくれる

 昨日は元同僚が我が家に遊びに来ていました。私たちは入社当時から気が合い、よく食事をしたり、旅行に行っていたのですが、彼女は結婚を機にずっと遠くまで引っ越してしまい、今はなかなか会えません。ですから、こうしてたまに会って、色々と積もる話が出来るのが嬉しい。

 ところで、彼女はかけがえのない人の一人ではありますが、彼女に話していない事はそれなりにあります。例えば、私の子供たちもその一つです。

 「この前、子供たちが泊まりに来たの。母が検査入院で、面倒を頼まれたのよ」と言いましたら、「そうなの。二人とも元気そうだった?」と気遣わし気に聞いてきました。子供がいる事は知っていますし、母親に育てさせている事を知っています。しかし、どうしてそのような事情になっているのかを彼女は知りません。職場の人も大半がそうです。別にどのような事情なのかを隠しているわけではまったくないのですが、誰も「どうして?」と聞いてこないのですね。だから私もその先を言わない。面白いもので、知っている人たちは「人には言えない大変な事情があるに違いない」と勝手に思ってくれているのです。決して「あの人って、母親失格」とは思わない。

 幸か不幸か、私は他人様には人格者に見られる事が多いです。これは自慢ではありませんし、別に外に対して取り繕っているわけでは無いのですよ。他人様が勝手に私の像を作ってくれるのですから、私の責任ではないですね。

 人の本当の顔などは、判らないものなのです。でもこうして、元同僚の彼女は私を何年も慕い、親友だと思ってくれていますし、私もそのつもりなのですから、別にいいのでしょうね。

検索ワード

 日記を書き始めて、3ヶ月。どのような検索ワードで来られる方が多いのかといいますと。

 1,川窪 麻衣子「ある日常」
  なぜか、鉤括弧付きという丁寧さ。おそらく、テキスト庵の表示をコピーして検索で来られているのでしょう。遠回りするのには、何か深い事情があるかもしれませんね。わざわざご苦労様です。

 2, 川窪麻衣子
  これも、ピンポイントですね。試しに私も検索をしてみたのですが、表示される名前はここの日記と、どこかの趣味の掲示板に書き込んでいる同姓同名の方だけでした。ちなみに、キルトにはまったくもって興味がございませんから、アレは私ではないです。

 3,ある日常
  誰かの日記を読みたいと思った時、『ある日常』ほどシンプルで的を射ているタイトルは無いように思います。ですから私はこのタイトルをとても気に入っているのですよ。

 4,余韻とは
  塚田との記事を書いた時ですね。

 5,彼女への手紙
  検索件数の多い事。

 6,間接 照明 寝室
  どうやら、知りたい情報は私の例の日記には無いでしょうね。だけど、これも結構検索で来る方が多いです。

 7,やり方 自殺 硫化水素
  これも、知りたい情報は載っていませんから、気の毒ですね。でも硫化水素で自殺は止めて下さいね。どうせ死ぬのなら、どこか山奥で一人で死になさい。貴方とはまったく関係の無い希望溢れる人たちを巻き込むのは愚かというものです。

 少数派としてのワードは…
 ・女のいかせ方
  こんな事を調べている時点でおかしな気がしますが、これが思春期真っ只中の未成年でしたらどうでしょう? 妄想溢れ、勉強熱心な気がします。

 ・養母 死ね
  暗雲を思わせますね。邪魔だと思う人間は排除すればいいだけの話しだと思うのですが。我慢をしている意味などないでしょう。ではどう排除すればいいのかは、自分の頭で考えてみましょう。そこまではしたくない、と思うのであれば、そうでもないのですよ。

可哀想な人

 子供たちが泊まった部屋を綺麗に掃除しながら、どうでもよいと今まですっかり忘れていた事を思い出しました。何年前の事でしょうか。

 育児休暇を終えた職場の30代後半の女性が、自分の子供の写真を誰彼構わず職場の人間に見せて回っていました。「可愛いでしょ?」「目なんか、私にそっくりじゃないかなって思ってるんだ」そう言っては、コメントを待つのです。コメントを求められた人は、もちろん中には(見るからに)子供好きな人もいますから無条件に「可愛いねー」などと一緒になって喜びますが、大半は、顔には出さないものの、女性の行動に少し鬱陶しさを感じていたものと思われます。しかしその女性は実は長い間、不妊治療を行なっているという静かな噂がありましたから、誰も直接顔には出せません。

 その女性は、私の元にも来ました。しかも、トイレでメイク直しをしていた私を捕まえてきたのです。彼女は私と目が合ったときに少し躊躇したきらいがありますが、幾ら私でもポジティブ以外の言葉を言うはずがないだろうと判断したのでしょう、「川窪さん」と駆け寄ってきて、写真を見せてきました。

 わざわざ見せられましても、別に、なんという事のない赤ん坊の写真です。やっと出来た子供なのかどうかは知りませんが、見苦しい団子鼻に、母親に似ているという目はなるほど、蛙にそっくりですし、これで私に何を言わせたいのでしょう。私は「おめでとうございます」とだけ言いまして、写真を返しました。女性はそれでは納得行かず私の斜め後ろに立っていました。「皆、可愛いって言ってくれるんですけれど」などと不貞腐れ気味でぶつぶつ呟きを言うものですから、「だから?」と大きな声で聞き返してあげました。「皆が子供好きだと思う勘違いも甚だしいですね。中には、子供がなかなか出来なくて困っていて、それでも誰にも相談出来ない人だっているかもしれないんですよ。そんな事すら頭になくて、よく非常識な振る舞いが出来ますね。一度、主観抜きで、両目をしっかり開いてご自分のお子さんをご覧になったらいかがですか」

