三沢は延長十五回、十六回ともに一死満塁と絶好のサヨナラ機を迎えながら無得点。東北勢初の全国制覇は夢に終わった。
「あのチームが決勝まで行ってあそこまですごい試合をできたのか分からない。甲子園に不思議なエネルギーとパワーがあって、その恩恵にあずかったのかもしれない」
大会後の騒がれ方はすさまじく、プロ入り後はつらい思いも心をよぎった。
「ハンカチ王子(一昨年優勝した早実の斎藤佑樹)なんて比じゃない。ファンが宿舎の垣根を越えて入ってきた。大会後は東京から家出して青森の自宅まで来た女子中学生もいた。青森県太田幸司様だけでファンレターが届いた。プロでも最初は人気先行。2年目ぐらいで辞めようと思ったけど、甲子園で頑張れた太田幸司が何だ、と言われるのが悔しくて頑張った。甲子園の決勝に行けたのは結果で、3年間必死にやれたのが財産です」
三沢は11日、1回戦の三本木農戦に勝利。偉大な先輩たちが築いた“快挙”を励みに、後輩たちは2回戦でシード校の八戸工大一に挑む。
太田 幸司(おおた・こうじ)
2年夏から3季連続で甲子園出場。1979(昭和45)年にドラフト1位で近鉄に入団、巨人、阪神にも在籍し、84年に現役引退。現在は大阪で野球評論家を務める。プロ通算成績は58勝85敗4セーブ。青森県出身。56歳。