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あかいあくまと正義の味方 学園生活編(旧版): あかいあくまと正義の味方 学園生活編 〜その7〜  
執筆者: mission
発行日付: 2004/10/3
閲覧数: 8256
サイズは 19.37 KB
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「……判りました、それじゃ、その日に伺います。はい、お願いします」
  そろそろ電話終わりそうね。
「え? 明日? はぁ、まぁ昼間なら一応空いてますが……そうですか、判りました。じゃぁ見に行かせて頂きます」
  む、なによ、久しぶりに昼間一緒にいられると思ったのに、予定入れちゃうんだ。こないだのオフの時は士郎の中央公園に結界張ってて潰れちゃったし……このところ朝から夜中までバイトバイトで全然一緒にいてくれないし……ふんだ、私と仕事(バイト)とどっちが大事なのよ!
「はい、それでは失礼します」
  漸く終わったのね。
「いつか言ってた刀打ち、漸く見に行ける日が決まったよ。それとついでに、明日、永山さんのところに刀を見に……と、遠坂さん?」
「あら衛宮君、私の顔を見たとたんに回れ右しなくてもよろしいんじゃありません?」
「あ、い、いや、忘れない内に予定表に書いとこうかなぁーって思って……」
「明日のことまで忘れないように控えておくのですね。衛宮君がそんなに忘れっぽい方だとは存じませんでした」
「う……、あ……う……」



あかいあくまと正義の味方 学園生活編

〜その7〜






  なんで遠坂の奴あんなに怒ってるんだ? べつに明日は何か約束してたわけでもないし、ただ単にバイトの谷間に入たってだけの日だろ。だったら何もすることなく家でごろごろしてるより、刀を見に行ってる方がいいに決まってるじゃないか。ああ、あの調子じゃぁ今夜の鍛錬は熾烈なものになるんだろうなぁ。


  ……昨日の鍛錬は苛烈だった。正直、よくいつもの時間に起きられたと思う。
  魔力量が回復し切れていない体を鞭打ち、起きあがると、まずは着替えて道場へ。軽く汗を流した後、暫く素振りをし、そしていつものように自分のイメージに残るあいつとの模擬戦闘を行う。
  ……まだ、届かない。まだ足りない。しかし必ず追いついて、追い越してみせる!   気が付くと、体力の限界まで体を動かしていた。
  二振りの竹刀すら重く感じる体を無理矢理動かし、道場の中を片づけると、風呂で汗を流し、改めて着替えて台所に立つ。
  毎回永山さんにごちそうになるのも申し訳ないので、適当な量の昼飯を作って、もって行こうと決める。
  そして、いつも通り、一通りの準備が終わった頃、遠坂が起きてきたので、冷蔵庫から牛乳パックを取り出すと、コップに注いで渡した。
「ほら」
「ん」
  遠坂はふらふらと居間に戻ると、食卓の前にぺたりと座り、いつものようにコクコクと可愛く牛乳を飲んでいる。そんな様子を見ていられることにうれしさを感じながら、料理を並べると、遠坂の手から空になったコップを取り上げ、流しにおく。
  みんなのご飯をよそって、みそ汁をよそおうとした頃になって、遠坂の目が覚める気配がしてきた。このスロースターターぶりだと、昨日はあれからまた研究に精を出してたな。目が覚めきらない内に遠坂に声を掛ける。
「おはよう、遠坂」
「おはよう、しろう」
  うん、この、また半分頭が眠ってるぽやんとした状態の遠坂は本当に可愛い。出来ればこのまま思いっきり抱きしめたいけれど、藤ねぇが見てる手前、そう言うわけには行かない。残念だが。仕方がないので、そのままみそ汁をよそい、改めて声を掛ける。
「遠坂、ちゃんと目、覚めたか?」
「え……? あ、うん、起きてるわよ、ちゃんと」
「よし、じゃぁ食べるか、いただきます」
「「いただきます」」
  今日もいつも通りの朝が始まった。


