とりあえず騒ぎが一段落したところで、凛は隣室に(布団を身体に巻き付けたまま)移り服を着る。もちろん士郎も(相変わらず目を両手でふさいだままの)大河と桜が退出した自室で慌てて服を着る。
そして身支度を整えた二人は大河達が待つ居間に行った。
「さて、それじゃぁ」
大河が口を開く。
「何があったのか話してくれるわよね? 士郎」
厳しい顔をして、昨日から一体何があったのかを話せと士郎に尋ねてきた。
だが士郎は、話をしようというそぶりを見せながらも、口を開けることが出来ずにいる。
話せないのだ。
士郎には相も変わらず口封じのために掛けられた術が働いている。凛に話すことが出来る程度にその効き目はゆるめられたものの、凛以外に対してはまだ有効なまま。
そのことを知っている凛が慌てて口を挟んできた。
「藤……お義姉さん、今回のことは十年前のことが絡んでいるらしいんですけど」
「どういう事?」
少し動揺を見せる大河と、その隣で「お義姉さん」の言葉に狼狽している桜。
そんな二人の様子に気付いたのか気付かないのか、選ぶようにして言葉を続ける凛。
「そもそもの始まりは十年前に同じく被害を受けた子が重傷を負った状態で入院しているのに出会ったからだそうなんですけど……」
ためらうかのように一旦言葉を切り、うつむく。
「……、わたしも全てを聞いたわけではないので何ですが、とりあえず一度、ウォーラム神父に会ってからの方が良いようです」
続けた言葉を最後まで言い切ると同時に顔を上げた凛の目には顔中に疑問符を浮かべまくった大河と桜の顔が映った。
顔は見えないものの、隣の士郎も驚いている雰囲気だ。
「ウォーラム神父は信徒からの相談に乗ったり懺悔等を聞いたりする都合上、カウンセリングの資格を持っているそうなので」
「え? そうなの?」
嘘ではない。
但し、士郎をカウンセリングに連れて行くとは一言も言っていない。
凛の目的はただ一つ。士郎に掛けられた呪を術者本人に解かせ、士郎をあのような目を合わせたことに対してきちんとした始末を付け、そして二度とこのようなことをさせないこと。
それが、彼女の決めたこと。
あかいあくまと正義の味方 学園生活編 〜その19〜
「それで、どうするんだ?」
掛け慣れない眼鏡をいじりながら士郎が言う。
「どうもこうもないわ。真っ正面から乗り込むだけよ!」
そんな士郎の様子に状況も忘れて思わずいたずらっぽい笑みを浮かべながら言う凛。
今二人は教会の前に並んで立っている。
あの後、冷静に話を運ぶ凛の弁舌により話はうやむやのうちの終わった。そして、手早く朝食を済ませると、凛がいくつかの事前手配を済ませた上で、二人はつれだって此処にやってきた。
打ち合わせは此処に来るまでのバスの中、繋いだ手を通しての念話により済ませてある。
後は突入あるのみ。
万が一に備えるために凛が必要とする宝石類は、昨日、士郎を捜しに出た時既に服の各所の隠しポケットと腰のポーチに移してある。つまりは最大戦力状態。
しかもここは冬木の地。
この教会自体霊脈の上に立つとは言え、大元の管理者が遠坂の家である以上、その操作は教会よりも遠坂家の者に主導権がある。
かつてキャスターが柳洞寺の霊脈についでこの地の霊脈も手中に収めていたことはあったが、そのときに奪われていた管理権は、言峰の後任であるウォーラム神父達が来る前に取り返し、今現在もきちんと確保してある。
つまり一見敵地に攻め込むように見える状況であるが、その実、地の利ははじめから確保済みなのである。
ましてや今回は別に戦いに来たわけではない。
いや、遠坂の地において、その直弟子に対し口封じ工作を行ったという今回の件が、もしも協会をはじめとする他の組織に伝われば、教会の政治的立場が悪化するのが必定である以上、協会に属しつつ教会にもパイプを持ち、従来このような事態に於ける外交窓口の一つとして機能していた遠坂の魔術師との戦いは、教会側としてはよほどのことがない限り忌避すべき事態なのだ。
よって、この訪問に先立ち、簡潔に状況をしたためた書を使い魔に持たせ教会に送った後、それに目を通し終わる頃に届くよう、第二弾として教会を訪問する旨記したメッセージカードを送った時点で全ての決着はついていたと言って良い。
かくして上記の状況となったわけである。
「さ、行くわよ」
士郎を促しながら教会の扉に手を掛けようとした時、重々しい音と共にそれが開き始めた。
どうやら中から様子を見ていたらしい。
驚きもせずに開かれつつある扉の内側に視線を投げる二人。
あの戦争をくぐり抜けた二人が、今更この程度で騒ぎ立てるはずがない。とはいうものの、扉を開けている人物が「昨日会った」看護士であったのに気が付いた士郎は僅かながら驚きを見せたが。
看護服を着ていた昨日とは違い、あっさりとした地味な三つボタンの背広を着た看護士は、扉を開け終えると改めて二人に向かい一礼する。