 女性は、顔を真っ赤にさせて、しかし何も言えずにトイレを出てゆきました。あれでも随分と私の言いたい事を端折りましたね。

 非常識な振る舞いはもちろんですが、そもそも私は不妊治療や体外受精や代理出産などというものには反対なのです。先に、不妊に悩んでいるかもしれない人を慮った発言はもちろん、建前。自然な妊娠が出来ないという事は、子孫を残す生き物としては失格なわけでしょう。そこを無理矢理、自然の摂理に反して、ああだこうだと「私だって子供を得る権利がある」などお涙頂戴な屁理屈を並べ立ててまで、子供を得たいという行動が理解出来ないのです。どうしてそこまで子供にこだわるのか。そういう方を目にすると、本当に虫唾が走りますね。

ゆらゆらと

 この頃は、郵便受けを気にしています。しかし、来る手紙来る手紙、すべて期待外れのものばかり(せっかく送ってくれているのに、そんな言い方をするのは良くないですね)。まだ彼女からは返事が来ません。私が手紙を出してからまだ1ヶ月も経っていないですから当たり前なのですが、それでも待ち焦がれています。

 実は、日記には書いていませんけれど、何度か平日に例の同級生と逢っています。そう、彼女からの手紙が来るまでは逢うまいと固く決心したはずなのですが、見事に誓いを破ってしまったのです。しかし、今さら生娘でもあるまいし、雷が落ちようが八つ裂きに遭おうが構いません。それよりも、回数を重ねるごとに、私と彼の相性は抜群に良いのではという想いが強くなっています。もしかすれば、主人の替わりになってくれる人を見つけのたかもしれません。

 彼と一緒になるのなら全てを捨てて構わないですし、あちらもそうである事を願い始めています。そもそも、今の私には捨てて惜しいものなど何もありはしませんけれどね。

性別不詳の51歳

 遊び心で。それにしても、性別不詳の51歳ですか。色気も何もありませんね。ひょっとして、文体が硬過ぎるのでしょうか。脚本家というのも意味が分かりませんね。

 さて、本日は美容デーです。一ヶ月の早いこと…。

 
 

ベビーシッターさん

 子供らが使った寝具を綺麗に洗濯をしたのですが、なんでしょう、匂いが付いている気がしました。乳臭い匂いと言うべきか。ともかく、一度気になりだしますとずっと後まで尾を引き続けますので、もう一度洗濯をしました。慣れない事が日常に入り込むと、駄目ですね。

 上の子供がまだ本当に小さかった一時期、夫と共に暮らした事がありましたけれど、それを思い出しました。育児が苦痛でしかなく、20代前半のベビーシッターさんを雇いまして彼女に任せきりでした。私より2つ3つ歳が上で、とても思いやりのある立派な女性でしたが、最後には辞めて行きました。貴方の考えは間違っているとか、そのような事を涙ながらに言って去って行ったのです(詳しい内容は忘れました)。私としては突然の申し出だったわけですから、不満ならば支払うお給料を倍にしますと言ったのですが、聞き入れてもらえませんでした。プロならば、雇われている家庭がどんな環境であろうが、その仕事に徹するべきです。待遇はかなり良くしていたはずなのに、なんだか裏切られたような気持ちになりましたね。

 二度目の洗濯でやっと、匂いが消えたようです。今日はとても良い天気。晴れやかな気分になります。 

去ったあと

 当然と言いますか、昨日の夜8頃に母から電話がありました。しかし予想していた威勢の良さはまったくなく、こちらが拍子抜けしてしまうくらいに静かな口調で「世話をかけたわね」と言って電話を切ったのでした。これも母の作戦なのでしょうか。下手に出て、私に何かしらの罪悪感を感じさせようと、わざとそのような態度を取ったのでしょうか。腑に落ちませんが、ともかくやっと解放されたという感じでして、一人の夜を楽しみました。

 それにしても、子供らの去ったあとの部屋と言ったら。二階の一室を使わせたのですが(もちろん事前に二階の住人方に断りを入れまして)、これ以上ないというぐらいの乱れようでした。『夜は騒がないように。大人しく寝る事』を規則に入れていたのに、例のお菓子の食べ零し、シーツは皺になり放題、敷き、掛け布団もあちこちに飛んで、枕と枕カバーも部屋の隅に落ちていて、一体全体、どういう寝方をすればこのような風になるのだろうというほどでした。帰る前に、綺麗に後片付けをさせれば良かった。それだけが悔やまれます。

今回も私が悪者

 やっと解放されました、と言うべき所なのですが、実は子供たちは昨日の夜に我が家に泊まりに来ませんでした。昨日の朝、子供らを迎えに来た京子さんと口論になりまして、私には任せておけないと思い、自分のマンションに泊まらせたらしい。

 別にそれはそれで構いませんし、こちらとしては余計な肩の荷が下りたという感じなのですが、何も事情を知らない私は子供らが来ると思い早々に帰宅して夕食の準備をしていたのです。しかし、待てど暮らせど三人は現れない。そうして京子さんに電話をしたら、そうこうこういう事情ですから、と初めて聞かされたのでした。