  結局、遠坂は木村さんに財産の運用を委託することは出来なかった。
  理由は簡単、木村さんは藤村組と遠坂家の利害が対立した場合、藤村組の利益を優先せざるを得ないからだ。
  そのようなことがないとは言いきれない以上、遠坂も強く出ることが出来ず、結局、遠坂家の資産は全額、遠坂が自分で管理することとなった。
「ま、予定が一年早まっただけだから」
  とは、そのときのあいつの弁。
  とりあえず法的な縛りを回避する処置だけさっさと済ませたのだが、そのときあの神父が「結婚しててもこの制限はなくなるのにねぇー」って。
  あいつ、絶対に俺たちで遊んでやがるな。
  それは兎も角として、遠坂にとって、一日二日、どんなに長くても一年の内に利益を出さなければならないトレーダー達を相手にするのは、大変な様でいて、実はそれほどでもないらしい。
「だってわたし、一年、五年、十年といった単位で利益を上げられれば良いんだもの。
始めっから長期戦を戦える体勢の私と、短期決戦の積み重ねで長期戦の勝ちを取らなければならないあいつらとでは、はなから難易度が違うの。ハンデがありすぎて申し訳ない位よ」
  何だそうだ。
  どこまでホントか判らないが、まぁ確かに、常に余裕を持って優雅たれという遠坂が、株価やら先物やらの相場を見ながら、目を血走らせて取引するなんて事
考えられないしな。そう言う意味では「投機」ではなく「投資」でじっくり稼いでいくのがあいつらしい。それに、そうやって相場に釘付けになっていないおかげで、俺は遠坂の邪魔をせずに一緒にいられる時間を持てるのだし。
  ……? 何だろう、何かまずいことやったことに今頃気が付いたようなこの感覚。とりあえず、今日は帰りにフルールのケーキを買って帰れ……無いか。うーん。
「士郎、何考え込んでるの?」
「ん、いや、頭の中で何かが引っかかったような気がしたんだけど、それがなんだかわからなくって……」
「まぁ、あれこれ簡単に気が付くようなら士郎じゃないし」
  うっ、何げに酷い言われようだ。なのになんで反論できないんだろう?


「じゃ、永山さんとこから、夕方、直接コペンハーゲン行って、帰りは多分夜中過ぎると思う。悪いけど先に寝ててくれ」
「言っとくけれど、朝帰りなんかしたら、昨日程度じゃすまさないからそのつもりでいなさい」
  ……よく判らないけれど、昨日からの怒りはまだ解けてなかったらしい。
「……フルールに新しいメニュー出来たんだってな」
「それで?」
「アーネンエルベにも行きたいって言ってたよな」
「だから?」
「バイト代入ったら、一緒に行かないか?」
「……士郎、ひょっとして?」
「俺から誘ったんだ、俺が奢るのが筋だよな」
「良いわよ、そんなの、自分で持つから」
「でもデート代って男が持つもんなんだろ?」
「ででで、デートって……、ちょっと、そんな知識どっから仕入れたのよ」
「どっからって、えっと、藤ねぇかな」
「藤村先生が?」
「ああ、大学のコンパかなんかで酔いつぶれて帰ってきた時、『知ってるぅー?デートの費用って女が男に払わせるもん何だってぇー、ぜーんぜんしらなかったよー!』って」
「よりによって藤村先生に……、どこのバカよ、そんなこと吹き込んだの。まさか今でもそんなこと信じてはいませんよね? 藤村先生?」
  と、不意に振り返り問いかける。
「あー、あれね、あれ、後でネコに聞いたら思いっきりバカにされちゃった」
  と、いきなり玄関に首だけひょこっと出して答える藤ねぇ。
「え、あれ嘘だったのか藤ねぇ! それに、いつからそこにいた!」
「えー、おねぇちゃん嘘付いてないよぉー、おねぇちゃんもだまされてたんだからぁ。で、いつからって言うとぉ、直接コペンハーゲンに行くってあたりかな?」
「だぁー、だまされてたって胸張って言うことか! おまけに最初っから聞いてたのかよ!」
「ずぅーっとだまされてた士郎と違ってすぐ気が付いたもん! それに、姉が弟のこと心配するのは当たり前でしょ!」
「だまされてたって気が付いたならすぐそう言え! それからこれは心配じゃなくて覗きだ!」
「だって酔っぱらってたから士郎に言ったなんて事覚えてなかったもーん! それと、おねぇちゃんの心遣いを覗きだなんて言うんだったら、これからはちゃんと遠坂さんと一緒にお見送りしてあげるもーん!」
  どうだぁー、これなら文句ないだろぉー! っと、胸を張る藤ねぇ。
「……忘れてたんならそれはしょうがないけど、見送りは遠坂だけで良い。来るな!」
「ふぅーん、遠坂さんにだけ見送って欲しいんだ」
「うっ……、行ってくる」
「……行ってらっしゃい」
  どうやら、思い切って凛をデートに誘おうとした士郎の企みは、思わぬ伏兵により頓挫した模様。
  心持ち肩を落とした士郎は、藤村組で雷画爺さんから鍵を借りると、刀を見るため走り出した。


 永山家に響き渡るインターフォンの音。
「どちら様ですか?」
「衛宮です。永山光男さんはいらっしゃいますか?」
「士郎さんですか、いらっしゃい、今開けますのでちょっとまってて下さい」
  明美は玄関まで急ぐと、鍵を開け、士郎を迎え入れる。
「さ、どうぞあがってください」
「はい、失礼します」
  士郎が靴を脱ぎ、出されたスリッパを履くと
「さ、どうぞこちらへ」
  と、明美は士郎を部屋へと先導する。
  父の部屋に迎え入れ、どうぞお座り下さいと勧める明美に対し、
「あ、その前に、こないだごちそうになったお礼に、今日はお昼を作って持ってきました。量は多めに作ったつもりですけれど、もし少なかったら……」
「士郎さんって料理もされるのですか、お昼、楽しみにさせて頂きます」
  と、料理が入った重箱を受け取ると、にっこりとほほえみかける明美。
  その笑顔に思わず顔を赤くした士郎は、無意識に頭を振ると、
「それよりも……」
「父は今お見せする刀を用意しているところです。もう少々お待ち下さいね」
  あっさりと士郎の言葉を遮り、そう言い残すと彼女は部屋から出て行った。

