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【社説】

小沢氏3選へ どう『変える』か鮮明に

2008年9月2日

 民主党代表選は小沢一郎氏が無投票で三選される見通しだ。福田首相の突然の退陣表明で政権交代への追い風は吹く。小沢民主党は政権担当に向けて新たな政策ビジョンを示すことが問われる。

 八日告示の代表選を前に小沢氏が出馬表明した。「私たち民主党が新しい政権をつくり、新しい国民生活、新しい日本を築き上げるしかない」と、首相を目指す決意を語った。

 代表選をめぐっては、野田佳彦氏が一時出馬を検討したものの断念。他に推薦人二十人を確保できそうな対抗馬はなく、小沢氏の表明で事実上決着した格好だ。

 総選挙優先で政策論争もなく無投票になるのは残念だが、小沢氏が党運営や政策の「白紙委任」を得たと考えるのは早計だ。前原誠司前代表らは政策面の詰めの部分で依然懸念を抱いている。

 「新しい政権」への第一歩はオープンな形でマニフェストを作成し、国民に示すことだ。党内結束へ丁寧な手順を踏むのは当然だ。

 今の民主党支持率の高さは、自公政権を代えたいとの有権者の思いを反映したものといえよう。小沢氏が「自公政権を終わらせる大目標が私の悲願」と語気を強める気持ちも分からないではないが、肝心なのは「自公後」のことだ。

 「小沢首相」のもと、国の姿はどう変わり生活者の暮らしはどうなるのか。短期、中長期のビジョンを提示すべきだ。それなしに真の民主支持にはつながらない。

 福田内閣は目指すべき国家像を示さないまま政権を投げ出した。他山の石とすべきだ。

 具体論では、例えば昨年の参院選で民主党が公約に掲げた農家戸別所得補償や子ども手当など総額十五兆円超の財源をどうするのか。小沢氏は財源不足は役人の言い分にすぎず、政権をとればいくらでも出せるというが、前原氏に限らず多くの人が懐疑的にみる。

 党内の激論を恐れずに納得のいく結論を出すべきだ。その積み重ねが政権への近道となる。与党は定額減税というバラマキ策を打ち出した。与党との財源論争に小沢氏自ら打って出る気概も見せてもらいたい。

 世論調査では「小沢首相」待望論は少数だ。剛腕が時として暴走を招いた政治経歴も影響してのことだろう。どう払拭(ふっしょく)し、内外の信頼感を高めるか。小沢氏が肝に銘じる「まず、私自身が変わらなければならない」との言葉がいよいよ問われるときだ。

 

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