 そういう事情ですから、などと紋切り型に言われて、ああそうですかよろしくお願いしますと終わらせられないのが私の性分でして、それならそうと電話連絡のひとつもするのが常識というものでしょうと言いました。そうしましたら、「貴方に『常識』を語られたくありません」と強張った調子の答えが。おそらく目に涙を浮かべ始めているのではないでしょうか。京子さんは、強がっているように見えて、実はとても弱いメンタルの人なんですね。昔からです。そこで私は「そうね。良い歳になっているのに子供一人も産んだ事が無い誰かさんに常識が無いと言われたら、それは本当に常識がないかもしれないわね」と、つい、笑ってしまいましたら、唐突に電話が切れました。地雷を踏むのはとても簡単ですね。少々露骨過ぎましたが。

 子供ら用に作った夕食はきのこのシチュー、サラダ。一人では食べきれませんし、自分でも美味しいとはとても思えませんから、捨てました。

 またいつも通りの日常です。しかし後日、母から怒りの電話が来るのは必至ですね。まったく、私が何を悪い事をしたというのでしょう。どこも間違ってはいないはずです。それなのに勝手に京子さんが熱くなって、かき混ぜて。怒りの矛先が彼女に向けられるのが正しいと思うのですが、きっと今回も私が悪者でしょうね。

どっと

 隠し持っていたスナック菓子が絨毯の上にばら蒔かれているのを見て、衝動的に殴ったら、予想以上に強い力だったのか、壁に激突、子供を病院送りにしてしまいました。

 などという野蛮な事は、もちろん文明人ですから致しませんでした。

 そうは言っても、あれだけ荷物検査をしたのに(といっても小さな小さなリュックですが)、まさか玄関の外の階段の隅に隠し持っていたとは。なんと小賢しいのでしょう。しかしよく考えれば、たかだか6,7歳の子供にそのような知恵があるとは思えませんから、もしかすれば京子さんがそうさせたのかもしれません。

 子供らにも罪の意識というものが少しはあるのでしょう、私に現場を見られて「お掃除、する」と反射的に立ち上がりました。その場で私は笑顔を浮かべて、馬鹿のように立ち尽くしている子供らを放っておき、一言も口をきかずに掃除をしました。そしてささやかな罰として、一晩明けたあと、朝食抜きを課す事にしました。子供たちが「ごはんがない」と言いに来ると、一言一言、朝食がなぜ出ないのかを分かりやすいように教えてあげました。昨日の夕方に、それぞれ二人を座らせて、用意していた紙に書いておいた規則を丁寧に説明してあげたのにそれを貴方達は破った事、であるから朝食抜きは当然の罰である事を説明しました。そうすると、しくしく泣き出しました。やれやれ、です。子供は、泣けば良いと思っているのだからどうしようもありませんね。母の日頃の躾がなっていない何よりの証拠です。「泣いたって、世間様では通じないのよ」と言ったあと放って置きましたら、そのうち京子さんが迎えにきて、そこでも静かな一悶着がありましたが、無事に子供らを引き取らせました。

 さて、あと一晩です。手間賃ぐらい貰いたいぐらいですね。それぐらいにどっと疲れました。母もなぜ、この私に頼んだのでしょう。あの子らを産んだのは紛れも無くこの私ですが、だからといって愛情を持って接する事を求められても困ります。だのに引き受けた私も、大概お人好しなのかもしれませんね。

陰湿な雨

 深夜は風が強かったせいでしょう、白い靄のようなものが風に流されて部屋の中を通り過ぎていくのを何度か目にしました(生き物という感じがまるでしません。例えるならば風に飛ばされる花粉のようなのですが、どう考えても無機質のようです。今だに正体が分かりません)。そして朝から陰湿な雨。苦行の夜が待っている事を否が応でも思い出させてくれます。

 夜に京子さんが子供らを連れてくるそうです。憂鬱ですが、気を奮い立たせねばなりませんね。

私が出る幕などないはずなのに

 久々の夜の更新です。

 実は、明日から二日間、子供たちが我が家に泊まりに来るんですね。今朝、母から電話が来たのです。検査入院をするからその間の夜だけ泊まらせなさい、貴方が仕事の間は京子さんが母の家で面倒を見るからと。それは無理ですと一度断ったのですが、とにかく明日の夜に京子さんに連れて行かせるからと言って、強引に会話が終わったのでした。もちろん、こんな強引な形で子供二人を押し付けられるなんて堪ったものではないと憤り、こちらから何度かかけ直したしたのですが、居留守を使われました。

 言いたい事は百ほどありますが、こうなっては仕方ありません。

 今、泊まらせる準備をしている最中なのですが、なにぶん、急の事、心の準備が出来ていません。それにしても、なぜ京子さんに何から何まで面倒を見てもらわないのか不思議です。子供たちも彼女に懐いているはずですし、私が出る幕など無いはずです。

 ともかくも、子供らに汚されないように、また、ここは普段とは違う他人の生活スペースなのだからその規則に従うようにと、最初にようく言って聞かせておく必要がありますね。そうですね、よく分かるように紙に書いておくのも良いかもしれません。

 さて、これから掃除を始めます。この分では、入浴はずっと後になるでしょうね。明日からは苦行の二日間ですから、ゆっくり安らぎます。

もうすぐ三ヶ月

 今日は随分と睡眠をとってしまいました。4時間は眠ったでしょうか。しかし熟睡したという感じがいたしません。寝入り、底の無い真っ暗な穴に落ちていくような感覚がしたかと思うと、次の瞬間には朝になっていて、まるで時計の針をくるりと誰かが回して時を早めたのではと思うくらいに、あっけない睡眠となりました。

