【東京】辞退要請じわり浸透 『救急搬送トリアージ』試行1年2008年9月3日 より多くの人を救命するため、緊急性の低い傷病者に搬送を辞退してもらう「救急搬送トリアージ」について、東京消防庁は、昨年六月の試行から一年間の実施状況をまとめた。同庁は、対象となる傷病者は過去の事例から約0・7%とみている。しかし、実際に救急隊員が傷病者に搬送辞退を要請したのは計五百七十五件で、救急要請全体の0・09%にとどまった。 年間五千件と試算した辞退要請数にはほど遠いが、今年に入り辞退要請はじわり増加傾向にある。同庁は隊員らに対して「数字には縛られない。限られた医療資源を有効に活用する、というコンセンサスづくりを推進したい」とする。 同庁によると、昨年六月から今年五月までの救急出場件数は計約六十七万六千件。そのうち搬送辞退を要請したのは、全体の0・09%の五百七十五件。このうち同意が得られたのは三百五十九件(62%)で、不同意は二百十六件(38%)。具体例では、調理中に包丁で指を切った二十代の飲食店従業員は、救急隊員到着時に出血が止まっていたため搬送辞退を要請したところ、同意した。 その一方で、鼻血が止まらないとして救急要請した四十代の会社員の男性は、到着時には出血が止まっていたが、「不安だから搬送してほしい」として同意しなかった。 当初は救急隊員が無用なトラブルを避けようとした傾向もみられて辞退要請は伸び悩み、昨年十一月は十三件(救急出場件数の0・02%)と月間最低に落ち込んだ。 しかし、昨年末ごろから、病院側の受け入れ能力が追いつかず、救急患者が「たらい回し」される事態が社会問題化したこともあり、同庁はあらためてトリアージを隊員らに徹底。同十二月から増加に転じ、四月には百二十九件(同0・25%)にまで上昇した。 同庁は来年三月まで試行を続け、本格導入するかどうかなどを判断する方針だ。 (佐藤大) <救急搬送トリアージ> トリアージは「選別」を意味する仏語が語源。東京消防庁のトリアージは119番で駆けつけた救急隊員が「熱傷範囲は1%以下」「受傷部位は1カ所」などの項目で判断。緊急性が認められず、受傷者の同意が得られたら搬送せずに、その場で医療機関の情報を提供するだけにとどめる。搬送や医師への引き継ぎの時間が短縮されることで、限られた台数の救急車を早期に再出動させることが可能となる。
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