◎自民党総裁選び 閉そく感破る論戦望みたい
自民党の後継総裁選びで、本命視される麻生太郎幹事長が出馬の意思を示したのに対し
て、若手を中心に対抗馬擁立を模索する動きが出ている。総裁選の行方はなお流動的だが、挙党一致態勢を名目に一本化工作に走るようなことはせず、複数の候補者が立つ文字通り「開かれた総裁選」で、現在の政治の閉そく感、無力感を打ち破る論戦を展開してもらいたい。
自民党が責任を持って送り出した二人の総理総裁が続けて政権を投げ出す事態は本来、
あってはならないことである。自民党はこれまで、民主党の政権担当能力の欠如を批判してきたが、安倍、福田両政権の挫折は、自民党自身に政権党の資格、能力があるのか疑わせるものである。そうした疑念を取り除くためにも、意欲と能力のある人材が競い合う姿を国民に見せることが大事である。
現在の政治は決定力、突破力に欠け、社会を停滞させている。現実の景気後退が国民の
行き詰まり感に輪をかけている状況であり、そこに風穴を開けるような総裁選であってほしい。麻生幹事長は経済財政政策において、当面の財政再建よりも景気対策を優先する立場である。その考え方はよしとして、政府・与党がまとめた総合経済対策は景気を立ち直らせるに力不足と言わざるを得ず、「日本の底力」を信じるという麻生氏自身の対策を具体的に示してもらいたい。
また、外相時代の麻生氏の外交理念は中国重視の福田首相と異なり、中央アジアなどの
新興民主主義国と連携する「自由と繁栄の弧」構想を掲げている。その考え方に変わりはないのか、いま一度外交政策を語る必要がある。自民党が総裁選で党内論戦を行うことは、民主党の代表選が論戦なしで終わりそうなだけに、なお意義が増すことになる。
民主党の小沢一郎代表は代表選で政策論争を行わない分、一層重い説明責任を負うと認
識してもらいたい。次期衆院選に向けてまさに党と小沢氏の政権担当能力が試されるのであり、政策目標を提示するにしても、財源や実現の手段に裏打ちされた、説得力ある具体論を聞かせてほしい。
◎石川厚生年金会館 ホール機能存続の努力を
売却が確定的になった石川厚生年金会館(金沢市)の大ホールは、文化都市、コンベン
ション都市を標ぼうする金沢市にとって重要な施設だ。県都の一等地にある大ホールが一度失われてしまえば、復活は極めて難しい。ホール存続を売却の条件にできないなら、石川県や金沢市が存続に向け一肌脱ぐよう求めたい。
全国の厚生年金施設を管理する独立行政法人年金・健康保険福祉施設整理機構(RFO
)は、来年九月から石川厚生年金会館の営業を停止し、建物や敷地を今年十二月末までに一般競争入札にかけ、売却する方針という。
施設の売却は、やむを得ないとしても、金沢の文化ゾーンに位置し、旧陸軍出羽町練兵
場や兼六園球場跡地でもある歴史的空間が失われるのは惜しい。譲渡条件なしで民間に売り渡された場合、どのようなかたちで再開発されるか、先が見えない不安もある。
金沢経済同友会は昨年秋、谷本正憲知事との意見交換会で、千七百人を収容する大ホー
ルの必要性を指摘し、石川県として対策を講じるよう求めた。ホールの収容力は金沢歌劇座の二千人に次ぐ規模であり、現在も大型催事が年間百五十日余りも開催されている。これらの催事は金沢歌劇座など既存のホールだけでは吸収し切れない。
北陸新幹線の金沢開業へ向け、石川の魅力アップが必要なときに、歌劇座と厚生年金会
館の「二枚看板」が一つになると、金沢のコンベンション機能は大きく損なわれてしまう。業界団体の全国大会や学術大会などは、会場が確保できなければ、開催地を他都市に変えてしまうからである。
全国の例を見ると、大ホールを持つ厚生年金会館七施設のうち、北海道、広島、九州は
自治体が取得の意向を示し、大阪はホール機能存続を条件とした優遇措置を検討している。石川でもホール機能が維持されるよう、県や金沢市は運営上の優遇措置などの支援策を打ち出してほしい。兼六園周辺にそぐわない再開発を抑止するためにも、県民挙げてホール存続を願う姿勢を示すことも必要だろう。