 さて。毎日毎日、飽きもせずにですね、よく日記を綴っているものだと自分でも思います。早いもので、来月で日記を書き始めて三ヶ月になりますね。何かアンケートなどを取ってみましょうか。冗談ですよ。

 今日は、久々に何の予定もない一日です。誰にも会いませんし、どこに行く事もありません。ゆったり、過ごしましょうか。

階段のむこう

 先日、新しい洗濯機が届きまして、なかなか順調な働きぶりをしてくれています。洗濯機が稼働している音は良いですね。とても平和な感じがしますね。今度は1年半ほど持ってくれれば良いのですが。

 昨夜の事です。入浴が終わってバスローブを羽織った際、二階の住人たちの声が聞こえてくる事に気が付きました。平日に聞こえてくるなどほとんど無い事ですから、何事かと思いました。しかも、いつもよりもはっきりとした言葉を聞き取れるほどなのです。動きを止めて、しばらく耳を澄ましました。そしてまた気が付いたのです。声は子供二人のもので、階段のほうから聞こえてくると。どうやら階段で遊んでいる様子でした。脱衣所と階段の上り口は反対側同士なので、声の主の姿は当然こちらが動かない限り確認はできません。

 いつもなら放っておくところなのですが、階段まで降りてきているわけですから、どうにも、駄目ですね。好奇心というものが私の中で大きくなりました。住人たちの姿を見てみたい、というのが、どうしても抑えきれませんでした。足音を立てず、そろりそろりと廊下を歩きました。あともう少しのところで、階段の全貌が見られる角まで来ました。子供たちの声は、すぐそこ、ななめ上から聞こえてきます。とても楽しそう。声を聞いている限りでは、生身の人間が喋っているようにしか絶対に聞こえませんから、つい錯覚を起こしそうです。見たい、と思いました。少しだけ角から頭を出して階段を覗けばいい。ただそれだけです。

 でも、出来ませんでした。腰抜けかもしれません。しかし、覗いてはいけないという警告のようなものも、もちろん好奇心と同じくらいに私の中にありましたから、保身を優先しました。そのまま寝室に入って、彼らが遊び疲れて二階に帰っていくまでの1時間ほど、ベッドで寝そべりながらひたすら待っていました。

 しかし、階段のところまで降りてきているなんて。今までだったら有り得ない事です。やはり子供の無邪気さ、というものでしょうか。

勘違いさせる女性

 某女性アナウンサーと野球選手のスキャンダルがわりと騒がれているらしいですね。そもそもホテルに入っただけで何もしていないと当人は言っているのに、不倫とけばけばしく書き立てるのも不思議な話ですが、それはともかく、男性を勘違いさせてしまう女性というのは確かに存在しますね。しかもその女性には男性を勘違いさせて遊んでやろうという意図はまったくなくて、素であったりすると、もっと始末に悪い。

 職場にも、ボディタッチを頻繁にしてしまう女性がいます。

 彼女はとにかく人懐こい。男性女性構わず、自分が何か失敗をしたり忘れ事をすると「ごめんなさーい」「すみません」と腕にしがみ付いてきたり、びっくりさせようと後ろから「えいっ」と軽く身体を衝突させてみたり、休憩時間では両手を握ってきて左右に振ったりなどして「○○さんは、○○なんですか?」と他愛も無い事を訊いてきたり。こうして行為を書き連ねてみるといわゆる「痛い女」と呼ばれるのかもしれませんが、アイドル並の愛らしい容姿と子猫のような雰囲気のせいなのか、許せてしまうのです。

 そしてご多分に漏れず、男性方にも人気なんですね。中には「こいつは俺が好きなんだ」と勘違いして、私のところに何度か相談に来ていた男性がいました。この人は不幸な末路を辿りましたね。彼女の素のボディタッチ行為に、一人で盛り上がり、燃え上がって、結婚もまじかだった自分の婚約者へ一方的に別れを告げて、彼女にプロボーズしたものの、彼女からすればその男性ただの同僚なわけでして、好意も何もなかったわけですからきっぱりとお断りをしたわけですね。男性はそれに多大なショックを受け、ほどなくして会社を辞め、今は誰も行方を知りません。よほどショックだったのでしょう。今は何をしているやら。幸せになっていると良いのですが。当の彼女は男性を傷つけたという自覚もなく、毎日平和に仕事をしています。

 男性って、本当に可笑しなぐらいに単純。でも、そこが可愛い所でもあるのですけれどね。

才能と体型

 入浴が終わったあと、裸のまま姿見で全身を映します。胸、背中、お尻、細かな部分の肌をチェックする習慣があります。自分で言ってしまっては自慢のように聞こえるかもしれませんけれど、子供二人を産んだ体型にはとても見えません。肌も、透明感があって、ほどよい吸い付きの心地良い肌。男性に喜ばれます。

 「いる」と答える必要性を感じられませんから、他人様には子供がいる事は自ら話しはしないのですが、たまたま話の流れで「お子さんはいらっしゃるんですか?」と訊かれた時にだけ答えるようにしています。そうすると、とても驚かれるのですね。でも、特に体型維持に意識しているわけではないのですよ。ご存知のとおりの食生活ですし、睡眠時間等の諸々の事を考えれば、太る要因が随分と揃っていますよね。でも、それが体型や顔にはまったく表れない。これは、もうほとんど才能のようなものですね。しかしこの才能もいつか枯れるでしょうし、枯れた時に、私は一気に、水分が抜けた花のようになるでしょう。それはそれで面白いですね。

