福田首相「政権放棄」の裏側
■森愛知学院大学准教授に聞く
年内解散、自公は政権維持へ懸け―。福田首相の辞意表明で来年1月が濃厚とされていた総選挙は前倒しの公算が高まった。森正愛知学院大学准教授(政治学)は「自民は本格的な総裁選を通して注目を集め、支持率が比較的高い時点で総選挙になるのでは。自民は無投票の民主代表選に対抗、政権交代阻止へ動くだろう」と話す。同准教授に『政権放棄』の裏側を聞いた。
■新首相の支持率高いうちに…
―突然の辞任劇だが。
「驚いたが、冷静に考えると、自分で解散しないという選択肢の中で首相はこうした結論を出すしかなかった。タイミングも政治空白を避ける意味でこの時しかなかった」
―1カ月前の内閣改造は何だったのか。
「周囲のプレッシャーが強かったが、改造までは政権担当の意欲はあったと思う。増税派で固め、小泉路線の見直しのメッセージを出したが、支持率が上がらなかった。公明党からの解散プレッシャーもあり、新首相での総選挙を決断したのではないか」
―総裁選の行方は。
「麻生さん(幹事長)の対抗馬が課題。小池百合子さん(元防衛相)中川秀直さん(元幹事長)らがどう出るか。野田聖子さん(消費者担当相)の名も出ているが、早すぎる印象。いずれにしても麻生さんで決まりと皆が考えるのが自民には一番良くない。4人ほどが出て政策論議、本格的な総裁選をやれば、話題が集中。次期総裁の支持率は高まり、いい状況で組閣できる可能性がある」
―ずばり、総選挙の時期は十月か。
「解散は来年の通常国会冒頭が筋だが、議員が浮き足立ち、走りだすと止められない。(12日開会予定の)臨時国会は延期。10月上旬は無理だと思うが、年内の可能性は高まった」
■政権交代、現状では厳しい
―民主による政権交代は可能か。
「自民が勢いがある時に解散となれば、自公で241議席取るのはそんなに難しくない。民主はねじれ国会の中で直近の民意を強調してきたが、自公が過半数取れば、民主の主張は裏目に出る可能性はある。政権交代は現状では難しい。ひょっとしたら、福田首相は自民が有利に戦えるタイミングを考え抜いていたのかもしれない」
―11カ月の福田政権をどう評価するか。
「ねじれ解消で大連立に失敗、あとは衆院の3分の2議席で再議決して押し切るしかなかった。有権者に合意形成の知恵を出せなかったのは残念」
―解散、総選挙で局面が変わるかどうか。
「福田さんは会見で新体制といったが、次の内閣でもねじれに対応できるかどうか不明。大砲は高い所から撃った方が弾は飛ぶ。自民がどの程度の支持率で解散とするかで選挙結果は変わってくるだろう」
【写真説明】森愛知学院大学准教授
(2008年9月2日更新)
【PR】