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あかいあくまと正義の味方 倫敦編(旧版): あかいあくまと正義の味方 倫敦編 〜その2〜 時計塔でのバカップル-士郎編  
執筆者: mission
発行日付: 2004/9/8
閲覧数: 9701
サイズは 24.00 KB
印刷用ページ 友達に教える
 

  朝です。
  昨日はあんまり時計塔(がくいん)をみてまわることができませんでしたが、今日と明日は受講する課程(コース)をきめるため、あちこちみてまわる予定です。
  エジプトから帰るに帰れないおとうさんやおかあさんは、
「お前は一週間全部使おうとはせずに、最初の二・三日でどこにするか決めるつもりでいなさい」
  って、言っていましたけれど、なぜなのでしょう?
  そんなことを考えながら歩いていると、とりあえず受けるつもりの基礎魔術講座の教室に、見た覚えのある人が入っていきました。
「あれ?」
  何となく気にしながら、後から入ってみます。
「いた」



あかいあくまと正義の味方 倫敦編 〜その2〜

時計塔でのバカップル-士郎編






  やっぱり。あの人は、昨日、長くて綺麗な黒髪を持つ綺麗な人と喧嘩していた赤毛の人です。
  背が高くて、軽く"見"てみると6フィート3インチ弱ありました。
「おっきいなぁ〜、私にも少し、背丈分けてくれないかなぁ〜」
  そう、私は人より小柄(おまけに童顔)で、いつも子供扱いされちゃうから、せめて背丈だけでも欲しいなと思ってるんです。
  でもあの人、聖杯戦争優勝者の弟子なのに基礎魔術講座を受けてるのでしょう?  私と同じで駆け出しなんでしょうか?
  ですけれど、別にここでは何回生ではどの課程を取るかなんてことは決まっていません。ただ単に、履修科目を総て通ったか通ってないかしか見ていません。
  ひょっとして、専科を先に取っちゃったのかな?
  そんなことを思いつつ、講義をノートしました。
  いくら基礎とは言え、やっぱり時計塔だけ合ってレベルは高いみたいです。頑張ってついて行かないと大変そうです。
  9月最初の講義なので、ここには、私以外にも入ったばかりの人がたくさんいます。次の時間、どの課程を受けてみようかと表を見ていたら、隣の席にいた人が声をかけてくれました。
「ねぇねぇ、戦闘魔術一緒に受けてみない?  魔術師だって護身術は必須だよ!」
「え?  あ、はい」
  思わずうなずいちゃったけど、私、体動かすの苦手なんですけど……どうしよう?


「うわぁ……」
  絶句
  誘われて戦闘魔術科の練習を見に来たのですけれど、そこには私と同じ駆け出しだと思っていたあの男の人がいました。ものすごく上手です。
  両手に短刀を持ち、片方の短刀で相手の攻撃を受け流しては反撃して、次々と一本取っています。
  格闘家が魔術に目覚めたって言う種類の人なのかな?
「シロウ!  悪いな、新入りの相手させちゃって。今度は俺の相手をしてくれ」
  違う人が入ってきて、あの人に声をかけました。あの人はシロウさんって言うのですね。
「別にいいよ、それでどっちでやる?  ロジャー」
  あとから来た人はロジャーさんですか。
「今日は新人がいるからな。お手本を見せよう」
「判った」
  ロジャーさんは普通の両手剣をもってシロウさんと対峙しています。
  と、どちらとも無く動き出して、
「うわー、わー、うわー」
  なんだか二人で戦ってるのではなく、踊っているようです。
  ぼーっと見とれていたら、いつの間にかお二人の戦いが終わっていました。
「おー、お前ら、演武も結構様になってきたじゃないか」
  なんだか妙に迫力のある人が入ってきてお二人に話しかけています。
「あ、先生、こんな時間に珍しいですね」
  ロジャーさんが言っているところを見ると、あの人が先生みたいです。
「演武ついでだ、衛宮、弓を引いてこい。あそこに見学希望者が陣取ってるぞ」
  指さす方を見ると、射的場があり、昨日シロウさんと一緒にいた女の人がシロウさんの方を見ていました。
  改めて見てみてもやっぱりきれいとしか言いようのない人です。
「判りました」
  そう言って刀を片づけて射的場の方へ行くシロウさん。
  なんだか嬉しそう?
「せっかくだからmoving targetの方をやれ」
  その背中に指示が飛んでいます。
  えっと、弓で、動いている的を打つんですか? 大変なんじゃじゃないんですか?
  そう思いながら私たちも、そちらの方へと移動しました。