「遠坂様、衛宮様、わざわざ足をお運び頂きありがとうございます。どうぞお入りください」
凛はその様に冷たい一瞥を与えると、士郎の手をつかんで奥へ、神父が迎え入れるために頭を下げて立っているその場へと歩き始めた。
一方の士郎は、流石に昨日自分にされたことを許す気にはなれずにきつい視線を看護士へ投げる。
と、凛に引っ張られて流れ始めたその視線が、頭を上げた看護士のそれと交差する。その一瞬の後の、看護士の驚愕と悔しさに歪んだ顔を斬り捨てるように、視線を奥へと向けると、少し先に行った凛の横につくため、やや大股に足を進めた。
二人並んで神父の前に立つ。
無言のまま詰問するかのような視線を投げる凛に対し、ウォーラム神父は深々と頭を下げると、謝罪の言葉を述べ始めた。
「この度は、部下のものがご迷惑をおかけして申し訳ございません。この件につきましては当方にてしかるべく……」
しかしその言葉を凛が遮る。
「お互い長々とした前口上は不要でしょ。すぐに本題に入りましょう」
「……、ではこちらに」
とりつく島もないその言葉に、しかし神父は毛筋程にも表情を変えないまま、二人を奥の部屋へと誘う。
神父を先頭に二人が並んで続き、最後に看護士が続く形で奥の部屋への回廊を歩む間、念話が交わされる。
(遠坂、神父さんにまでああいう言い方しなくても良いんじゃないか?)
(良いのよこれで。話が終わってからならば兎も角、いまはこうしてお互いの立場をはっきりさせておかないといけないの)
(そう言うものなのか?)
(そうよ。それに、これは後ろのアイツへの牽制でもあるの。アイツでしょ? 士郎にちょっかい出したの)
(そうなのか? ……ああ、昨日会ったのはアイツだ)
(それにね、人の管理地に来ていながら挨拶一つしていないような不良魔術師のことについても、きちんと釘を刺しておかないといけないし)
(ご、ごめん)
(? なんで士郎が謝るの?)
(うっ、だって俺、ずっと黙ってこの街に住んでたから……)
(ああ、それならもう良いわ。代償はきちんと貰ったから)
(え? 俺、なんか遠坂に渡したっけ?)
(ええ貰ったわ)
(……あの剣か?)
(ううん、もっと良いもの)
なぜだか士郎にはこの「もの」がどうしようもなく甘い響きをもって聞こえた。
(一体、なんだ?)
(うふふ、今度教えてあ・げ・る!)
そんな、何故か脱線し始めたやりとりで、凛が士郎の頭をグラグラにしている間に、二人は奥の部屋についた。
(この話はまた今度。後は打ち合わせ通りに行くわね)
(判った)
部屋の中に入った二人は手を離すと、士郎が引いた椅子に凛が座り、その隣りに士郎が座る。それに併せるようにして神父と看護士も席に着いた。
上手に凛と神父が、下手に士郎と看護士が、それぞれ向かい合って座る形である。
飲み物などと言った、普段ならば人を迎え入れる際に用意するであろうものは、特に何も用意されていない。何か出されたとしても、二人がこの段階でそれを口にするようなことはないだろうが。
「では改めて、この度は部下の不手際によりご迷惑をおかけしたことを、ここに謝罪いたします。この者に対する処分は当方にて間違いなく行います。また、この件についての賠償ですが、誠に申し訳ないのですが当方にて十分に協議をする時間もなかったものですから後日……」
「ちょっと待って」
着席と同時に始められた神父の謝罪と、その後の処置についての説明の言葉を、凛が遮る。
「その前に聞いておきたいのですけれど、今回士郎に掛けた術、こちらで解いても良いのですが、そちら」
言いつつ、ちらと看護士を一瞥する。
「で解いても構いません。どうします?」
「それは、どういう?」
虚をつかれたのか、神父の言葉にまとまりがない。
「いえ、ちょっと考えてみたのです。本来魔術を神の御技に反することとして嫌っているはずの聖堂教会で、何故、魔眼持ちとはいえ、三流以下の魔術師を使っているのか。そう、まだスイッチが出来たばかりという、駆け出しに過ぎない士郎並の相手を除けば、他の魔術師に術を掛けられそうもない程度の、素人に毛が生えたレベルの魔術師を。……などと考えれば、何らかの事情があるであろういう事ぐらい、誰でも考えつくことと思いますけれど」
軽く口の端に笑みを浮かべつつ、凛が言う。
「なるほど、面白い考え方ですね」
同じく、口の端に笑みを浮かべつつ神父が返す。
「そうでなかったとしても、こちらで解いてしまえば、今後そちらに日頃の意思疎通に問題を持つ人を一人、抱えることになるのではありませんか?」
軽く笑みを浮かべつつ、同時に、さもどうでも良さそうに凛が言う。
「フム、確かにそのような役立たずを抱え込むのは、望ましいことではありませんな」
神父が顎に手をやりながら答えるその脇では、看護士が口をきつく、真一文字に引き絞りつつ、悔しそうにして凛の顔を睨んでいる。
