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タイ:非常事態宣言 混乱収束せず 市民連合、抗戦の構え

 【バンコク藤田悟】タイのサマック政権に退陣を迫る市民団体「民主市民連合」による首相府占拠は、政権支持者との衝突で流血の事態に発展した。サマック首相は非常事態宣言を通じ、8日間に及ぶ占拠の解除を要求したが、市民連合は徹底抗戦の構えを崩していない。混乱の中、選管が首相率いる最大与党の解党処分を求めて動き出すなど、サマック政権は最大の危機を迎えている。

 1日夜、首相府から約1キロ離れた旧国会議事堂前に集合していた政権支持者数千人が、「首相府を解放する」と行進を開始。2日午前1時ごろ、首相府近くで市民連合のデモ隊と衝突し、こん棒で殴り合ったり投石するなど騒乱状態となった。市民連合側の男性1人が頭部を強打されて死亡。双方で計44人が負傷した。警察によると、うち3人が銃弾を浴びていた。

 警官隊と軍部隊が動員され、衝突はいったん収まった。しかし、市民連合側は首相府占拠を続け、緊張状態が続いている。

 首相は非常事態宣言に伴い、アヌポン陸軍司令官を治安担当責任者に任命した。司令官は衝突の再発防止に全力を尽くすと表明。ただ、デモ隊の強制排除は「事態をさらに悪化させる」と指摘。「法と議会の制度に基づき解決されるべきだ」と述べ、当面は実力行使しない方針を示した。

 非常事態宣言を受けて、バンコク日本人学校(小中学校児童・生徒2522人)は2日午後から3日まで休校になった。それ以降は状況に応じて判断するという。また、首相府に近い現地校も2日から休校になった。

 市民連合は首相府の占拠継続を宣言。電気、水道、バスなど公営関連企業の労組に対し、3日から一斉ストに入るよう呼びかけた。また、南部プーケットでは市民連合のデモ隊が県庁舎を占拠。ハジャイ空港にもデモ隊が押しかけ、2日から再び閉鎖された。

 野党・民主党は衝突について「非常事態宣言を出すために政権側が引き起こした」と政府を非難している。

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 ■ことば

 ◇民主市民連合

 06年にタクシン元首相の追放運動を主導した団体。メディアグループ経営者や市民運動家らが率いる「市民団体」の体裁を取るが、タクシン政権時代に利権を失った企業家ら旧来の支配層から資金提供を受けているとされる。サマック政権を批判し、退陣を要求している。

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 ■タイ政治の最近の動き■

01年 2月 タクシン政権発足

05年 3月 第2次タクシン政権発足

06年 2月 民主市民連合が首相辞任要求デモ開始

    9月 クーデター発生、タクシン政権崩壊

   10月 スラユット暫定内閣発足

07年 8月 国民投票で新憲法承認

   12月 下院選でタクシン派の「国民の力党」が第1党に

08年 2月 サマック連立政権発足。タクシン元首相帰国

    5月 民主市民連合が政権退陣要求デモ開始

    8月 11日、タクシン氏が英国へ事実上の亡命

       26日、市民連合が首相府占拠開始

    9月 2日、市民同士の衝突で1人死亡、バンコクに非常事態宣言

毎日新聞 2008年9月3日 東京朝刊

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