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あかいあくまと正義の味方 学園生活編(旧版): あかいあくまと正義の味方 学園生活編 〜その11〜  
執筆者: mission
発行日付: 2004/10/31
閲覧数: 7562
サイズは 16.15 KB
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  前の組が一生懸命アピールしようとしているが、すっかりあがっているせいか
  声が全く出ていない。ありゃ、最前列の奴らにも聞こえないな。
「あ、あの主将、やっぱり……私……」
「主将?  ここにいる主将は、間桐、あんただけだけど?」
「せ、先輩……」
「ああ、俺達が後ろについててやる、だから安心して良いぞ」
「そうじゃなくって……」
「主将としての桜の初仕事だ。がんばれ!」
「うう……、判りました……」



あかいあくまと正義の味方 学園生活編 〜その〜11





  桜の主将としての初仕事、講堂での新入生向けのクラブ活動紹介は無事に終了。
  多少つっかえながらも、奥まで届く声で弓道部の紹介ができた。
  逆につっかえながらも訥々と喋る様子が新入生には受けていたようだ。
  弓道着の姿に「萌え〜」だの何だのと、どこか間違えた反応をしていた連中も居たようだが。
「お帰り士郎、どうだった?」
「うん、結構桜のウケが良かったようだ。とりあえず見学に来る新入生は、そこそこ確保できそうだよ」
  弓道部に戻ると、既に指定席(遠坂様専用席と書かれた椅子が置いてある)となった見学席に座っていた遠坂が立ち上がって迎えてくれた。
「あら? 綾子は?」
「ちょっと寄るところがあるって言ってたけど……戻ってきたようだな。あれ?」
「なるほど、弟君を迎えに行ってたのね」
「遠坂さん、衛宮さん、お久しぶりです」
「そっか、姉弟揃って弓道部というわけか。美綴の弟だ、きっと上手くなるぞ」
「え、あ、いや、その」
「そうそう、綾子なんか追い抜くつもりでがんばりなさい」
「ほい、入部届けだ。ここに学籍番号、こっちに名前。それだけで良いから」
「あ、はい」
「綾子、どうせなら来年のために、桜と一緒に演壇に立たせれば良かったんじゃない?」
「一年も経ったら忘れてるよ」
「それもそうね」
  ……と、言うわけで今年度の弓道部新入部員第一号は美綴の弟だった。
  その後はちらほらと見学希望者がやってきたが、圧倒的に男子ばかり。
  去年よりも多いそうだから良いけど、要するにこれは桜効果ということか。
「むー、あたしん時より多いってのはちょっと悔しいね」
「いや、後ろで控えていたお前に引かれたって奴も多分いると思うぞ」
「多分ってなんだい多分って、大体後ろに控えてる方まで眼が届くんなら、あんた目当ての奴だって来るはずだろ」
「俺を目当てにする奴なんて居るわけ無いだろ」
「……確かに一目見た程度じゃどうにもならんわな」
「一目もヘッタクレもないけれど……、ちょっと悔しい言われ様だな」
「何言ってんだい、あんたはどうせ遠坂がいれば良いんだろ」
「当たり前だ」
「……ああはいはい、ごちそうさま。ほら、隣で遠坂が赤くなってるぞ」
「あ……」
「ほらほら、顔赤くしてお見合いすんなら、どっか他行ってやってくれ。道場の中が熱くなるじゃないか。このバカップル共が!」
「す、すまん」
「バ、バカップルってなによバカップルって!」
「あんた、それ本気で言ってんのかい?」
「どういう意味よ」
「この学園であんたらほどベタベタしてるカップルが他にいるのかい?」
「ベタベタって……」「そうなのか?」
「……あんたら今まで付き合った相手ともそうだったのかい?」
「いや、俺、遠坂が初めてだから」「あたし、士郎が初めてだし……」
「は、初めてって、あんたらまさか……」
「ああ、俺、今まで女の子と付き合ったこと無かったからな」
「あたしも誰かと付き合うなんてこと無かった」
「……ああ、その初めてかい」
「「他にどんな初めてがあるの(んだ)?」」
「え? ああ、いや、忘れてくれ。あたしの考えすぎだ」
「「?」」
「主将って、以外とエッチなんですね」
「間桐!」
  桜のつっこみに対し悲鳴のような声を上げる美綴に、何げに遠坂と顔を見合わせた俺だが、「初めて」のことに思い当たり、互いに真っ赤になってうつむいてしまった。
「初めてって……」
「そっちの……こと」