士郎は、そんな神父と看護士の顔を等分に見つつ、何があってもすぐ動けるよう、あえて身体から力を抜いた状態でやりとりを見守っている。
凛はあえて口を開かず、神父の思考がまとまるのを待つ。
「では、お言葉に甘えて、こちらで解かせて頂きましょうか」
ややあって、考えをまとめた神父は、凛の提案を受け入れた。
教会側としては遠坂家に対する借りが増えることになるが、現状においては、これを受けようが断ろうが大勢には影響がないと判断したのだろう。
そして、神父に促されて解呪を行おうとした看護士は、口を開くとまず一言、
「すいませんが、その魔眼殺し、外して頂けませんか?」
と言った。
そう、未だ顔に幼さの残る士郎が、その童顔を強調するが故に掛けたがらないそれを渋々ながらも掛け、ここに来るまでの道すがらさんざ凛の笑いを誘っていた、この似合わない眼鏡。それは、凛が急遽作成した魔眼殺し。
それなりの元手(宝石)を消費したこの魔眼殺しは、宝石クラスの魔眼までならば遮断することの出来る逸品。
即席とは言え、わざと過剰な性能で作ったこの魔眼殺しは、彼我の能力の違いを示すためのデモンストレーションでもある。
要するに、様々な事情を勘案したところ、独断で行動したであろうこの看護士に対しこう言っているのである。
「身の程を知れ」「聖杯戦争優勝者を舐めるな」
と。
昨日の士郎と対していた時の傲慢さを感じられる態度とうってかわって、この看護士がすっかり大人しくしていた理由の一つはこれである。
むろん、神父にきつく言い渡されていたこともある。が、しかし、先ほど、士郎達が教会に入る時、ここまで追い込まれた状況でなお、力ずくででも状況を打開するため、一瞬の隙をついて魔眼をにより士郎を制御下に置こうと視線を交えたその瞬間思い知ったのだ。その見るからにできたての、しかし自分では到底破ることの出来ぬ強力な魔眼殺しに気付くことで。相手が魔術師としては僅か二百年程度しか歴史を積み重ねておらぬ新参の一族の、未だ時計塔に入学していない当主とは言え、それなりの魔術教育を受けてきた相手には自分が到底敵わない事を。
結局の所、士郎のような特殊な例を除けば、まともな魔術教育を受けていない--この看護士はある事情により教会内にしか身の置き所が無く、きちんとした魔術教育は受けることが出来なかった--素人同然の魔術師が、正規の教育を受けた魔術師に敵うわけがない。
つまるところこの看護士は、相手が凛でなくても、それなりの教育を受けた魔術師相手では実力的に一般人と大差ない。士郎相手に魔眼が通用したのは、例外的に士郎の抗魔力が一般人並みに低いからに過ぎなかったため。このことが理解できた故に、大人しくなったのだ。
それ故に口調も丁寧になっている。
何しろ、自分は凛相手には役立たず、上司である神父は代行者であるとは言え、その前に「元」の字がつく。ならば聖杯戦争優勝者である凛との戦力は互角程度と見なすのが適当であろう。そして、昨日手玉に取ったはずの目の前の男、衛宮士郎は実は「あの」魔術師殺し、衛宮切嗣の養子であるという。ならば魔眼を除けば治癒系の能力しか持たぬ己では戦闘力において敵うはずもなく、唯一の優位点であった魔眼も封じられている以上、逆転の目はない。
このように判断したがゆえの弱者としての選択なのだ。
「判った」
かような状況の下、士郎はあっさりと頷き眼鏡を外すと、これ見よがしに凛と手を繋いだ上で看護士と視線を合わせた。むろん、事前の打ち合わせがあったればこそである。
つまり、「魔眼を使って何かしようとしても、遠坂とパスが通じているから、すぐに対処できる。いくらあがいても無駄に終わるだけだぞ」と、態度で示したのだ。
既に己の敗北を受け入れている看護士も、いまさらじたばたすることなく、大人しく士郎にかけていた縛りを解き放って行く。
手抜かりの無いように丁寧に解き放つその過程で、凛が今朝方行った作業についても否応なく気が付き、これによってますます彼我の実力差を意識させられていく。
この看護士がこの後、どれだけの期間この街にいるかは不明であるが、これでもう二度と、凛や士郎に危害を加えるようなことはないだろう。
この間士郎はと言えば、あらかじめ凛に言われていたとおり、神経を集中して自らの中で動く魔力の動きを追いかけ、どのような力の働きが看護士によってもたらせたものであるのかを解析すると同時に、その解除方法から逆算することで、術のかけ方も学んでいた。なんだかんだ言って、結局士郎は理論よりも実践に強い所がある故の実地勉強。その教材に利用できると凛が判断していたためのこと。怪我の功名。
そして士郎は、術が解除されて行くに従い、それまで意識することのなかった圧迫感から解放されていくことにも気が付いた。自分に何事かを強制していたものが外され、それに従い、あたかも凝り固まったいて筋肉が解きほぐされ、伸ばされていく時のような爽快感が心の中に拡がる。
