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貧乏くじ '08/9/2

「貧乏くじかもしれない」。福田康夫首相が就任するとき、冗談めかして口にした言葉がよみがえってきた。昨夜の緊急会見で、唐突に辞意を口にした。目はしょぼしょぼしていたが、口調は滑らかだった▲小泉政権のスポークスマンとして沈着冷静な半面、斜に構えた皮肉屋の印象があった。昨夜の会見でも、まるで官房長官のように自らの進退を解説していたようにさえ見える。今なぜ政権を投げ出すのか。素朴な疑問に対し、「政治的空白をつくらない一番いい時期。ほかの人の方がうまくいく」は、きれい事すぎるのでは▲唯一、感情が顔に出たのは、民主党の小沢一郎代表についてだ。ねじれ国会の中で、「大変苦労させられた。聞く耳もたず、重要法案に限って真っ向反対」。一方的な恨み節は、あまり潔くなかった▲安倍晋三前首相の退陣表明に耳を疑って、まだ一年たらず。総理の座とはこんなに軽いものか。それとも、有権者の審判を受けていないから、負託の重みがないのか。末期症状という四文字が頭をよぎる▲「国民には、ひとごとのように聞こえるのでは」。会見の最後に本紙記者が質問した。「私は自分自身を客観的に見ることができるんです!」と気色ばむ首相。自らの貧乏くじも見通していたということだろうか。




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