  ……幸い、私と士郎が真っ赤になった理由は、みんな好意的に誤解してくれたみたい。
  そりゃ、そうよね。普通、いきなりそこまで行ったりしないんだろうし……。
  うー、あのときのこと、思い出して来ちゃったじゃない。
  おかげで、気が付いちゃった。
  なんでここのところ、こんなに士郎と一緒にいたいのか、士郎を肌で感じていたいのかを。
  考えてみれば、春休みに入ってからの私、特に藤村のお祖父さんとの挨拶が
  すんでからの私は、ずっと士郎を挑発しっぱなしだった気がする。
  ……私、エッチな女の子と思われてたりするのかな?
  士郎が悪いんだからね、三学期が終わったその日にケダモノになりかけたり、その後も、ちょっと服装変えただけでおかしくなりかけたり……、そうよ、士郎がエッチだからいけないのよ。
  ……でも私たちは魔術師、自分の精神を制御できて当たり前。
  うん。原因がわかったんだから、これからはしっかりしなくっちゃ。
  士郎、あんたも魔術師なんだから、自分の精神をきちんと制御しなさい。
  できないなんて言ったら、今晩から特訓よ!
  そう思いながら、新入部員第一号の指導をしている士郎の背中を睨みつけてやってると、綾子がやってきた。
「どうした? 愛しい旦那様の背中を見て、初めての時どうするか考えてるのか?」
「綾子、あまりそう言うこと言ってると、自分が言われる番になった時後悔するわよ」
「う……、すまん。あたしが悪かった。調子に乗りすぎた」
「とりあえず、貸しにしといてあげる」
「あんた……何か元に戻ったみたいだな」
「ん、別に、ただ、確かにずっと士郎にベタベタしっぱなしだったかなって思っただけよ」
「ああ、初めのうちは『恋する乙女』って奴だからと思ってたけど、それでもやっぱり度が過ぎてたと思うよ」
「そうね、すっかり士郎に依存しちゃってたみたい。キスしてる時だって、これだけじゃ足りない、もっと一つに溶け合いたいってどこかで思って、もっともっと深いところまで欲しいって気持ちが抑えられなかったし……」
「あー、すまん、そう言う話はできれば独り者相手には控えて貰いたいのだが……」
  見ると、綾子はすっかり赤くなっている。
「あ、ごめん」
「良いさ、結局相手ができたとは言っても、まだあんたも恋愛初心者だろ、だったら、自分の立ち位置が判らなくなるのも当たり前なんだよ。多分」
「そうね、今晩あたり、士郎ともこのことできちんと話し合っておかなくっちゃ」
「ほぉおー、今晩? まさかベ……」
「ベットとか言い出したら、たっぷりと士郎のこと惚気て差し上げますわ」
「完全に復活しやがったな。しかも新たな武器まで仕入れやがって」
「悔しかったら、綾子も早く『武器』を仕入れてみなさい」
「……『武器』か、まさか衛宮があそこまで変わるとは思ってなかったしな」
「ちょっと、どういう意味?」
「ん、前に言わなかったっけ?  この学園で、あたしらの相手になりそうな奴って言ったら、あいつか生徒会長ぐらいしかいないだろ?  だけど、何があったか知らないけれど、あいつ、この冬から急にでかくなりやがった。どうかすると生徒会長まで霞みかねないぐらいだ。そうと判ってりゃあんたより先に手を出しときゃ良かったってことさ。ま、今更の話だよ」
「そうね、今更ね。士郎は私のものになったんだもの。絶対に他の誰にも渡さないから」
「はいはい。ったく、弓のライバルだなんてことにこだわらず、もっとよく見とけば良かったよ。ところで、あんた、あいつのどんなとこに惚れたんだ?  かいつまんだところを教えてくれよ」
「うーん、そうね……」
「あくまでかいつまんで、だ。あれこれ惚気られても困る」
「……最初のきっかけは、なんて言おうかな。四年前に、あいつが一人で高飛びやってたのを見たことなんだけど……」
「へ、あんたもあの伝説の目撃者だったのか。でも、あんた中学別だったんだろ?」
「たまたま生徒会の用であいつの中学に行ってたのよ……って、伝説?」
「ああ、残念ながらあたしは見損ねたんだけどね、無理だと判りきってることに挑戦し続ける姿に感動した奴は何人もいたらしい。少なくともそれまでは慎二以外には単なる『便利屋』としてしか見られて無かった奴が、大抵の奴から一目置かれるようになったのは確かだ」
「あんた、士郎と同じ中学だったっけ?」
「そ、だからあたしにとっても『有名な便利屋』に過ぎなかったんだよ。そんな奴が、たまたま同じ部に入ったかと思ったら、とてつもない腕前を見せてくれたからな。何かこう、悔しくってさ、あいつを見ると、『絶対こいつを越えてやる!』何を置いても、まずこう思うようになってたんだよ」
  もし、あたしも「伝説」を見てたら惚れてたかもな。……って、確かにこいつと私は似たもの同士だ。
「そう……、私はね、あいつのあの姿、できないと判りきってることに、無駄を承知で挑んでいく姿に、無駄だと判っても諦めるんじゃなく、今はできなくてもいつかはできるようになってやるって言う、あいつの姿がトラウマになってたの」
「トラウマ?」
「そう、私はね、大抵のことはこなしてみせる自身がある、その代わり、できないと判っていることにはハナから挑んだりしない。そんなこと考えもしない。だから、それをやってのけてたあいつが眩しかった」
「……そうですか、遠坂先輩は見ていたんですか」
「桜?」
「私も、見てたんです」
「え? それって……」
「無駄だと判っていて、素直に諦めればいいのに諦めない、ひたすらに挑み続けて、駄目だと判っても諦めず、いつかきっと越えてやると決意していた先輩を。そのときからずっと、私は先輩に憧れていたんです」
「桜……」
「わたしだけの思い出だと思ってたのに……」
「……」
「なのに、私から先輩だけじゃなく、先輩の思い出まで奪っていくんですか」
「奪うって……」
「先輩だけなら、まだ我慢できます。先輩は、あんなに輝いている人ですから、私何かより、ねぇ……遠坂先輩のように光り輝いている人と一緒にいる方が良いんです。でも、これだけは……先輩に憧れたこの思い出だけは……私だけのものだと思っていたのに……なのに、なんでこの思い出まで奪っていくんですか!」
  桜、興奮して声まで大きくなっている。
「じゃぁなんであなたは衛宮君にその思いを告げなかったの?」
  人が興奮してると、却ってこちらは冷静になれるものね。
「言えるわけ無いじゃないですか! 私なんか、こんな私が先輩と一緒になんかなれるわけが!」
「私なんか? こんな私? どういうこと?」
「おい、一体どうしたんだ!?」
「せんぱい……」「士郎!」「衛宮か」
  しまった、同じ弓道場の中であんな大声があがれば……って、桜!?
  足音に振り向くと、桜が弓道場から走って出て行くところだった。
「桜! どうしたんだ!?」
「駄目! 士郎!」
  桜の後を追いかけようとした士郎に抱きついて止める。
「駄目よ、あなたが行ったら、却っておかしくなる。だから、行っちゃ駄目」
「遠坂?」
「お願い!」
「じゃ、どうすれば良いんだ?」
「あの子が、自分で立ち直るのを待つしかないわ」
「それしか……無いのか?」
「大丈夫よ、きっと暫くすれば立ち直るわ」
「そうか」
「そうよ」
  と、言って士郎を抱き留めていた手を離す。
「だって、あなたにとっては妹なんでしょ、もっと信じてあげなさい」
「そうだな。そうするよ」
  士郎に告白して、一緒になってから私に取られたってのなら兎も角、ただ見てただけなんでしょ、だったら桜、きちんと自力で立ち直りなさい。
  あなたには、私と同じ遠坂の血が流れているのよ。
  ……でも、気になるな、あの言葉。