その感覚は、士郎に何かを伝えているような気がした。
「これで全て解呪したはずです。ただ、何分にも自己流の魔術ですので見落としがあるかもしれません。申し訳ありませんがご確認願えませんでしょうか?」
一通り解呪出来たはずであると、三度にわたって確認を繰り返していた看護士が、士郎から視線を外さないまま、漸く口を開いた時、既に時計の長針が一回りしていた。
「そうね、此処と此処、それから此処に見落としがあるけれど、どれもほっといてもすぐ消えるようなものだけど」
「え!?」
さらりと、しかし容赦の無い凛の指摘に慌てて確認する。
「こ、これは……、すいません。見落としていました」
言いながら慌てて外していく。
「自己流魔術の限界ね。理論に従った教育を受けていれば見落としようがない、いえ、こういう見落としがないように教育されると言った方が正しいわね。これに懲りたら、魔術を使う時と使ってはいけない時について、もっとよく考えるようにする事ね」
「は!?」
何を言われたのかよく判らない様子。
「神秘は隠匿すべきもの。これは教会でも変わらないはずよ?」
突き放すように冷たく響く凛の言葉。
「遠坂、それってひょっとして……」
看護士から視線を外して士郎が問う。
「ええ、多分この人、今までも色々なことを魔術を使って無理矢理解決してきているわね」
士郎とあわせたその視線の奥には紛れもない怒りの色が浮かんでいる。
「そんなことまで判るのか?」
驚いてみせる神父。どことなくわざとらしい気がするが、それに気が付いているのはおそらく凛だけだろう。士郎は素直に驚き、看護士はあきらかに狼狽しているのだから。
「ええ、士郎(から視線によるパス)を通してこの人の中を見て見たところ、色々な魔術の痕跡がある。どれもこれも、人の精神に働きかける魔術を使った事による、等価交換によるものね」
氷点下の温度をもって、虫でも見るかのような視線を看護士に突き刺す凛。
「古いものも多いけれど、此処一月ぐらいの間に使った魔術の跡もたくさんあるわ。このわたし(遠坂)の管理地に断りもなく入り込んだ上に、魔術の大盤振る舞いをしていたようだけれども、何か申し開くこと、ある?」
その言葉に狼狽して見せる神父。
「なに? 挨拶に行っていない上に、そんなに魔術を使用していたというのか?」
看護士は、否定できずにうつむく。
「どうやら、君にはいくつか誓約をして貰った方が良いようだな」
懐から聖書を取り出しつつ神父が言う。
士郎にもあきらかに判る程の「歪み」が感じられる聖書だ。おそらく、かなりの概念を持った逸品であろう。或いは、代行者だった頃の主要武装の一つかもしれない。
その聖書を机の上に置き、神父は言葉を続ける。
「誓って貰えるね? わたしの元にいる限り、わたしの指示無くしてみだりに魔術は使わないと」
渋々と右手を伸ばし、聖書の上に置くと看護士は誓う。
「ウォーラム神父の指揮下にある限り、ウォーラム神父の指示無くしてみだりに魔術を使わないことをここに誓います」
その言葉が受け入れられたのか、聖書を媒介に魔術のようなものが発動する。注意深く解析しつつ見ていた士郎の目には、看護士自身の魔力を継続的に使用する「縛り」が、看護士自身に掛けられる様子が写る。非常に確固たる「縛り」だ。
「もう一つ、この街において、遠坂 凛、衛宮 士郎の両名に敵対する行為は行わないとも誓えるかね?」
「この街にいる限り、遠坂 凛、衛宮 士郎の両名に敵対しないことを誓います」
神父の言葉に、やはり渋々ながらも誓いを立てる。
再び看護士の身に強固な縛りが掛けられる。
「とりあえずはこんなところで、許しては貰えまいか?」
神父の問いに凛は首を振って応える。
「後一つ、この街の人達に掛けた魔術、その内容にも寄るけれど、本人に害を為すものは全て解いて貰うわ」
一つ瞬きをする神父。
「もっともだ、だがまぁそれは誓約する程のものでもないだろう?」
言って、看護士に視線を向ける。
「聞いての通りだ、この街の人に掛けた、害となる魔術は全て解呪することを命ずる」
「……謹んで」
神父の命令を受ける看護士。これで一応は今回の問題は解決したことになる。むろん、教会側からの遠坂家に対する謝罪に伴う諸々の処理は残っているのだが、こういうものは過去の事例もあり、全て手順が決まっている。
よって、これにてこの一件は落着である。
あくまでこの一件は。
問題はまだある。
「さて、次に聞かせて貰いたいことがあるのだけれども、よろしいかしら?」
士郎が魔眼殺しを掛け直すのを待って、改めて凛が口を開く。
「……」
無言のまま渋面を作る神父。
「何故、そちらの看護士さんはこうも無節操に魔術を使っているのかしら? 神秘は隠匿すべき物。この認識は教会側でも変わらないと思ったのですけれど?」
その通りである。
