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【産科医解体新書】(2)誕生を喜び、死と向き合う (1/2ページ)
一枚の扉を隔てて生と死がせめぎ合う…それが産婦人科の第一印象でした。
大ざっぱにくくれば「喜びにあふれる産科病棟」と、「死と向き合う婦人科病棟」でした。僕らはこの相反する2つの診療科を交互にローテーションしていきました。極端な状況では、気分の切り替えが難しく、戸惑うことも多くありました。
ある日の当直で、産科での緊急の帝王切開直後に、婦人科では心臓マッサージを施したことがありました。また患者さんの臨終と分娩(ぶんべん)が重なったこともありました。
大学病院の婦人科では、退院することが難しい患者さんと接する機会も多くあります。逆に産科では生命の誕生に立ち会うことができて、僕らまで幸せな気分になります。ただ、この一方で、産科では入院期間をめぐってもめることが多くありました。ちょうど「患者さま」という呼び方がブームになったころです。産科は病気の症状が乏しいこともあってか、医療従事者に対して過剰なサービスを求める患者さんが一部にいたのです。とはいえ、トータルでみると「産科はハッピーエンド」というのが、新人の僕らの印象でした。