有名だったのですね

 幼少の頃、白黒の映画に恐怖を感じていました。

 なぜ人々も世界も白黒なのか理解が出来なくて、そのまま見入っていたらいつか自分は引っ張られてその世界の住人になってしまうのではないかと思うと怖くて堪りませんでした。

 映画館も恐怖の対象でした。あんなにぽっかり空間が空いて、天井が空高くて、あそこに入ると、空気になってしまいそうな希薄感を自分に感じました。そのようなわけですから、子供が好き好んで観る類のアニメ映画が例外なく大好きだった弟と一緒に行った映画館での時間は、地獄のようなものでした(「貴方は姉なのだし、あの子は落ち着きが無くてすぐ迷子になってしまうのだから、連れてゆきなさい」と母に言われ半強制なのでした)。

 そういう事もあってか、今は、ほぼ、と呼んで良いぐらいに映画は観ません。映画館にはもうずっと行っていません。レンタルもしません(そもそもレンタルカードを持っていません)。ですから、世間様が知っていて当然というような有名な俳優もよく分からないのですね。去年ですか、まだテレビを売り払う前に、某携帯電話に起用されている外国の女優を最初は知らなくて「綺麗な人ね。最近良く観るわね。モデルさん?」と我が家に遊びに来ていた同僚に訊きましたら、とても驚かれました。

 外国の俳優などまったく知らないからといって不都合な事は特にありませんが、あのような驚きされますと、自分がなんだかとても悪いような気がしないでもないのです。

お掃除

 帰宅後、例の作業のあとに、さっそく天井の掃除に取りかかりました。床にビニールを敷いて、天井の黒い染みをスチームクリーナーで落としました。やはり気になった事は、早めにやっておくべきですね。そのほうが快適な夜を過ごせるというものですから。

 染みの部分だけというのもなんですから、ついでに天井一面を掃除しました。終了後、クリーナーを納戸に戻して、ビニールを捨て、ああ良かったとても綺麗、額の汗を拭いて気が付くと、まだスーツ姿だった事に気が付きました。ストッキングさえ脱いでいませんでした。やれやれ、我ながら馬鹿ですね。

 ストッキングといえば、このアイテムに密かに凝っている女性はかなり多いでしょうね。私は普段立ち仕事が多いので、どうしてもむくみ防止のストッキングを履く事が多いのですが、週末近くなると、ガーターベルトとストッキングの組み合わせを楽しんでみたり、そうですね、値段はやや張りますがWolfordのFINE VICHY STAY-UPというアイテムが可愛いくて、最近ちょっとお気に入りなのです(サテン地のリボンが付いているのですよ)。部下の子に勧めてみましたら、高くて気軽に買えませんと嘆くので、お試しにと一足買ってあげましたら、大好評。

 女たるもの、ではないですが、少し高価な物を身につけるだけでも気分は違ってきます。二足組1000円(?)の安い商品を買うのも良いですが、いつもそれでは気付けば中身や外見まで安っぽい女性になってしまうというもの。やはり女に生まれたからには、楽しまなくてはいけませんよね。

それぞれに

 母の事はともかくも、弟夫婦が元気そうでしたから良かった。真理さんの相談はあれからあのままです。昨日は二人きりで話す時間がありませんでした。おそらく真理さんはまだ弟に悩みを打ち明けていないでしょう。勘で分かりました。

 これからそれぞれどうすべきか、どうなるのか。私は二人とも大好きですから、もし離婚という結果に立ち会う事になったらそれは私も辛い。しかし、それぞれに考え方というものがありますし、またそれぞれに幸福になる権利というものがあります。離婚という形でお互いに幸福になるのであれば、それはそれで仕方のない事かもしれません。

 さて、リビングの天井、ちょうど真ん中辺に直径3cmくらいの黒い染みが忽然と出来たのですが、それが気になって仕方ありません。角度によっては、目のようです。まるで天から観察されているようで、落ち着けません。今日帰ってきたら、天井の掃除をしましょう。それにしても、なぜ急にあんな大きな染みが出来たのでしょう。舞い落ちてくる埃など吸いたくはありませんから、一ヶ月に一度は吹き掃除をしているのですけれど。

母の訪問

 弟夫婦の家へ。

 玄関で出迎えてくれた彼らを見た時から、弟夫婦の様子を変に思っていました。普通に話したり、笑ったりしているようでいて、平静を装っているのが私には感じられました。そしてその事を私に悟られまいと、弟も真理さんもお互いに協力して表面に出さないようにしている様子が見て取れたのです。

 前日から仕込んでいたという弟が作ったローストビーフ等を食べ終わったあと(ジューシで、本当に本当に、美味しかった)、ワインを飲みながら、単刀直入に「母さんが来たの?」と彼らに訊きました。その通りでした。彼らをここまで動揺させる原因は私の母親しかいません。ためらいがちに頷いた真理さんを見て、思わず頭を抱えたい気分になりました。

 母は、真理さんに対して、露骨に役立たずの烙印を押しています。それは、一年も経っているのに、子供のひとりさえ出来ないという理由からなのですが、直接それを言葉には出しません。しかし直接ではないからこそ、母の意地の悪さが余計に際立つのです。いやらしい笑みを浮かべて、皮肉をポンポンと言うらしい。私はその現場に居合わせた事がありませんが、あの母の事です、どういう態度で真理さんに接しているのかは容易に察しが付くと言うものです。一度、弟がいる時間帯に母が尋ねてきた時、ちくりちくり、じわりじわりと皮肉を浴びせている母を見て弟が激怒し、強引に家から追い出してから、母の訪問はピタリと止まり、そのかわりに私に彼らの悪口を浴びせるようになりました。