一部は神の御技を伝える物として正道の奥深くに仕舞い込み、残りを異端として狩るか、それとも全て隠匿し我が物とするかの違いはあれ、教会にせよ協会にせよ、神秘を表に出ないようにしていることに代わりはない。それは魔術や魔眼にしても同様である。教会にとって、魔術が魔に属する物として排除すべき物であることをさしおいても、むやみやたらと使って良いものではない。しかし、この看護士、問答無用でいきなり士郎に対し魔眼を使用したことからも判るように、隠匿すべき物との自覚を持たずに闇雲に魔術を濫用しているようである。
これは教会としても黙って見過ごすことの出来る問題ではないだろう。
故に問う。「何故か?」と。
これはこの地の管理者でなくとも魔術師であるならばごく自然な疑問。
ただ、管理者としては疑問だけで終わらせるわけに行かないが故の問いである。
「む、それは正直わたしも知りたい。何故ああも魔術を濫用しているのだ?」
渋い顔のまま、看護士に問いただす神父。
対する答は……。
「え? 使える力を使って何が悪いのですか? 折角物事を効率よく進めることの出来る力があるのですから、使わないのはもったいないでしょう?」
「え?」
「なに?」
「は?」
残り三人の、あっけにとられた反応が室内に響く。
「なにそんなに驚いて居るんですか?」
この反応に看護士が驚く。
「だっておまえ、魔術ってそんな便利な物じゃないぞ!」
あまりあまりな言いように、事前の打ち合わせも忘れて、士郎があきれたように言う。
「え? 便利じゃないですか。特にこれと言った元手もいらずに人の心をちょっといじったりすることが簡単に出来る。PTSDの治療なんて、これがあると無いとじゃ大違いなんですよ」
あっけらかんと、それこそ悪びれる様子など欠片程にも見せずに答える。
ますます呆れる三人。
「アンタ、等価交換の原則は知ってるの?」
とりあえずは委員長属性の凛が場を取り仕切る。
「ええ、何かを為すにはその代償が必要。魔術を用いて神秘を為すにはそれと等価となる代償が必要。で、そのために魔力を蓄え、使用する。……で、それが何か?」
なにを当たり前のことを聞くのかと言わんばかりの態度で応える看護士。
「あっているわね、けど、精神に干渉する魔術の場合、等価交換の原則に従う代償がもう一つ必要になる」
ぴっ! っと左の人差し指を立てて、左右に軽く振りながら言う。
「もう、一つ? なにを?」
その、虚をつかれたような驚きの表情をみるに、まったく知らなかったらしい。
「物質的な効果を求める魔術の場合、物質的な代償のみで作用するけれど、人の精神に干渉して思考の方向性をねじ曲げる魔術の場合、物質的な代償を必要としない代わりに術者の精神も同じ方向に曲げていく。つまり、あなたが士郎に沈黙を要求する術を掛けた場合、あなた自身も沈黙を強制させられるわけ。聴いたこと無い? 『人を呪わば、穴二つ』って。そう言うこと。判った?」
言い終わると同時に立てていた人差し指の向きを変え、看護士を指さす凛。
看護士は、このようなことを初めて聞いたのか、目をぱちくりしている。
「まぁ良い、為すべき事をし終えたら、二三日ゆっくり考えて、何か判ったことがあったらここに来なさい。判らないのならば、判るまで自分の部屋で考えていることだ」
神父の言葉に「判りましたと」一言答え、看護士は大人しく退出していった。
「さて、とりあえず士郎のことについてはここまでにしておきましょう」
凛の言葉に頭を下げ、改めて謝意を表明する神父。
「では次に、この冬木の地において、聖杯戦争監督役が、その職務上生じた事柄を、この地の管理者であるわたしに、為すべき報告を怠っていたことについて」
一語一語区切りながら、淡々と次の議題をあげる凛。
むろんそこには、冷ややかでありながら同時に、いかなる反論をも貫き通す意志が込められている。
今まで討議していた件は、個人的な重要度はさておき、基本的には一魔術師(とその師匠)と一魔術師(及びその上司)の問題であり、たまたまそこに「管理者に対する義理を欠く」という事項が絡んでいたために起きたこと。
しかしこちらの問題は違う。
聖堂教会と魔術協会の合意の元派遣された神父が、少なくとも協会側に対し報告を怠っていたという事実が発覚した以上、この地において協会を代表する管理者としては、その立場上厳しく糾弾する必要がある。これを怠った場合、霊地管理者としての能力に疑義をもたれ、最悪、管理地を取り上げられる危険すらある。つまり、妥協の余地が少ないと言うことだ。
故に、外交官として、聖堂教会側の代表との交渉を、自らの優位を確保する形で確実に終わらさなければならない。
そこに、個人の意志が介在する余地はない。
ちなみに、士郎の件を先に済ませたのは、この交渉のための証拠固めという側面もある。
