JR大阪環状線の電車内で女子高生2人に痴漢行為をしたとして、大阪府迷惑防止条例違反の罪に問われた兵庫県芦屋市の男性会社員(31)に対し、大阪地裁は1日、無罪(求刑懲役6カ月)の判決を言い渡した。中川博之裁判長は「痴漢被害は認められるが、会社員を犯人とするにはなお合理的な疑いが残る」と述べた。
会社員は昨年5月28日朝、JR大阪環状線の桜ノ宮―京橋駅間を走行中の車内で、女子高生(当時15)の尻を触ったとして現行犯逮捕された。さらに、その直前の天満―桜ノ宮駅間を走行中に、別の女子高生(同17)の胸にひじを押しつけたとする容疑とあわせて同7月に起訴されたが、一貫して無罪を主張した。
判決は、15歳の女子高生の痴漢被害を認定。そのうえで「触られているときに紺色のスーツの袖を見て、右後ろに立つ会社員が犯人だと思った」とする証言を検討し、「ありふれた色であり、会社員以外に同じ色のスーツを着た人が周囲にいた可能性を否定できない」と指摘。検察側は「痴漢ができる位置に立っていたのは被告しかいない」と主張したが、判決は「被害者の視角の範囲は限られており、立ち位置から会社員を犯人と絞り込むことはできない」と退けた。
さらに、17歳の女子高生については被告の会社員のひじが胸にあたったと認定したうえで、「電車内は相当に混雑しており、会社員に故意があったと認めるには合理的な疑いが残る」と判断した。
会社員は公判でも「女子高生は紺色のスーツの袖を見ただけで、被告を犯人とする立証はされていない」と訴えた。検察側は「被害者の証言は具体的で信用性が高い」と主張していた。