  はっと気が付くと、射的場に残ってるのは私達新入生だけでした。時計を見ると、もうとっくにこの時間が終わっています。
「凄かったねぇー、あの人の弓」
  と、これはロゼさん。"見る"人だそうです。
「ホントホント、ひとっつも的外さない……どころか、全部真ん中に中ってた」
  こっちはセシルさん。何でも"詠み手"でロゼさんとは幼なじみだとか。
「しかもあれ、魔術なしだったぜ」
  この人はジェフさん、狩猟が趣味で"戦う"魔術師を目指しているそうです。
「そうそう、きっとあっちの道から魔術に目覚めたんじゃねぇの?」
  そしてこのひとが"創り手"のブルさん、"教養"として、格闘術も納めたいそうです。
  皆さん魔術師なのに体を動かすことも好きだそうで、どこか変わった人たちです。
「って言うか、あの道だけ極めてもかなりのとこ行きそうだな」
「そうそう、あっちからでも「」に近づけるんじゃない?」
「ねぇ、あんたはどう思った?」
「は、はい、きれい……でした」
「うんうん、ホント、きれいだったねぇ。ファンになっちゃいそう!」
「ファンクラブとか作ってみたりして〜」
「あ、良いね、それ、やろっか」
  みんなでおしゃべりしながら次にどの講座を取ろうかと表を見る。あ、珍しい。投影魔術の講座がある。さすがは時計塔。
「へ〜、珍しいものがあるねぇ、でも私はパス、どうせ大したもんじゃないし」
「そうよね、私もパス」
「俺も〜」
「今時投影はなぁ〜」
  結局、受けてみるのは私だけのようです。
  お昼に大英博物館の前(おもて)のティーハウスで会うことを約束して、いったんお別れすることにしました。
  そうして、講座があるはずの教室に来たのですけれど、
  ……誰もいないなぁ?
  あ、前の方で赤毛の人が座って本読んでる。さっきの弓の名人さん--シロウさんだ。
「こんにちわぁ〜」
「あれ?  珍しいな、この講座を受けに来る人なんて。さては新人さんだね。俺は投影魔術科の助手だ。よろしくな。新人さん」
「じょしゅ?」
  え?  アーチャーとかかくとうかさんとかじゃなかったの?
「そ、助手をやってる。衛宮士郎だ」
  そう言ってシロウさんはニッコリとほほえむと握手しようと手を差し出してきた。
「あ、はい、わたしはドロシア・カラム、ドロシーです」
  と、自己紹介をしつつ、そう言えば東洋の人たちは一族の名が先に来て、個人名が後に来るんだっけ……などと思い出していた。
「よろしくおねがいします。エミヤさん」
  あぶないあぶない、危うく初対面の人をファーストネームでよんじゃうところでした。
  でも、なんできそまじゅつこうざをうけてるひとがじょしゅなの?
「ああ、俺は元々投影、それも剣の投影に特化した魔術師でね。他のことはからっきしだめなんだけど剣の投影だけは良い線行ってるんだ」
  はぁ
「で、まぁ普通ならそれだけで終わっちゃうんだけど、知っての通り投影なんてマイナーだろ?  マイナーだからってほっといてて、気がついたらこの時計塔には、教授以外にはかろうじて一般教養レベルの投影ができる程度の魔術師しかいなくなってたんだ」
  わかります
「ところが、教授も専門は別で、儀式魔術を効率よくやるためだけに、投影もそこそこのレベルにあげたって人でね」
  はい?
「わざわざ人に教えられるレベルじゃないんだ。で、いくらなんでもここで教えることのできない魔術があるのは、時計塔の沽券に関わるって考えてたのがいたらしくってさ」
  は?
「ちょうどそんなところに俺が来たもんだからと、これ幸いと助手って立場に押し込めたって訳」
  そうなんですか……あ、でも。
「だったらなんで『助手』なんですか?」
  そう、剣の投影に特化しているならば、ことその分野だけに関しては有数の使い手のはずです。なのにそんなすごい人になんでそんな半端な役職をつけているのだろう?
「あ、だからさっきも言ったとおり、俺は剣の投影だけに特化してて他はだめなんだ」
  ええ、それはわかってます。
「だから時計塔として、そんな半端者を正規の講師にするのは、プライドが許さないらしいんだ」
  なんかにがわらいしてる。
「ま、他の魔術も人並みにできるようになれば、正規の講師にしてくれるそうだから、とりあえずそれを目標に頑張ってるんだけどね」
  いいんですか? それで?
「話が長くなっちゃったね。他に来る人も居ないようだし、とりあえず剣を一本投影してみせるからまぁ見ててよ」
  そういいながらこの人はあっさりとアゾット剣を投影して見せた。
「ま、こんなものかな」
  どう? といいながら手渡してくれたその剣は
「すごい……」
  目の前で投影しているところを見なければ、coopとかで売っているアゾット剣だと言われてもなんの疑いもなく受け入れられそうなほど「本物」のようでした。
「ま、ここまでのモノを投影しろなんて言わないけどね」
  ええ、むりです。こんな「ほんもの」のとうえいなんてぜったいにできません。なのに、このひとはおどろいているわたしのてからけんをとりあげると、あっさりと「けして」しまいました。
「あ」
  もったいないなぁー、と思いながら見ていると。
「ん、どうしたのカラムさん? 投影したモノなんてすぐ消えちゃうモノだよ?」
  え? でも今の剣はそのままにしておけばいつまでも残っていそうだったんですけど?
  私がそう言うと、シロウさんはむっと一瞬考え込んだけど、
「そんなことないんだけどな。ともかく投影をほめてもらえてうれしいよ。ありがとう」
  って、なんだかとってもすてきな笑顔で笑いかけてきてくれました。