むろん、聖杯戦争「中」であれば、「中立」であるべきであった監督役として、遠坂家に対しては明かしてはならぬ事もあったであろう。しかし、すでに聖杯戦争「後」である現在に於いてすら未報告の問題があった事実。これは決して無視しうる事態ではない。
「……」
神父の顔に苦いものが走る。
行きがかり上、士郎の件を認めざるを得なかったため、この件についても過失を認めざるを得ない。
この件をうやむやにすますためには、まず士郎の件を誤魔化さなければならなかったのだが、そのためには看護士の独走があまりにも都合が悪すぎた。
先ほど、神父自身の命にて看護士は士郎にかけた術を解呪した。これは士郎の件を認めたことを意味する。では、もしこの件を認めず、術も解かないままであったらどうなっていたか?
士郎本人については、凛が術を解呪。これで終了。しかし、そこには一つの問題が残る。
士郎に掛けた術が返される事により、看護士に対し倍増しで残る術の痕跡である。
ここでこの看護士を「証拠」として確保されてしまえば、結局事態は協会側に知られることとなる。最悪の形で。
この場合、「証拠隠滅」のためには、神父一人で二人の魔術師を、聖杯戦争優勝者及び--今は半人前以下とは言え--「衛宮」の名を継ぐ者を相手取り、戦う必要が生じる。
戦って負けると決まった相手ではないが、勝てなかった場合--「最悪」の上を行く「最悪」の事態--の事を考えれば、この場では戦わずに負けを認めることで、「最悪」にならない程度の失態に済ませておくのがましというものであった。
……と、まぁ、この程度のことは神父も事前に覚悟しては居たのだが、それとて現実にこの局面まで来れば、やはり忸怩たるものを感じ、そう感じずには居られなかった事への思いを顔に出さずには居られなかったようだ。
しかし、今更愚痴を言ってもどうにもならぬ。
神父は一つ息を吸うと、遅すぎた事後報告を開始した。
先ずは部屋の奥の書棚にあらかじめ用意していた報告書の原案を取りに行き、凛に渡す。あくまでこれは教会側に都合良く事態が終結した上での事後報告用に用意していた報告書の下書きであるため、これから報告する内容とは食い違う内容もある。今この書類を取り出したのは、なにもかも隠し通すのではなく、後ほど報告するつもりではあったことを示すだけに過ぎない。
判っているので、凛も特別目を通そうとはしない。念のため自身と、士郎の解析により不審な処理が施されていないか否かの確認を行ったのみ。
その上で改めて神父の報告を受ける。
基本的には昨日、看護士が士郎に語った内容そのままであり、これはさして重要ではない。重要なのは、「何故」報告が遅れたのかである。
結論としては「言峰が悪い」と言うことになる。死人に口なしと言うことで全ての罪を被せてしまえば済むから……と言うだけではない。
聖杯戦争に言峰が「参加」した上に、そのことは当然どこにも報告されていなかった。このため、協会はもとより教会も言峰が流す欺瞞情報により、事態を正確には把握できていなかった。そして聖杯戦争そのものはとりあえず収まったものの、現実と両組織がつかんでいる事態との間に齟齬があり、それは凛が協会に報告書を、協会に糾弾書を送るまで認識されていなかった。協会側では何分凛が現場にいるため、改めて得られる報告により、事態の再認識は滞りなく行われたのだが、教会側としてはそうはいかない。事態が事態であったため、どうしても凛が協会に送った報告の写しを「見せて貰う」という立場にならざるを得ず、それはそのまま対処の遅れに繋がる。
兎にも角にも先ずは人を送り現場の情報を得るのが先と言うことで、然るべき担当者を捜す一方、言峰の配下として現場で活動していた者達にも事態収拾のための指示が飛ばされた。
この時の基本方針は「正確な情報の収集」と「教会にとって都合の悪い情報の管理」であった。
前者は当たり前のこととして、後者は言峰が何をどこまでやらかしているかが不明であったため、万が一これ以上の不祥事が発覚した場合、然るべき権限を保持する者が居ない状態で対処を誤ることで、事態が悪化することを恐れたためであった。
そして神父が到着する前に、教会の地下室から子供達が発見された。
当然の如くこの件は隠蔽され、管理者及び協会には報告されない。
秘密というものはほっといてもいずれは漏れるものである以上、教会から連絡せざるを得ないことは事実だが、出来ることならば可能な限りの対処を済ませ、あまり大きな傷を受けずに済むよう対処する。このような方針が現場に通達された。
ここまでは特に問題はない。問題はこの後、神父の着任後に行われた報告内容にある。
このような事態であれば、重要事項として、現場サイドから現場責任者である神父にも報告し、今後の対処について神父と上層部との間での意思疎通及び決定を行わなければならないのだが、他の事項の中に紛れ込ませてしまっていたのだ。
