福岡市立こども病院・感染症センター(中央区)の整備問題をめぐり、吉田宏市長は2日の定例会見で、人工島(東区)に移転する新こども病院の用地面積は「3.5ヘクタールで検討している」と正式に表明した。同市は「新病院基本構想案」を策定中で、この構想案に、用地費や建設費など初期投資に186億円をかけ、開院後は年平均約17億円のマイナス収支になるという事業見通しを盛り込むことも分かった。
吉田市長は「構想案は、療養環境を素晴らしいものにするとの考えを生かし、(医療)機能の充実も図っている。ボランティアの導入など地域全体で支える病院を描いている」と語った。市は構想案を今週内に発表する。
市や関係者によると、同構想案は、2013年度に開院する新こども病院の病床数を230‐260床とした。260床の場合、初期投資に186億円かかると試算。その内訳は、用地取得費47億円▽病棟などの建設費100億円▽医療機器の調達36億円▽外構工事費3億円。
開院後30年間の事業収益は、年平均84億円を見込む一方で、病院の運営費は年平均91億円で、初期投資などの償還金も10億円を想定した。これらを収益から差し引くと、年平均で17億円が不足となる。
市はこれまで、こども病院と市民病院(博多区)の市立2病院に赤字分の補てんとして年平均20億円を一般会計から繰り入れており、新こども病院の収支不足分は同様に穴埋めする。市は「自治体病院が担うのは不採算医療で、繰り入れはどうしても必要」との見方を示している。
市は、市立2病院の運営に対し、経営の効率化が図られる地方独立行政法人への移行と、建物整備や維持管理にPFI(民間資金を活用した社会資本整備)を取り入れることを決定しており、今回の初期投資や事業収支の試算を目安に、経営健全化に向けた計画を作り上げていくという。
=2008/09/03付 西日本新聞朝刊=