  ……いいのかねホントに?
  確かに遠坂が言うとおり、暫くしたら桜は戻ってきた。
  ぱっと見には、いつもとあまり変わらないように見える。
  でもね遠坂、あたしゃあの子があんたが言うほどに強いようには見えないんだが。
  大体、あの「こんな私が……」って台詞。まぁ、一年半も通い妻やっていながら告白してなかったからには、なにか理由があるんだろうとは思っていたけれど、結構深いものがありそうじゃないか?
  まぁ良い、とりあえず今は目の前のことを考えさせておこう。
「よ、間桐、もう良いのかい?」
「あ、主将、どうもご迷惑おかけしました」
「だから主将はあんただって言ってるだろ」
「あ、す、すいません。美綴先輩」
「ま、それよりも、いい加減一年が集まってきたことだし、時間も時間だ。我が穂群原学園弓道部の力を見せつけてやんな」
「美綴先輩も『見せつける』一人なのをお忘れ無く」
「お、言うじゃない。まぁ見てなさいって」
「では始めましょう」
  まぁ見せつけるって言ってもやることは単純だ。
  まずは部員達が弓を引いているところを見せ、ついで、衛宮がモデルとして桜の解説で弓道八節の各段階を区切りつつ見せる。
  一通りの説明が終わったところで、見学者の中から希望者を集め、実際に弓を引かせる。
  ああ、いくら何でもあたし達の竹弓を引かせるわけにはいかないので、見学者の体験用に置いてある弓を順番に引かせる。
  (今じゃあたしら三人だけが使っている竹弓はデリケートだし、世に同じものは二つとないので、万が一壊れたりしたら、衛宮はもちろん、専門の職人さんでも、元通りには戻せないから、なにかと面倒なことになるんだ。この点、新素材の弓は(値段はともかく)取り扱いがそれほどデリケートではなく、壊れる心配も低いので、こういう時にも安心して使わせることができる。それに、万が一壊れても竹弓よりは安くあがるからね。)
  ……そう言えば、遠坂にも一度引かせてみるかな?
  これで、的に当てることの難しさを理解させた上で、最後に桜、あたし、衛宮の順で弓を引き、あたしらのレベルを見せつけると、最後にきちんと練習すれば、こんな風に狙った的に当てられるようになるよと言って、入らないかと誘うわけだ。
  ま、衛宮みたいに上手くなれる奴なんてのはまずいやしないだろうけど、そこはそれ、嘘も方便という奴だ。
  実際、桜目当てで来てた連中は、衛宮の射を見て明らかに考えを変えていたようだし、十人ほどしか来ていなかった女子に至っては……、ははは、許せ遠坂、部員確保はどの部にとっても死活問題なのだ。
  しばらくは衛宮にも登下校時の客寄せパンダをやって貰うぞ。


