「ドラえもん」「ちびまる子ちゃん」「めぞん一刻」…。あの名作漫画やアニメに登場する家は、どんな「間取り」になっているのだろう。そんな興味から推測を交えて作図された50軒の間取り図を集めた本が今月、出版された。『名作マンガの間取り』(ソフトバンククリエイティブ刊)。本業は不動産業・建築コンサルタントという岩手県在住の著者に会ってみたら、「北の奇人」とも言うべき一風変わった人物だった。
出版された本は、ほぼ真四角のコンパクトな形態。見開きページの右側に作品名や物件名、所在地、入居者、構造・工法、規模の項目が並び、左側のページに平面図が描かれている。
「ドラえもん」の野比のび助邸の項目では、「入居者/父・野比のび助、母・玉子、長男・のび太、ロボット・ドラえもん(特定意志薄弱児童監視指導員)」「構造・工法/木造」「規模/地上2階」などとあり、1階と2階の平面図が克明に描かれている。
ただ、「見たまま描くと階段がハシゴみたいになっちゃう。まともに九尺で上れる階段をつくると、1階の部屋が大きくなる」(同書)とも。
「巨人の星」の星一徹邸(荒川区町屋九丁目)では、木造長屋の間取りと、長屋の外にある庭の木が描かれている。幼少時の星飛雄馬が部屋の中から壁の穴へ向かってボールを投げ、庭の木にぶつかって跳ね返り、また穴より飛雄馬の手に戻る場面から、長屋の外壁について検討。著者は「管柱(くだばしら)もなく、断熱材もない。わずか推測9ミリの外壁。この建物の強度はいかがなものか」と首をかしげた。管柱とは、1階・2階の通し柱ではなくその階だけの柱をいう。
収録された間取り図は漫画、アニメのほか映画やドラマ、小説も数軒あり計50軒。すべてを作図した同書の著者は影山明仁さん(44)。岩手県盛岡市で不動産会社「大北産業」を経営する傍ら、建築コンサルタントとして実際に建てる家の間取り図をこれまでに約2500パターン描いてきた。
一見イケメン風の影山さんが漫画やアニメの間取り図を描くようになったのは、仙台市の建設会社に勤めていた20年前。営業相手の家族構成が「サザエさん」と同じだったことがきっかけだった。ふと思いついて磯野波平邸の間取りを描き、冗談半分に顧客へ持っていった。
「ふだん愛読しているあの漫画のあの家は、どんな間取りになっているのだろう」
以来、気になる物件の間取りを次々に描き始めた。
「台所はここにあって、ここから居間へ食事を運んで…といったことが分かり始めると、漫画やアニメの違った面白さが見えてくる。間取りを平面図にできるということは、その家が実際に『建つ』ということの証明にもなる。妙な達成感があります」
作品を発表していたブログ「いわて春風組」が複数の出版社の目にとまり、書籍化の運びとなった。
ブログで発表するうちに、見知らぬ人から間取り作図の要望が寄せられ、作品の幅も広がった。そんな一つが、自信作でもあるNHKアニメ「カードキャプターさくら」の木之本藤隆邸という。
ただ、影山さんが「どう料理しても間取りにならなかった」という物件も、いくつかあった。
■『名作マンガの間取り』主な掲載物件(全50軒の一部)
「クレヨンしんちゃん」 野原ひろし邸
「ブラック・ジャック」 ブラック・ジャック邸
「キャッツ・アイ」 来生邸
「マカロニほうれん荘」 姫野まり子邸
「機動警察パトレイバー」 警視庁警備部特科車両二課
「うる星やつら」 諸星邸
「美味しんぼ」 山岡士郎邸
「じゃりん子チエ」 竹本テツ邸
「天才バカボン」 天才邸
「魔法使いサリー」 夢野邸
「スラムダンク」 赤木邸
「Dr.コトー診療所」 診療所
「釣りバカ日誌」 浜崎伝助邸
「ドカベン」 山田畳店
「家族ゲーム」(映画)沼田孝助邸
「太陽にほえろ!」(ドラマ)七曲書捜査一係
「注文の多い料理店」(童話)山猫軒
■影山明仁(かげやま・あきひと)
昭和39年、福島県郡山市生まれ。名前が天皇陛下と同じだが、「不敬と言われたことはありません」。一族には徳仁(なるひと。皇太子さまと同じ)さんもいるという。経営する「大北産業」は仙台市の会社員時代に結婚した妻の父親の会社を継いだもので、二世帯住宅に暮らす「マスオさん」。
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