社会保険庁の職員(手前)の前で、証言する滋賀県の元社会保険事務所課長の尾崎(崎は山へんに竒)孝雄さん(奥)=19日午前、東京・永田町、松本敏之撮影
厚生年金の記録改ざん問題で、元社会保険事務所課長が19日、自らかかわった改ざんの実態について証言した。「事務所長や、(上部組織の)社会保険事務局から指示があった」と組織的関与にも言及した。国の年金記録の審査でも改ざんが確認されており、社会保険庁が職員の関与の有無など実態調査中で、来月初めに公表される見通し。
この日開かれた民主党の会合で証言したのは、滋賀県の社会保険事務所で、保険料徴収などを担当していた尾崎(崎は山へんに竒)孝雄さん(55)。保険料は、標準報酬月額にもとづいて算定され、年金支給額の計算の基礎となる。保険料を滞納した会社の社員の標準報酬月額を下げることで、徴収すべき保険料が減って収納率アップにつながる。
尾(崎は山へんに竒)さんによると、記録が電算化された80年代から、標準報酬月額を最低ラインまで下げる改ざんが目立ち始めた。社保事務所長が率先して徴収課長に指示し、県内の担当者を集めた収納対策会議でも指示があったという。
尾(崎は山へんに竒)さん自身も徴収担当課長だった00年ごろ、実際には存続している会社を社会保険から脱退させる手続きを複数回した。保険の加入・脱退の審査を担当する課長当時は、徴収担当課長に「標準報酬を落としたから処理してくれ」と7、8回頼まれた。
当時の不正防止マニュアルは、標準報酬をさかのぼって訂正する場合は賃金台帳や理由の確認を求めていたが、必要な添付書類はなく、届け出の備考欄に「降給のため」と記されているだけだった。
訂正の届け出の手続きに必要な書類は、社保事務所が用意し、事業主は押印するだけのケースも多かったという。
社保事務所の徴収担当課には社保庁から職員が派遣されており、「社保庁も知っていたはずだ」と指摘。全国の徴収担当課長を集めた研修会の懇親会で、改ざんのノウハウが交換されていたという。