死因究明の大綱案に反対―救急医学会
日本救急医学会はこのほど、厚生労働省が創設を検討している「死因究明制度」の「医療安全調査委員会設置法案(仮称)大綱案」について、4月に示された第三次試案に比べて、「より劣った内容であるとさえ判断できる」として、大綱案に反対との見解を表明した。
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同学会は4月に、第三次試案に対して、「わが国の救急医療が崩壊する」として反対の見解を示していた。特に、「重過失」の定義があいまいなまま、医療安全調査委員会(仮称、医療安全調)の判断で捜査機関に通知されるようになれば、救急医療に携わる医師は訴訟リスクを恐れて現場から離れると問題視。また、「医療安全」と「紛争解決」はそれぞれ別の過程をたどるため、医療安全調の目的が医療事故の責任追及でないなら、行政処分や捜査を行う機関に調査報告書の内容を通知すべきでないともしていた。
6月に示された大綱案については、第三次試案とほぼ同様の問題が残っており、「医療安全を構築することと、紛争を解決することの違いを区別できないままの枠組みが維持されている」と指摘。また、大綱案の内容に「自白を強要するかのごとき“憲法違反”の可能性も新たに包含する」などとして、第三次試案よりも内容が劣っているとした。
このほか、大綱案に記載されている「標準的医療から著しく逸脱した医療に起因する死亡」の定義があいまいなため、「現在の医師法21条に関連した混乱と同様の状況に陥る」と指摘。病院などの管理者が医療安全調に届け出る場合の、「医療事故等に該当するかどうかの基準」についてもいまだに明確になっていないとした。さらに、「医療における業務上過失致死傷罪の判断基準が不明確」として、これが明確にされなければ、訴訟リスクなどを懸念することによる委縮医療のまん延や、臨床現場からの医師の立ち去りが進んでいくとした。
こうした問題を解決していくためには、医学界と法曹界との議論が必要として、「法と医が対話する場の設定」を要望。医療者には法律の知識は限られており、法曹界は医療についての知識を十分に持っていないとして、「真剣に議論すべき時期が到来している」と主張している。
更新:2008/09/02 17:27 キャリアブレイン
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