「どうもありがとうございました」
  その後、シロウさんが入れてくれた紅茶(とってもおいしい)を飲みながら、投影についての、かいつまんだお話を聞かせてもらっている内に時間が過ぎてしまい、
「うん、それじゃぁもし投影を学ぶ気になったら、そのときは改めてよろしく」
  なんてとっても優しそうな笑顔でシロウさんは送り出してくれました。
  そして、皆と待ち合わせていたティーハウスに行ったら、もうみんな先に着いていて、私を待ってくれていました。
  皆さんは召還術の講座を見てきたそうですけれど、あまりおもしろいものではなかったそうです。
  何でも、平凡な使い魔をごく平凡なやり方で召還して見せただけで、これと言ったものはなく、それなりに学んだ後でもこの程度のことしかできないのでは、受講する価値を感じられないらしいです。
「で、ドロシーの方はどうだったの?」
  と、尋ねられましたので、シロウさんとのやりとりを一生懸命思い出しながらみんなに話しました。
「本物の投影?  なんか矛盾してない?」
「でも、ほんとにほんものみたいでしたよ〜。家の家系、分析だけは得意ですから間違えたりしません」
「へ?  あー、そうか、カラム家って確か、表向きは博物学者として、代々ここ(大英博物館)の研究員やってるだっけ?」
「と、いうか、お祖父さんが研究員やっている時に、ここ(時計塔)の人が分析に魔力使ってることに気が付いて、こっち側にひっぱられたんです」
「?」
「それまで、魔術を使ってることに気が付いてなかったんだそうです」
「え?」
「ただ、代々博物学が得意な人が多く出ているだけだと思ってて……」
「はぁ」
「だから他の魔術はあんまり使えないんですよ」
「でも分析だけは得意……と」
「はい、正確には解析するのが得意で、後は博物学者として、その結果を分類しているだけです」
「で、そのお得意の解析で見る限り、本物にみえるモノを投影していた?」
「はい、ちゃんと設計図を引いて、そのとおりに材料を作り出してるみたいだったので……」
「設計図?」「材料?」
「投影するのになんでそんなことするの?」
「え?  違うんですか?  私、投影ってやったこと無くって……」
「普通投影するときって、投影するモノのイメージを魔力で形作るだけで……」
「あとは形作った魔力がすぐに消えてしまわないように"形"を強く思い浮かべるだけよ」
「あーでもさ、わざわざ設計図作ったり、材料を再現したりしてたら、それだけイメージがしっかりするよな」
「うん、それなら投影の精度が上がって本物らしくなりそうだ」
「おもしろそうだし、一度見に行ってみようか?」
「「「賛成」」」
どうやらみんな、シロウさんの投影にきょうみをもったみたい。
「じゃぁ、こんどはみんなでいっしょにいく?  エミヤさんきっとよろこぶよ」
「「エミヤさん?」」
  ロゼとセシルがいぶかしげに聞いてきた。
「どっかで聞いたような名前ね?」「それもつい最近」
  二人してむぅ〜っと考え込む。
「俺もつい最近聞いたような気がする」「午前中に聞かなかったか?」
「だって、せんとう魔術の講座にいたエミヤシロウさんですよ?」
「「「「え〜!」」」」
  あ、みんないきぴったり
「「「「それを早く言って(言え)」」」」
  わ、またぴったり! みんないつのまにこんなに仲が良くなったんだろう?
「うーん、これは盲点だった」
「で、弓を見せてもらう約束はした?」「ね、したんでしょ?  いつ?  いつ?」
「え……い、いえ」
「「なんでよぉー! もったいない!」」
「……う」
「「私だったら絶対見せてもらうのに!」」
「あ、あの……それよりも、そろそろ午後の……」
「そ、そうだな、午後は何を取ろうか?」
  ジェフさんが午後の課程を調べています。
「これなんかどうだ? 付与魔術、魔具作成の実演をやるって話だぜ」
「おし、ブリー、それにしよう」
「ブリー?」
「何となくそっちの方が言いやすくってな、いいだろ?」
「まぁ良いけど……、で、君たちは?」
「「うん、いいよ」」「あ、はい、かまいません」
「じゃ、いこっかぁー!」