 むろん、私もただ黙って浴びるような人間ではないですから、母に常識が無い事を切々と説き、母はその度に逆ギレというものをして、しばらく連絡を絶つ、その繰り返しだったわけです。

 そんななか、突然の予告なしの母の訪問。彼らは口をかたく閉ざしていましたので、実際に母がどんな愚行をしでかしたのかは分かりません。私もすぐに話題を切り替えたわけですから。

 それにしても…。母には本当にあきれるばかりです。どうにかならないものでしょうか…。

マイ・ルールのようなもの

 通勤途中、地下鉄を降りたあとで、前方を歩いていたお年寄りがふらふらしだしたかと思うと、その場で力なく座り込みました。遠目にも高価だと分かる訪問着が、アスファルトに擦れています。お年寄りは、うずくまって苦しそうです。しかし、その他大勢の通行人と同じように、横を通り過ぎました。特別急いでいたわけではありません。ただ単に、私が駆け寄ったり、場合によって救急車を呼ぶ時は、対象がおおよそ50代ぐらいの方まで、と決めているからです。そのうち死に行く者よりも、輝き有益者を助ける。マイ・ルールのようなものですね。

 空の機嫌が悪いようです。雨が降りそうな。今夜は弟夫婦の家へ訪問の予定。弟からの誘いです。弟とは変らずメールのやりとりをしているのですが、文面は特に変らずという感じでして、あれから真理さんが弟に悩みを明かしたのかどうかを窺い知る事はまったく出来ません。真理さんから相談されて以来、どうなっているのかとても気になるところですが、今夜は純粋に訪問を楽しんでこようと思います。

相手が消えていた

 前に、私のこのような日記を嫌な思いを抱きながらなおも執着して読み続けるくらいなら、インターネット上に幾らでもあるであろう、いわゆる”健全”で”癒し”な日記を読まれたらいかかでしょうと書きましたね。”嫌なら読まない”、その考えは今もなんら変っていませんから、私自身が日記を書く事を止めるつもりはまったくありません。少なくとも、来年の5月までは。

 しかし、その言葉が通じない方もいらっしゃるらしい。まさに罵詈雑言と呼んでふさわしいメールが届きました。そこに存在しているだけで目障りだから、ノートにでも日記を書いていなさいな、という内容でした(実際は、読むに耐えないほどの稚拙な表現のオンパレードでしたが)。私はじっくりとそのメールを読み、ひとつひとつの文章に対して、それぞれに、同調したり、反論したり、答えを書きました。我ながら、なんと丁寧な対応でしょう。所詮は私とは合わない考えの方なのだと放っておけば良いものを、私こそ執拗な性格かもしれませんね。

 1時間半メールの返信を書き、送信。すると、ほどなくして、返信メールが。正確に言うと、Host Not Found。

 これはつまり、私へのメールを送ったあとに、メールアドレスの登録を解除したという事でしょうか。何度か時間を置いて送信してみたのですが、自動でHost Not Foundのメールが帰ってくるばかりでした。

 なんだか少し消化不良のような気分になりました。非通知で留守番電話に悪口を吹き込まれるだけ吹き込まれて、吹き込んだ相手は結局分からずじまい、という感じです。しかし、お互いに顔の見えない所で日記を書いて公開している以上は仕方のない事なのでしょう。それにしても…暇な方もいらっしゃるものなのですね。もっと他に時間の使い道がある気がするのですが。

早朝の電話

 朝方に雷。ちょうど30分前に起きたばかりで、朝の入浴途中でした。随分と大きな音。響きました。この雷の音で一瞬でも目を覚ました人は多いのではないでしょうか。また鳴るのを待っていたのですが、その一回のみでした。

 そのかわりに、電話の音が響いてきました。リビングからの電話です。こんなに朝早くに電話をする人は思いつきません。たとえ何か身内の不幸の電話だとしても、自宅の電話に私がいつまでも出なければ、続いて携帯電話のほうにかかってくるはずですから、電話の音は無視して、しばしお湯の中に沈みこみました。沈んでいても、くぐもった音が長く聞こえてきます。まるで私をせき立てているよう。しかし私はこの電話には永遠に出る事はないでしょう。

 この電話は4年ぐらい前でしょうか、それぐらい前から鳴るようになりました。私はこの非通知の電話を、初めのニ、三回しか取った事がありません。こちらが幾ら「もしもし」と言っても、向こうは無言のまま。ざらついた微かな雑音が聞こえてくるだけです。そして、必ず朝の入浴中に電話が5分ほど鳴るのです。毎度ではないですが、週に4、5回でしょうか。これだけでも、その電話に出る必要が無いとお分かりになるでしょう。おそらく、電話の相手は人間ではないでしょうし。いいえ、人間ではないといっても、これは怪談や幽霊の類ではまったくなく、普通に、機械的に電話が鳴るだけという意味です。誰かが電話をかけてきているわけではないでしょう。

 ともかくも、二時間半という、いつもよりも30分も長湯をしたせいで、少し湯あたりになってしまい、ベッドで休みました。何事もやり過ぎは禁物ですね。

ワンピースのまま、バスタブへ

 この頃は、夜も暑くなってきましたから、就寝用のシルクのロングワンピースを新しくおろしました。

 私は一日に二回入浴をします。夜は、ゆっくりと二時間ほど、朝は、眠気覚ましの意味が強いのでミルクを飲んだ後に、一時間程度。しかし今朝はまた浴室で失敗をしてしまいました。ミルクを飲むのを忘れ、ふらふらと意識混濁のまま浴室へ向かい、ワンピースのままバスタブに入ってしまったのです。湯気とアロマの香りで意識がはっきりしだした時には、もうしっかりと肩のあたりまでお湯に入っていました。

