44人が死亡した01年9月の東京都新宿区歌舞伎町の雑居ビル火災から7年となる1日未明、家族を失った遺族らが、周辺の雑居ビルオーナーや飲食店経営者らに防火管理の徹底を求めるビラを現場近くで配った。ビラ作成は初めてで、遺族らは「44人の命を無駄にしないで」と訴えた。
遺族らは命日の9月1日には毎年、現場で慰霊祭を開き、44人の冥福を祈ってきた。しかし、現場の土地の所有権が別の会社へ移って慰霊祭がやりにくくなったことや、今年7月に当時のビル所有者に対する刑事裁判が終わったことなどから、事件の風化を懸念する声が出始めた。
このため8月上旬、ビラを配ることで意見がまとまり、新宿消防署の協力で当時の写真入りのビラ200枚を作成した。A4判のビラには「防火扉が作動していたら44名の命は助かったという東京地裁の判決を聞いたとき、悔しさで胸が押しつぶされそうでした。もう、誰にもこんな思いはさせたくありません」と記されている。
23歳の長女を亡くした栃木県足利市の中村スイ子さん(60)は「雑居ビルの持ち主が一人でも多くこの火災を思い出し、防火管理を徹底するきっかけにしたい。娘にしてあげられることは、それしかありません」と話す。
新宿消防署によると、昨年11月に歌舞伎町地区の雑居ビル585棟を対象に実施した立ち入り検査では、約1割のビルで、積まれた荷物で防火扉が開かないなどの消防法違反が確認された。同地区は年間約2割のテナントが入れ替わるなど、防火管理の徹底が難しいのが現状だという。【古関俊樹】
毎日新聞 2008年8月31日 20時31分(最終更新 9月1日 0時12分)