うかつとしか言いようがないミスではあるが、諸々を含めて聖杯戦争の後始末に狂奔していた現場の混乱状態を考えれば仕方がなかったとも言える。
しかし教会側にとって不幸だったのは、かような状況に重なり、この件について上層部側から神父に対して話を切り出すことが後回しになったことだ。
人間、誰しも不祥事になどあまり関わりたくはない。責任上処理しなければならないとは言え、ついつい後回しにしようとしてしまうのは良くあること。
とはいえ、この結果現場責任者が把握していない不祥事が、霊地管理者及び協会にも連絡されないままの状態になってしまった。
適切な時期を選んで、適切な連絡が行われていれば、凛の性格上それなりに悩むかもしれないものの、最終的には事態を士郎にも伝えていただろうし、教会管理の病院に対してもそれなりの処置を執っていただろう。そうすれば、あの看護士も事態を秘匿しようとはせずに済んでいた。しかし、些細な報告のミスから全ては悪い方へと進んでしまったのだ。
「後日、聖堂教会上層部から、今回の件につき正式な連絡が協会及び遠坂家に対し行われますが、現時点に於いて、わたしの口から語れることはここまでです」
神父の説明が締めくくられる。
暫く部屋の中に落ちる沈黙。
冷たい視線を神父に送り続けていた凛は、薄く目を閉ざし軽く首を振り、口を開く。
「良いでしょう、今後の処置については時計塔と協議の上定めます。以後、このようなことがないようにしてください」
凛とした通達が室内に響く。
これをもって、今回の件についての協議はひとまず終了した。
「さて、今回のことで、士郎君にはまだ後遺症が残っていると思うのだが……」
とりあえずは肩の荷を下ろせたと溜息をついた神父が改めて口を開く。
「知っての通り、これでもわたしはカウンセラーの資格を持っている。良ければ私に後始末を任せて貰えないかな? むろん、士郎君には一切危害を加えず、誠心誠意をもってカウンセリングにあたり、士郎君の傷を、わたしにできる限り直すことを誓うよ」
まだ手に持ったままの聖書に右手をあてて言う。
どうやら「誓う」という言葉に反応するらしく、再び「誓い」が発動した。
「どうかね?」
「えっと……」
とまどい、凛に視線を向けた士郎は、フムと頷く凛を見た。
「そうね、折角誓って貰ったんだし、そうして貰っても良いわね」
士郎に視線を合わせながら答える凛。
「そうか、少しはこれで許して貰えるかね? この際だし、他にもおかしな所がないか確認し、何かあったら直しておこうか?」
後日の為もあり、さらなる提案が行われる。
へっ? と、虚をつかれたような凛。しかしすぐに神父に視線を合わせると宣言する。
「言っておくけれど、こいつの歪みを治して真人間にするのはわたしの役目だから、余計なところまで手を出さないこと! 良いわね!」
神父は暫くキョトンとしたかと思うと、腹を折るようにして笑い出した。
「そっかそっか、大事な人の大事なところは自分以外には触れさせたくないか! それはそうだ! うん、判った判った。余計なところまでは手を出さないよ。うん、うん」
大声で言われ、一瞬で真っ赤になる凛。士郎も、初めのうちは何を言われたのか判らずあっけにとられていたが、何を言われたか理解すると、これまた一瞬の内に顔が赤くなる。よくよく見ると、二人とも未だ繋いだままの手の先まで茹で蛸のようだ。
そして、凛が士郎と繋いだ手をそのままに、反対側の左手で握り拳をつくって立ち上がろうとした時、唐突に神父は笑いやんだ。
「ああすまんすまん、べつにからかう気はないんだよ。まぁ一時間以上も手を繋いだまま、離そうとしない程の仲の良さを羨ましくは思うがね」
機先を制せられ何も言えなくなり、口をパクパクさせている凛。
ほっておけばさらなる威力を持った爆発は必死。
そう、気が付いた士郎はとにもかくにも話題を変えようと、神父が手に持ったままの聖書に目を向けた。
「し、しかし凄いなその聖書。結婚式でそれ使ったら、離婚なんて無くなるんじゃないか?」
……宗教に無関心な日本人らしい一言である。正直、相手が悪い。
「士郎君、我々の教義では離婚など存在しないよ」
突然厳しい口調に変わった神父にとまどう士郎。
「え? 離婚が存在しない?」
「そうよ士郎、教会の教義では離婚は認められていないわ。だから、世の中には自分が離婚したいが為に、新教を打ち立てた国王なんてのが居たくらいなの。あ、一応言って置くけどわたしも一応教会の信徒よ」
ちなみにこの国王とは英国のヘンリー八世。但し、離婚問題はあくまできっかけの一つに過ぎず、政治的な動機ももちろんあったので念のため。いずれにせよ、このために英国においては他国には無い英国国教会が最大の教会となっており、結果的に聖堂教会の勢力が及ばない地域となっている。協会が本部を倫敦に置いたのもこのあたりが理由の一つではないだろうか?