 よほどの事が無い限り私は死なないのだと確信していますが、私が確実に死ねる手段とすれば、もしかすれば眠気時の入浴かもしれません。

 また失敗してしまった…と思いましたが、あまりにも気持ちの良い湯加減でしたから、そのまま入り続ける事にしました。お分かりの通り、シルクは水に弱い繊維ですから、もうこのワンピースは使い物にはならないでしょう。しかし、そのような小さな事を気にしていたって仕方がありません。また新しいワンピースをおろすだけの事です。

 それにしても気持ちの良い朝です。

間接照明だけ

 我が家の夜は、間接照明の光りだけで存在します。帰宅後の作業をするリビングも、夕食作りをするキッチンも、過ごす時間が圧倒的に長い、手紙を書いたり眠りに付く寝室も、すべて間接照明だけ。部屋を一気に明るく照らし出す蛍光灯の類は、客人が来る時以外はまず使いません。

 部屋と部屋を移動する際も、照明は必ずON/OFFをきっちりとします。例えば、寝室で手紙を書いていて、何か喉が乾いた、と思いましたら、寝室の照明を消して、キッチンまで移動をして、キッチンの照明を付けるわけです。もちろんその移動の際は、ほぼ暗闇です。たまに外の光りが廊下をぼんやりと浮き上がらせる事はあるものの、ほぼ暗闇。濃密な闇です。目は役に立たず、壁へ手を滑らせながら、目的の部屋に歩くさまは、まるで胎内巡りのよう。といっても、何歩歩いて、どこの角度で行けば辿り着けるか、などは頭にほぼ入っていますから、大した事ではありませんが。

 別に、節制をしているわけではありません。最近やや閉口ぎみのエコなどというものを個人レベルで目指しているわけでもありません。そうですね、もうこれは、身体に染み付いた習慣のようなものなんですね。いつからそれを始めたのかは覚えていませんが、あえてそうする理由を挙げるとするならば、闇への畏怖を再確認する意味もあるという事でしょうか。

 ともかくも、光りに馴れすぎているきらいが私たちにはあります。光りがあって当たり前、光りがあるから安心。そういう部分がありますでしょう。こんな私でも、暗闇に対する恐れはあります。これはもう太古から細胞レベルで人類に染みこんでいるものですから仕方ないでしょう。部屋にいても、照明の光りが届かない部屋の隅などは、薄暗く、気味悪く思う時もありますし、寝室のドアを開ければ、廊下の奥には何か得たいの知れぬ生き物がいる気がしてくる。しかしそこですべてを蛍光灯で照らしてしまえば、負けなのです。何に対する負けかといえば、自分への負けですね。例え、予期せぬ大停電などで世界が闇に覆われた時も強い心でいたいですし、そのための準備ともいえましょう。

 おや、大停電などあり得ないと思いましたか? そんなもの、馬鹿馬鹿しいと? それでは逆にお聞きしますが、なぜ今享受しているあらゆるものが明日も間違いなく存在するだろうと無条件に思えるのですか?

沈黙

 家電屋さんのHPにて、洗濯機を注文しました。結局、ハイブリッドドラムというドラム式のものを選びました。値段も19万と手頃なので良かったです。しかし受注生産品だという事で、手元に届くまでに2〜3週間はかかるとか。それぐらいなら大した事がないですね。そうそう、とうとう元々使っていた洗濯機が完全に沈黙してしまったのです。沈黙して1週間は経つでしょうか。とうとう寿命が尽きたのですね。ともかくも、よくこの家で頑張ってくれました。新しい洗濯機も1年は持ってくれれば良いのですが。もうしばらく、クリーニング店にお世話になる日が続きそうです。

 それにしても、急に暑くなりましたね。一気に夏が来たという感じです。つい先日、海開きが行なわれたと聞きました。

まるで人形のようにからっぽ

 アクセス庵で一位になっていました。日記を書き始めて二ヶ月。なんという事の無い日常を毎日書いているだけですが、ありがたい事です。人の日常を覗き見る快感というのは、私にも少し判ります。読みながら、腹立たしく思ったり、馬鹿にして笑ったり、また、愛しく思ったり。あと10ヶ月ほどの日常の日記ですが、色々な意味で気になったら、それまでお付き合いくだされば。

 昨日は、塚田と会っていました。しかし、まるでレモンなどのフレーバーが消え、炭酸さえ抜けてしまったペリエのような夜でした。もちろんただの水であっても身体にとっては必要不可欠なものですが、刺激の感じないセックスなど、それはただの交尾です。事前のアルコールさえ心を燃やす道具にはまったくならず、私の上で一生懸命に動いている塚田に初めて嫌悪感を覚えました。

 塚田にも、私がまったく高ぶっていない事が伝わったらしい。それでも性欲に負けて、自分のペースで私の身体を使って自分をいかせたあと、横に寝転がって、「好きな人でもできた?」と訊いてきました。私は正直に、クラス会で会った同級生について話しました。その間、塚田は真剣に聞いてくれました。「どう思う?」との私の問いかけに、「行くところまで行っちゃえばいいんじゃない?俺にはどっちみち関係ないし」まったく他意のないキラキラとした笑顔です。そんな無責任な事をよくもポンと言い放てるなと思いますが、私は塚田のそのようなあっけらかんとした所が好きなんですね。

