二〇〇九年度政府予算の編成に向け、各省庁の概算要求が締め切られた。次期衆院選をにらんで景気悪化に焦りの色が濃い与党に後押しされる形で、各省庁の要求額が膨らんでいるのが特徴だ。
国の財政規模を示す一般会計の総額は〇八年度当初予算に比べ三兆七百億円増えて、八十六兆一千三百億円と過去二番目の規模に膨らんだ。国債の償還と利払いに充てる国債費が二十二兆四千四百十七億円と過去最高となったことが大きい。長期金利を高めに設定したため利払い費がかさんだ。
政策経費である一般歳出は、概算要求基準(シーリング)で定めた四十七兆八千四百億円が上限となる。焦点は福田康夫首相の看板政策に手厚く配分する三千三百億円の「重要課題推進枠」だ。医師不足対策を含む社会保障政策、地球温暖化対策、経済成長力の強化策などが重点的に要求されている。
財源は、政策判断で増減できる裁量的経費のうち公共事業関係費や政府開発援助を前年度比で3%、防衛と大学関係費を1%それぞれ削減し、さらに継続事業などを見直す「政策の棚卸し」で、裁量的経費全体を一律2%追加削減して生み出す。
厚生労働省は最も積極的で、医師不足対策などで推進枠の六割弱に当たる千八百六十億円を要求している。救急医療やへき地医療を担っている医師への手当支援を掲げた。
地球温暖化対策では、環境省が今秋から試行する国内排出量取引制度、経済産業省は家庭用の太陽光発電普及などの経費を要望している。
各省庁が安全・安心対策や環境問題を絡めて推進枠での採用を競っているのは、大幅な社会保障費の抑制や公共事業費の削減などで減らされた予算を取り戻そうとの狙いがあるからだ。中には安全・安心の言葉を当てはめただけの従来型の事業もある。財務省は無駄な歳出を徹底排除し、日本経済の体力を強めるメリハリのある予算とする必要があろう。
物価上昇や原油高に対応して政府、与党が決めた総合経済対策は、ばらまき色が濃い政策となった。もう一つの柱である定額減税の本年度実施では、赤字国債の増発が必要になるとの見方も強い。一一年度に基礎的財政収支を黒字化する政府目標は、実現に黄信号がともっている状況だ。
〇九年度予算編成では、選挙を意識した与党からの歳出圧力が一段と強まるのは間違いない。財政規律を維持できるかどうか、福田政権は正念場だ。
今年の夏は全国で集中豪雨が相次いだ。関東、東海地方を襲った豪雨では、床上・床下浸水する家屋が相次ぎ、愛知県では五十万世帯に避難勧告が出た。死者の出た岡崎市では一四六・五ミリの時間雨量を観測した。国内史上七番目の記録だ。
滝のように雨が降る猛烈な豪雨が増えている。八月一日から二十九日まで一時間に五〇ミリ以上の雨を記録したのは、全国の観測点千カ所当たり七十三回あり、同期間の過去三十年平均の四十三回を上回る。浸水や土砂崩れなどが起きやすくなった。
局地的に発生する「ゲリラ豪雨」の被害もあった。七月末に神戸市の川で遊んでいた小学生らが流され死亡した事例では、上流で降った豪雨で川が急激に増水し鉄砲水が襲った。八月初め、東京都の下水道で中にいた作業員が流され死亡したケースも、周辺に降ったゲリラ豪雨が原因だった。
太平洋高気圧の張り出しが弱かったため、大気が不安定となって、大雨をもたらす積乱雲が急激に発達したのが豪雨頻発の原因という。積乱雲の寿命は短く、気象庁でもゲリラ豪雨を予測するのは困難という。
都会ではヒートアイランド現象に加え、高層ビルで風が上昇気流に変わり積乱雲が発生しやすい気象条件にある。道路や地面が舗装され吸水性に乏しく、雨水が近くの河川や地下街、地下道などに一気に流れ込んでくる危険が増している。
豪雨被害防止には、積乱雲の動きが分かるドップラーレーダーなど装備を充実させ観測や予測精度を上げるとともに、雨水を地下に浸透させるなど災害に強い街づくりも大切だ。住民へのきめ細かい豪雨情報の提供はさらに重要となる。危険があればすぐ避難するよう住民への啓発も行い、減災に努めたい。
(2008年9月1日掲載)