「そっか、じゃぁ式挙げる時には俺も信徒になった方が良いのかな?」
何気なく士郎が言う。
「え? あ、うん。士郎がそうしたいのならわたしは構わないけど」
本人は自覚していないとは言え、「凛にあわせて」(つまり凛と)結婚することを(既に婚約しているとは言え)改めて宣言した上で、絶対に離婚なんてしないと言っているわけで、つまり自分が信徒であるから離婚なんか絶対しないと宣言した凛に対する見事なカウンターである。
よって凛はあっさりとKOされた。
「うむ、わたしとしては神の教えに従うものが一人でも増えてくれるのは喜ばしいことなのでね、是非とも入信して欲しい」
口調は重々しいのに、ニヤニヤと聖職者にあるまじき下品な笑いを浮かべていては台無しである。
「ただね、実を言うと我々の教義に於いて、一つだけ離婚が許される条件があるんだ。この条件が満たされていると嘘偽り無く証明されれば、我々としても離婚を認めざるを得ない条件がね」
何故かニヤニヤ笑いを隠しつつ神父が言う。
「え? そんなのあったっけ?」
気味悪い程の神父の笑顔に思わず引き気味になりつつ凛が首をかしげる。
「フム、まぁ普通ならば知る必要のないことだからね。何、条件なんて簡単だよ。『夫婦の間に肉体関係がないこと』これだけだ。満たせるかね?」
聖職者のはずなのに、悪魔のような笑みを浮かべた神父が問いかける。
「え?」
「ええ!?」
思わず握りあった手に力を入れつつ同時に叫ぶ二人。
「念のため言っておくが、過去であろうと現在であろうと、一度でも肉体関係が結ばれれば、この条件の該当者ではなくなる。どうかね?」
笑みには好色な色まで混じってきている。ほんとに聖職者なのか?
「フ、フンッ! 士郎が無理に入信する必要なんてないわよ!」
なんとか話をそらそうと、体中真っ赤になった凛は、八つ当たり気味に神父にくってかかる(今、手から伝わる体温からして、間違いなく凛と同じく真っ赤になっている士郎を見ると、自分がどうなるか判らないせいもある)のだが、そこににやりと笑った神父は聖書を差し出す。
「入信してくれるなら特別にこの聖書を使って式を執り行うが、どうかな?」
「う!?」
その言葉に思わず色々な考えを浮かべてしまう凛。
「ん? 俺達ならそれ使っても使わなくても一緒だぞ?」
しかしそこに相も変わらず何も考えずにこんな事を言ってのける士郎。
恐るべきは天然。
概念武装による「誓い」の縛りと同じぐらいに「誓う」と宣言していることに気が付いていない。
結果、頭に血が上りすぎた凛は、その場で倒れてしまった。倒れた先が士郎の胸元だったというのは出来すぎてはいるが、偶然のはずである。
「オイッ! 遠坂! 遠坂!」
凛が倒れてしまっては話の続けようがないので、今日の話はここまでとなり、士郎は凛をおぶって帰途についた。
なお、今日の出来事により精神操作系の魔術のきっかけをつかんだ士郎のため、この夜の魔術講座はその練習にあてられたことは言うまでもない。鉄は熱いうちに打て。である。
もちろんこの二人のことだから、端から見ていて「いい加減にしろこのバカップル!」と怒鳴りたくなるような類の精神操作ばかりやり合い、さんざベタベタしまくった後、講座修了時に一応は全て解呪した。したのだがしかし、その後もお互い、「やっぱり掛け合ったままにしとこうか」とか、「掛け合った後、わざと自力で解呪しあおうか?」などとさんざ悩みまくっていたという落ちが付いた(そして事ある毎にこの「悩み」が繰り返される)のは言うまでも無い事実である。