福田康夫首相は自前の改造内閣を発足させながら、1カ月後に政権を投げ出した。新閣僚を迎えたばかりの省庁の官僚や現場の担当者からは「政策の方向性が定まらない」との不満が漏れる。
首相が「国民目線」の象徴と位置づけた消費者庁。4月に首相の視察を受けた千葉県消費者センターの幹部は「構想自体がどうにかなってしまわないか」と気をもむ。
消費者庁構想は、自治体ごとに運営されている消費生活センターを一元的な相談窓口と位置づけて全国ネットワークに再編し、財源も国が確保する計画だ。人員と予算を削られ続けてきた地方のセンターにとって、願ってもない話だった。
同庁設置関連4法案は12日に開かれるはずだった臨時国会に提出され、09年度には発足の予定だった。内閣府は「閣議決定がある以上、方針は不変」と説明するが、野田聖子担当相は2日の会見で「消費者庁の発案者は自民党内ではたった一人、福田首相だった。高い関心を寄せる議員は少なく不安に感じる」と語っている。
一方、文部科学省の職員は「閣僚が次々に代わらざるをえないのなら、やりたいことをごく短期間で集中的に打ち出していくしかない」と話す。
鈴木恒夫文科相は就任直後、「環境」を新たな教科とすることに意欲を見せた。しかし1、2カ月の在任では結実は見通せない。文科相の地元事務所によると、11月に予定していた入閣祝賀会は見合わせる方向という。
国土交通省では「200年住宅」のつまずきを心配する声が上がる。耐久性を高めた長寿命化住宅を普及させ、環境保護に役立てる政策で、福田首相が看板の一つにしていた。普及促進を図るための法律は2月に閣議決定されたが、野党の審議拒否で継続審議になっている。同省幹部は「秋の臨時国会での成立を見込んでいたが、退陣で不透明になった」とため息をついた。
毎日新聞 2008年9月3日 22時33分