「……噂をすれば」
「おどろいた」「まったくだ」「こんなこともあるんだ」「ほぇ〜」
  魔具作成の実演を見に来てみたら、そこにはエミヤさんがいました。
「ほら、弓見せてもらうんでしょ」
「ロゼこそ……」
「じゃ、じゃぁドロシー……」
「え?  わたし?」
「そこ!  うるさい!」
  あぅ〜、後ろの人たちに注意されちゃいましたぁ。
  ここでもなぜかシロウさんが魔具を作るようなので、おとなしくその実演を見学します。
  "見"ていると、まず理念を定め、それに応じた設計図を引き、設計図に併せて炉から引き出した材料を置き、形作り、そこに理念に合わせた魔力を込めているようです。
「投影の手順と一緒だ……」
  思わず漏らした声を教授らしい人が聞きとがめたのか、こちらをにらんでいます。
  いけない、口を閉ざしておとなしく見学していなくっちゃ。
  でも凄いな、シロウさんはとっても真剣な顔で、額に汗を浮かべながらも、魔力の構成を揺るがすことなく、腕を振るって、魔具を形作っています。
「すごーい」
  と、セシル
「あの人、"創る人"ね」
  と、これはロゼ。"見た"のかな?
「俺も"創り手"として負けてられないな」
  あ、そういえばブルさんは"創り手"さんでした。
「だったら"使い手"なのに弓であの人に負けてる俺はどうしろってんだ……」
  ジェフさんはちょっと落ち込んでる見たい。
  でも、そんな風にいろいろ話してるときっと教授らしい人に……え?  まだわたしをにらんでるぅー。なんで?
  そうこうしているうちに部屋に響いていた甲高い金属加工音がやみ、できあがったのは抗魔の盾。
  表面がダイヤのように堅く、同時に鋼の強靱さを持った鏡のように加工してある上に、更に対魔の紋章が刻まれ、魔眼の類は"鏡"の反射で、ワン・カウントの簡易な攻撃魔術ならば対魔紋章でそれぞれ跳ね返せるように……あれ?
  裏にまだ何かあるみたい?
  そうこうしているうちに見学に来ているみんなが盾の周りに集まっています。
「へぇー、表面は鏡面加工した上で強化を掛けてあるんだ」
「この紋章凄いな、ここまで精密に描いてあるなんて」
「これなら魔力通せばスリー・カウントまでは防げるんじゃないか?」
「軽量も掛けてあるぜ、ほら」
「違うよ、ここに呪が刻んであるぜ」
「ホントだ、そうか、表面の強化以外に魔力が通ってないから」
「魔力を通すことで防御力を上乗せできるようになってるんだな」
「器用だなぁー」
「全く」
「あれ? ねぇ、ドロシー、ここ"解析"(み)てみて」
  ロゼさんも"見た"みたい。
「はい、裏側にある加護の紋章ですね。そのままでも5%程度は対魔力が良くなりそうですけれど、事前に魔力を込めておけば更に10%程度は守ってくれそうですね」
  なんでみんな驚いた顔して居るんだろう?
「よく見もしないで判ったね」
  シロウさんが感心してくれている。
「はい、私は解析が得意なので、構造を見たり、魔力の通るラインを見ればある程度までは判るんです」
「そ、そうだったんだ」
  なんでシロウさんは顔を引きつらせて居るんだろう?
  まだ汗かいているみたいだし、魔具作成で疲れたのかな?
「ねぇねぇ」
  と、ロゼとセシルが私の肩を突っついています。
「私たちも紹介してよ」
  ジェフさんとブルさんも後ろでうんうんと頷いています。
「あ、ええと、エミヤさん、こちらが"見る人"ロゼさん、"詠み手"セシルさん、"使い手"ジェフさん、そして"創り手"のブルさんです。みんなさっきのことを話したら、投影魔術にきょうみを持ったようで、今度うかがうといっていました」
「そ、そうなのか、よろしくな」
「「「「それから、朝やっていた弓とかもまた見せてください」」」」
「へ?」
「「「「戦闘魔術の時見ていました、凄くきれいだったのでまた見たいんです」」」」
「あ、ああ、機会があったらな」
「「「「おねがいしまーす」」」」
  シロウさんは、みんなが息を合わせてお願いしているので、おされてるみたいです。
  ロゼとセシルなんか、シロウさんの腕を抱え込んで……え?  なんか急に二回生以上の人たちが静かに……
「あーあ、知らねぇぞ……」
「あの二人知らないんだ……」
「可哀想になぁ」
「もう終わったな……」
  なんだか、怖いことを言ってます。
  二人も急に変わった雰囲気にとまどってる見たい。
「ええっと、二人とも、手を離してくれるかな?」
「「ええ?  だめなんですかぁ?」」
「俺、付き合ってる相手がいるから、あまり誤解受けるようなことはしたくないんだ」
「「ええー、そうなんですかぁ?」」
  と、二人が聞き返すのと同時に
「そう言えば……」
  と、昨日のことを思い出していた。
「「何か知ってるの? ドロシー」」
「はい、昨日たまたま見て……」
「ひょっとしていつもの喧嘩を見たのかな?」
  と、教授
「え……、あれは喧嘩と言うよりむしろ……」
  どうしよう、あのときの様子を思い出しただけで顔が赤くなって来ちゃった。
「惚気合いか」
  と、言うこの人は二回生かな?
  あ、シロウさんの顔が真っ赤になった。
「ま、この二人のド派手な惚気喧嘩に巻き込まれたくなかったら、早くその手を離した方が良いよ」
  これも二回生らしい人が言う。
「そうそう、俺たち、巻き添え喰らうだけでも命が危ないってのに、あからさまに嫉妬を誘うようなマネをやってたら、ホントに殺されるかもしれないぞ」
  教授も含めてみんなでうなずいています。
  二人ともすっかり青くなって手を離したけれど、凄く不安そう。
「二人とも抗魔の護符と物理的衝撃への対策はとっといた方が良いよ。あいつの放つフィンの一撃は下手な拳銃より強力だから」
  シロウさんが心配そうに言っています。
「いつも思うけど、毎日のようにあれ喰らって、よく平気でいるよな、お前」
「慣れたからな」
  苦笑しています。
「慣れたって問題か?」
「おかげで多少は対魔力があがったよ」
「そりゃお前の場合低すぎだからな」
「あがったって言っても一般人よりマシな程度じゃないか」
「通常クラスの護符が一撃で消滅するってのは普通無いぞ?」
「ほら、俺の場合呪いが効く前に流し出せるしさ」
「それもお前だけだ」
  みんながシロウさんを攻めているようなのですけれど、なんだかそれを聞いている二人の顔が真っ白になって来てます。
「二人とも、大丈夫?」
「「い、いったいエミヤさんの相手の方って、どんな方なのですか?」」
「ああ、昨年度の時計塔トップだよ」
「第五回聖杯戦争の優勝者でもあるな」
「宝石翁の系譜だそうだ」
「衛宮と組んで、本来なら執行部が出張るような事件を解決したこともあったな」
「こないだ死徒とやり合ったって話なかったか?」
「あんときゃ衛宮だけじゃなく執行部からも人が出てたんじゃなかったか?」
「いや、運良くたまたまいた代行者と組んだんだ」
  周りの人たちがいろいろと言っています。   けれども、その会話を聞いている二人がすっかり震えちゃっています。
「もう時間だし、とりあえずどっかに移らないか?」
  あ、シロウさんが割って入ってくれました。どうじにジェフさんやブルさんに目配せしています。
「あ、ああ、そうだな」「とりあえず、さっきのティーハウスでどうだ?」
  二人がロゼとセシルを連れ出したので、私がシロウさんを案内する形になりました。