 行くところまで…。いや、やはりまだそういうわけには行きません。彼女の手紙が来てから、考え、決断していく方向に持って行くべきでしょう。クラス会の彼からは相変わらず、電話とメールが来ています。今までは無視していましたが、メールで、「少し待っていて」と返しておきました。少し、というのは彼女の手紙が届くまでですから短くとも一ヶ月は待ってもらうことになります。その間に彼が諦めてくれれば、それで関係はおしまいになるはずです。

遅れて付いて来る

 入浴したあとに脱衣所へ出まして、正面の鏡を何気なく見ましたら、何秒か遅れて鏡の中の私が鏡を見ました。遅れて付いてきた? ドキリとしましたが、もちろんこれは単なる気のせいです。

 影踏み鬼という遊びをよくやりましたね。人の影を踏んで喜ぶなど、なんと残酷な事だろうと思いつつも、私もよくクラスの子に手を引かれてその遊びに興じました。

 近所に不思議な子がいました。言う事を聞かない影を持っている子供がいました。言う事を聞かないというのはつまり、その子が両手を大空に勢い良くあげても、その子の影は1秒単位で遅れて付いてきたり、その子がクルクル回転をしてもまったくその場から直立不動で動かなかったりしたのです。

 嘘とお思いですね。いいえ、これは本当なんですね。その子は、面白がって、よく私たちに見せてくれました。「なんだかよくわかんないけど、大人の前ではこいつ、言う事を聞くんだぜ」などと、得意気に笑顔まで出す始末です。「あの子、早死にするんじゃない?」陰でこそこそと耳打ちする子もいました。私はずっとその子の動向を伺っていたのですが、いつのまにか遊び場にその子は現れなくなっていました。人づてに、どこかへ引っ越していった、とは聞きましたが、定かではありません。近所に住んでいる、というだけで、実際にどこに住んでいたのか誰も知らなかったのです。

 いつから影が言う事を聞かなくなったのか、どうして大人たちの前では影は平常なのか、その子は今も生きているのか、そんな事を、先の鏡の錯覚で急に思い出しました。

 それにしても、鏡とは嫌なものです。この世の全てをきっちりと映しているように人々に思わせながら、本当はそうではないだろうと思うのです。影が遅れて付いて来るあの子を何十年ぶりかに思い出して、もし今鏡を覗き込んで、私の顔が映っていなかったらどうすればいいでしょう。そう考えると、少し、鳥肌が立ちます。

彼女へ手紙を

 気分が急降下しているからといって、彼女に会いたい、などと叶わぬ事をいつまでも考えていては駄目ですね。

 彼女の住む場所は知らない、彼女も私の場所を知らない、お互いが本当の事を手紙でやりとりをしているかはそれぞれの本人しか分からない、それでいいのです。それ以上の関係を望んで、どうしましょう。会わないから書ける事もあるのです。どうも思考が暗いと、普段まったく思わないような事まで思ってしまう。危険な兆候ですね。

 そのようなわけで、気分を変えて、一ヶ月ぶりに彼女への手紙を書きました。主に、クラス会の例の男性との事を。彼女は、私のこれまでの人生の出来事をすべて手紙で知っていますから、あの男性について何かしらのアドバイスをくれるはずです。すでに、彼からの電話に出なかったり、メールを返さないのも限界に来ています。彼に会いたい。でも会ってはいけないと強く思っています。会えば、いずれは夫のように、彼には破滅が待っているでしょう。彼女は何というのか? 返事が来るまでの一ヶ月、長いですが、待とうと思います。

直接聞いてみたい

 今朝は少し空が曇っています。

 実は、今日はよく眠れていません。30分も眠りにつけば良いほうです。気分が急降下しています。そんな夜は、手紙のひとつでも書けばまた気分が変るのですが、どうにもこうにも、万年筆を持つ事さえできませんでした。ベッドの中に潜り込み、胎児のように丸くなって、しかし目を閉じる事が簡単ではなく、布団の繊維をジッと眺めていました。

 そうすると、無性に、あの子に会いたくなってきました。例の手紙のやり取りをしている幼馴染の女の子、そう、小学生以来、一度も会った事がない彼女です。心も身体も機械的と思えるぐらいに完璧な彼女も、果たしてこのような布団の繊維を何時間も見つめるように暗い、人間的な感情に陥る事もあるのだろうかと、それを尋ねてみたいのです。

紹介

 私に日記を紹介してくれた方以外の日記は普段はほぼ読まないのですが、昨日から少しだけ、テキスト庵や、あわせて読みたい、から、目に付いたサイトさんを見て回っています。

 その中で、気になったサイトさんを幾つか見つけました。こんな私のような日記からリンクしてもいいかどうか分かりませんが、これからも読んでみたいと思った所を紹介してゆきたいと思います。

 どうでもいい日常さん
 よるねるたべるさん
 それからさん

 もしかして、少ないでしょうか。しかし私には、他の方の日記を私自身が気に入る、という事自体がとても珍しい事でして、広く浅く、よりも、深く狭く、そうですね、気に入った所は日に何度も何度も訪問してしまう人間なんですね。そのようなわけで、これからも、もしどこか気になったサイトさんを見つけたら、紹介してゆきたいと思います。紹介されて迷惑だなと思いましたら、ご遠慮なくメールください。

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