医療事故原因究明で試案骨子―全医連
病院の勤務医らでつくる全国医師連盟(黒川衛代表)は9月1日、医療事故の原因究明・再発防止策に関する試案の骨子を公表した。捜査機関が犯罪の疑いを抱いた場合は、事故原因の究明を担う医療安全調査委員会(医療安全調)に調査を依頼し、医療安全調による意見が出るまでは捜査に着手してはならないこととするよう提案している。9月中に試案の全文を発表する予定で、全医連では「舛添要一厚生労働相などに陳情したい」としている。
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試案の骨子によると、医療安全調は内閣府の外局として設置し、全国の高裁の所在地に地方委員会を置く。また、医療安全調が取り扱う対象は、医療事故による死亡(疑いがあるケースを含む)だけでなく、「医療行為に伴う健康被害が生じた場合」で、地方委員会の下に置く調査チームが調査を実施するとしている。
医療安全調への届け出は医療機関か医療従事者が行い、医療安全調は、患者・遺族からの調査依頼も受け付ける。調査に必要な証拠を保全するため、医療安全調には、裁判所の発行する令状に基づき、強制的に資料を収集する権限を持たせる。調査の結果、医療機関の行為が医学的に不適切で「刑事手続き相当」と医療安全調が判断した場合は、捜査機関に通知。同時に、根拠となる客観資料(調査対象になった医療者の供述内容の記録は除く)を交付する。
業務上過失致死について、試案の骨子では「刑事手続き相当」とする医療安全調からの通知と、遺族による告訴の両方を起訴要件とする「親告罪」に位置付けるよう提案している。捜査機関は、医療行為に関連する死傷の結果に疑念を抱いた場合、医療安全調に調査を依頼し、医療安全調が「刑事手続き相当」と判断するまでは捜査に着手してはならないようにするなど、謙抑的な刑事手続きの運用を打ち出している。
医療安全調は調査結果を患者や遺族、医療機関、厚労省の医道審議会に報告。調査の結果、事故の原因がシステムや制度に起因すると判断した場合は、医療機関による再発防止策を提言したり、関係省庁に必要な措置を勧告したりする。医療安全調の報告書は「民事紛争での使用を妨げない」としている。
また、医師法21条を改正し、医療関連死の警察への届け出対象を、過失犯を除く刑法犯によるものに限定するよう提案。さらに、安全対策を講じない医療機関の管理者や設置者に対する処分や、医療機関に対する行政処分の新設も打ち出している。
■医療被害補償基金」の設立も提案
試案の骨子では、医療被害者救済策の一環として、無過失補償を目的とする「医療被害補償基金」の設立も提案している。
医療安全調による調査で医療側に過失がないと認定された場合、患者や家族は法令で定める額を補償金として受け取ることができる。医療機関に対する損害賠償請求権など「一切の請求権」を放棄することが条件。
一方、調査により医療側の過失が認められた場合は、▽医療機関に損害賠償を請求する▽損害賠償請求権を放棄した上で補償金を受け取る―のどちらかを選択できるとした。
更新:2008/09/01 21:20 キャリアブレイン
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