「さて」
  と、ティーハウスに落ち着くと同時に口を開くシロウさん。
「俺はこれから遠坂の研究室に行って、勘違いされないように説明してくるけれど、万が一ってことがある。念のために対魔と対衝撃の護符を多めに用意しておいた方が良いよ。作り方は判るね?」
  言いつつも手帳にさらさらと何か書いている。
「さっき話にも出ていたとおり、普通のランクの護符では一発で消し飛ぶ。せめてこのクラスの護符を何枚か用意しておいた方が良い」
  そう言うと、書き込みを終えた手帳のページを破り取り、二人に渡している。
  肩越しに覗き込んで"見"ると……
「あの……これって、Cランクの魔術攻撃なら完全に無効化できますよね?」
  そう、紙にペンで書いただけなのに、魔力を通しさえすればそれだけの効果が出る"護符"が描かれていました。
「遠坂のフィンの一撃ならこんなの十発も打たずに無効化できるよ」
  あ……二人ともまるでショック死しそうな程の衝撃受けてる。
「えっと、フィンの一撃で……ですか?」
「そうだよ」
「もし、ほんきの魔術攻撃をしてきたらどうなるんですか?」
「本気の全力ならAランクは軽く行くよ。 聖杯戦争の時にはキャスターのサーヴァントと互角だったし」
  言いながら立ち上がるシロウさん。
「どうやら遠坂が噂を聞きつけたらしい、すぐになだめに行くから、これから一時間経っても何事もなければもう安心だよ」
  そう言って、シロウさんは見るだけでものすごく安心できる笑顔を見せてくれて、大英博物館(がくいん)に向かって歩いていきました。
  なんだか、その背中がとっても大きく見えました。


