医療者自身が社会的入院に対処を
「われわれの手で社会的入院に対処していくことが、介護と医療の両方を必要とする患者の権利を守ることにつながる」―。「介護療養型医療施設の存続を求める会」の吉岡充会長(上川病院理事長)は、8月29日に東京都内で開いた療養病床削減問題について考えるシンポジウムで、「療養病床問題の解決とは」と題する提言を公表。患者のニーズをより詳細に「主治医意見書」などに記載し、介護認定審査会で地域の医師らが入院の必要性について判定するなど、サービス提供のプロセスを透明化して患者や家族の合意を得ることで、介護療養型医療施設の存続だけでなく、スタッフに必要なコストについても国民の理解が得られると主張した。
【今回のシンポジウム】
介護療養型病床は財政再建の「いけにえ」か
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都内で介護療養型医療施設を運営する吉岡氏は、シンポジウムの中で、2011年度末に廃止される予定の介護療養型医療施設が仮に存続したとしても、医療費抑制を目的にした療養病床削減などの問題は解決しないとの認識を示した。3年ごとに介護報酬改定があることも指摘し、「官僚はあきらめずに報酬を減額し、あくまで介護老人保健施設への転換を目指してくる。財政が一番大事だと思う人たちとの闘いはこれからもずっと続く」と述べた。
その上で、厚生労働省が療養病床削減の理由にしている、長期入院の温床とされる「社会的入院」に言及。「介護療養型医療施設を必要とする患者の権利を守るためにはどうしたらいいか。それには、この社会的入院というものに対して、きちんと対処していくことが必要」と述べ、医療者自身によって社会的入院をなくしていくため、サービス提供のプロセスの透明化が必要と主張した。「そうしなければ、社会的入院を口実とした介護療養型医療施設に対するバッシングは続くし、本当に財政状態は厳しいから国民もそれに引きずられてしまう」
■合意形成の透明性確保が国民の理解に
具体的な方法としては、介護療養型医療施設への入所が必要な患者の場合、まずは施設側がケアプランや主治医意見書などで患者のニーズを詳細に示すとした。それを地域の医師や医療従事者が加わった介護認定審査会などに提出し、本人・家族の意思や希望、地域にあるサービスや医療資源などを踏まえて検討、入院継続の適否について多角的に判定するとした。吉岡氏は、「合理的で民主主義的。介護保険の精神にもかなっている。利用者や患者をめぐってどれだけきめ細かに判断ができるか。透明性の高いプロセスをつくり、入院について合意を形成することが必要」と説明。これによって、患者が安心できる療養につながり、介護療養型医療施設が正しく知られることにもつながるとした。
吉岡氏は、療養病床削減問題を振り返り、入院の契約が患者側と施設側だけでなされ、入院継続について見直すシステムがなかったことや、医療と介護の両方を必要とする患者のニーズを医療提供側が主張してこなかったことにも問題があったとした。その上で、「だからといって、今回のように財政再建の成績を上げるために、全部が社会的入院だから全部をぶっ壊すというのは、国民を欺き、その権利を奪うもの」として、医療者側から社会的入院に対処していくことが必要とした。
同会の担当者は、「まずは介護療養型医療施設の廃止を一度凍結してもらうことが必要。その上で、医療と介護の両方が必要な人のニーズを具体的に考える。こうして合意形成のプロセスをつくっていければ」と話している。
更新:2008/09/02 19:26 キャリアブレイン
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