「またたく間に水が家の中に入ってきた」「バケツをひっくり返したどころの雨じゃない」。相次いでいる記録的なゲリラ豪雨の恐怖を被災者たちはこう話す。
局地的な強い雨の影響による痛ましい死亡事故も起きている。先には栃木県鹿沼市で冠水した道路に軽自動車が水没し、運転していた女性が亡くなった。
悔やまれるのは消防や警察が通報を受けながら別の事故と早合点して出動しなかったことだ。通報が殺到し混同したというが、女性は救助の「すき間」に忘れられる形になってしまった。対応のずさんさは否めない。
その通信指令の役割がさらに高まりそうだ。不必要な利用も多いとされる救急車の有効活用へ向けて、総務省消防庁が進める「一一九番受信時トリアージ」の導入計画である。通報を受けた順番でなく、指令員が患者の状況を聞いて搬送の必要性や優先度を決める試み。十月から札幌など四市で実証実験を行う。
寄せられる通報には混乱や誇張も考えられよう。指令員の的確な判断と迅速な指示が欠かせないが、鹿沼市の件を思うと心もとなさを覚える。
判断ミスや時間がかかって必要な搬送に支障をきたしては何にもならない。救助の「すき間」が生じないよう実験結果の十分な検証と指令員の研さん、環境整備が求められる。