  そして、しばらく中でとても大きな音が響いたあと、シロウさんの言ったとうり、一時間と立たないうちに静かになり、総てが解決したようでした。
  二人は漸く安心したのか、すっかりさめてしまったお茶を飲むと、緊張が解けたのか、アップルクランブルを頼み、カスタードクリームとダブルクリームをたっぷりと掛けてお茶で頂いていました。
  疲れている時には甘いものをとって温かいお茶を飲めば落ち着けますから。
  ちなみに私は、カスタードたっぷりのルバーブのパイにアイスクリームを乗せたものを紅茶で、ジェフさんはチョコレートファンタジーケーキとコーヒーで、そしてブルさんはジンジャーケーキに紅茶で済ませ、そのあと、明日は最初に鉱石学科の見学をすることを決めて解散しました。


  後書き

  うーん、凛分が殆どないせいか書き辛い……。
  次回は凛が主役になるのですが……。
  とりあえず今回は、倫敦に渡って一年たった二人がどうしているのかを、ドロシアちゃんの視点でかいつまんで紹介しました。
  今回が士郎編で、次回が凛編です。
  このあと、時間軸を適当に行き来しながら、倫敦で二人が関わった騒動を 描いていく予定です。
  (なので、ドロシアちゃんの出番は減る予定)


  ご意見・ご感想をここのBBSにて頂けたら幸いです。
  特に、私が気が付いてないであろう未熟なポイントの情け容赦のない指摘を頂けると少しでも文章をマシにできるはずなので、そのあたりよろしくお願いします。

MISSION QUEST

2004/09/08 初稿up
2004/09/11 誤字訂正

 
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