「明日の新聞はにぎやかになるでしょう」。自民党茨城県連の山口武平会長(87)は、福田首相が辞意を表明する2時間ほど前、麻生太郎幹事長からそう耳打ちされた。山口氏はそれが首相辞任だとは気付かなかったが、麻生氏がにこやかな表情を浮かべていたことは覚えている。
山口会長ら同県連の約20人は1日午後5時半から東京・赤坂の料亭で、麻生氏の「幹事長就任のお祝い」を開いた。麻生氏は1時間ほど遅れて到着し、「首相官邸に行って参りまして」と遅刻をわびた。出席者は誰も、麻生氏が福田首相から辞意を伝えられていたとは思わなかった。
麻生氏のささやきは、お開きの午後7時半ごろ。迎えの車に乗ろうとした時、山口会長にだけ笑顔で語り掛けたという。山口会長は麻生氏が衆院議員に初当選する前、日本青年会議所会頭時代から30年来のつき合い。射撃という共通の趣味から仲を深めた。
麻生氏は8月25日に水戸市で開かれた市町村議の研修会で講演。「(総裁選で)11票持っている茨城には、自民党総裁候補として、しゃにむにやらなきゃ」と沸かせた。まるで1週間後を予期していたような発言だ。2日午前、総裁選に立候補表明した麻生氏に対し、県連は支持する方針を固めた。(川上裕央)