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すべてを失った祖父、母の背の娘… 不法占領63年の色丹島 元島民語る (1/4ページ)
終戦後半月以上たった昭和20年9月1日、北方領土の色丹(しこたん)島に、当時のソ連軍が突然上陸し、島は占領された。これに前後し、8月28日から9月5日までの9日間に、択捉(えとろふ)島、国後(くなしり)島と歯舞(はぼまい)群島も次々と占領。北方領土に住んでいた日本人は追放され、63年たった今も、四島の返還は実現していない。63年前に故郷の島で何が起こったのか。元島民の得能宏さん(74)が北海道根室市の自宅で、当時の出来事と故郷への思いを生々しく語った。(加納洋人)
「父はアメリカが来ると言っていたので、まさかソ連が攻めてくるとは思いもしなかった」
得能さんは、9月1日のことを、今も忘れることができない。8月15日の終戦から17日後、色丹島の北東、斜古丹(しゃこたん)湾にソ連軍の艦船が入ってきたのだ。
「朝7時半ごろ、学校に行こうと家を出ると、黒い大きな船が湾に入ってきていた。ソ連の船だとすぐにわかった」
島は大騒ぎになった。小学4年生だった得能さんは、家から約3キロ離れた学校に急いだ。学校に着くと、同級生らが「どうしたらいいんだ」と騒いでいる。「ソ連軍が来る。騒がないで、先生の言う通りにしなさい」。女性教師が児童らを諭した。
ソ連の艦船は学校近くの埠頭(ふとう)に接岸し、授業中にソ連兵が教室に現れた。