  ……酷い眼にあった。
  今日の魔術訓練はいったい何だったんだ?
いきなり、「魔術を行使するためにはいついかなる時でも精神の制御が出来ている必要があるから」と言って、「じゃ、まずそこに座って精神を集中させて」と言った後の遠坂は、いきなりベタベタしてきた。で、俺がそっちに気を取られると、「ほら、集中が乱れてる!」と、フィンの一撃。
  何とか魔術回路を起動して、魔力で呪いを押し流すと、今度は背中に抱きついてきて……、「遠坂! 胸、胸!」と言っても、「あててんのよ」の一言。
  思わず切れそうになったら(どういう方向かは聞くな!)、「集中、切れてるみたいね」って言いながら、目の前に回した左腕の魔術刻印を起動させて……。
  集中できるわけ無いだろ!
  だって遠坂だぞ! あの遠坂に、あの形がよくって、柔らかくって、しかも、微妙に手のひらからはみ出す大きさの、あの感触の良い胸を押しつけられて、どうにかならない方がおかしいじゃないか!
  あのときのこと思い出して切れそうに……むしろ切れずに押さえられたことが奇跡だ。
  おまけに、何とか苦労してやっとこさ精神を集中させると、急に不機嫌になったし……挙げ句の果てに、暫く弓道部の新人勧誘を登下校時にやることになったと言ったら、急に怒り出して特大のフィンの一撃を打ってきてた。
  いついかなる時でも精神の制御を忘れるなっていってたのはどこの誰だよ。
  流石に呪いを押し流すの大変だったんだからな。
  ……まぁ良いか。ついさっきまで、俺につきっきりで看病してくれてたし。
  兎に角、今日は疲れた。早く寝よう。お休み……






  後書き

  と、言うことで、休みの間にすっかりベタベタしっぱなしの関係が身に付いた二人に、少しは周りの目を意識させようかなという回でした。
  いつまで周りのことを考えていることが出来るか否かについては……、まぁ、ノーコメントと言うことで
  ところで、桜の後輩として入ること確定(HF TEより)している美綴の弟を出しましたが、彼の名前をどうしたものか……
  ま、それっぽい名前を付けておいて、将来公式に名前が決まることがあれば、そのときつけ直すとしましょうか。(苦笑)


  ご意見・ご感想をmailまたはここのBBSにて頂けたら幸いです。
特に、私が気が付いてないであろう未熟なポイントの情け容赦のない指摘を頂けると少しでもSSがマシにできるはずなので、そのあたりよろしくお願いします。

MISSION QUEST

2004/10/31 初稿up

 
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