今年に入って、不動産関連で大型倒産が相次いで起きている。都市部のオフィスビルや高層マンション市場が活況を呈していたことが、遠い昔のことのようである。
破綻(はたん)した不動産会社のほとんどは、この数年間に売上高も利益も急増し、自己資本も積み上がっていた。ところが米国の金融危機が深刻化し、これまで積極的に不動産を買っていた海外投資家が、一転して投資を引き揚げ始めた。そのあおりを受けて、不動産価格が下落に転じている。
銀行は不良債権化を恐れ、不動産向け貸し出しに消極的になった。不動産会社が貸し出しを要請しても応じず、資金繰りがつかず破綻に追い込まれたということだ。
その背景には、おカネがジャブジャブにあふれていると言われてきた日本の金融市場が、実はそうではなくなっていることがある。
06年央に米国では住宅バブルが崩壊し、貿易赤字は減少に向かっている。同時に、赤字を埋める資本流入も縮小し始め、米国経済は借り増しができず、失速してしまうはずであった。
だが意外に堅調である。時を同じくして、日本の金融機関が海外への与信を大きく拡大し、米国の金融緩和に貢献しているからだ。
日本に目を転じると、海外への与信を増やした分、日本国内への与信は減り続け、国内ではカネが回らなくなっている。こうなると、不動産や株式などの資産価格の値下がりに拍車がかかり、取引量も減少してしまう。そして不動産業をはじめ国内経済の停滞を招いている。
金利引き上げこそがこのベクトルを逆転できる。円高を許容してカネを日本に戻し、再度潤沢にすることが不動産不況からの脱出に結びつく。(岳)