  待つことしばし、カートの上に載せた1m^3程の通函一杯に刀を差した光男が明美と共に入ってきた。
「待たせて済まないね。どれから見て貰おうかと悩んでしまって」
  言いながら、通函から一本一本刀を抜き出すと、丁寧にくるまれた包みを解いていく。
「いえ、こちらこそ、見せていただけてありがたいと思ってますから」
「そうかい? まぁ、存分に見ていってくれ」
  言いつつ、一本一本、丁寧に並べ、或いは刀置きに置いたりし、部屋の中一杯に並べる。その間に、カートを引いていった明美が同じように刀で一杯の次の箱を持ってきた。
「今日のところはこれぐらいでどうかな? 君の目利きは早いけれど、夕方までなら
このぐらいが精一杯だろう?」
  言いながら、最初の一本を士郎に渡す。
「そうですね、それでは早速」
  嬉しげに刀を見始める士郎、凡庸な刀もあれば、名剣と言いうる刀もある。剣の属性を持つ彼にとって、これらの刀を見ることは、自らに足りぬ何かが埋め合わされるようにも感じられ、ひたすら夢中に"見"続けるのであった。
  だがそれ故に、彼は正面に座った光男と、脇に座った明美が、士郎を観察し続けていることに気が付かなかった。
  途中、光男の妻、すなわち明美の母親と明美から料理の腕をほめられつつ(レシピを聞き出されたりもしたが)の昼食に中断されたものの、士郎はバイトに行くぎりぎりの時間まで刀を見続けていた。
「今日は本当にありがとうございました」
「いや、私も君にいろいろ教えることで知識の洗い直しが出来て良かったよ」
「私も今まで学んできたことの復習が出来ました」


  鑑定士父娘に見送られた士郎が帰っていくと、二人は表情を改め、部屋へ戻った。
「あなた、テープはここにまとめておきました。カメラに対応した番号を振ってあります」
  どうやら見送りに出なかったのはそう言うことらしい。
「うん、それで明美、お前は見ていて気が付いたことはなかったか?」
「いえ、刀を見ている時は明らかに雰囲気が変わってましたけれど、具体的にどこをどう見ているのかは……」
「うむ、私も同じだ。強いて言うならば」
「肉眼で見ているにもかかわらず、全体を見ながらも、同時にコンマ一ミリ以下の瑕疵も見落とさない、精密な観察力ですね」
「うむ、だがそれだけであれほどまでに判るのだろうか?」
「ビデオを確認しましょう」
  だが、二人が事前に仕掛けたカメラの映像を全てチェックしても、士郎の驚異的なまでの鑑定能力についてはヒントすら得ることが出来なかった。
  当然である。
  士郎の鑑定能力は、その実、魔術的な解析能力そのもの。もとより、固有結界"無限の剣製"という、究極の一と、そこからこぼれ落ちた魔術しか扱えぬ士郎は、剣製に特化しているが故に、剣の解析能力が非常に優れている。
  聖杯戦争をくぐり抜け、その後も凛の元で修行に励んでいる彼は、今や殆ど魔力を消費することなく、しかも無意識の上で、剣に属するものを全て、一瞬にして解析できるようになっているのだから。
  しかも、遠くから剣を眺めた時の解析であっても、凛のような優れた魔術師ですら、判っていなければ気が付かないほど微量な魔力しか消費せず、ましてや手に取っているとなれば、おそらく魔法使いですらその魔力消費を関知できないのではと思わせるほどになっている。
  ……もちろん、かの英雄王の乖離剣(エア)だけはどれだけの魔力を費やしても解析できないのだが、かような世界が存在するより前から存在していたものなど例外中の例外に過ぎない。あれはおそらく、士郎であっても、根源の向こう側に行かなければ解析できないものであろう。
  かほどに優れた士郎の解析能力を、いくら専門家とは言え、所詮は普通の人間に過ぎないこの二人に、解き明かすことなど到底不可能であった。
  しかし彼らは専門家と、その専門家の跡を継ぐべく幼少の頃より研鑽を重ねてきた身。自分たちが歩んできたその道を覆すような存在に出会った以上、取りうる手など限られている。
  すなわち、それを乗り越えるか、さもなければ取り込むか。
  彼らが専門家としての矜持を持つ以上、無視して進むなどという選択肢はあり得ない。
「明美、衛宮士郎という男をどう思う?」
「そうですね、まじめで優しく、それでいて頑固なまでに強い人に思えます」
「うむ、こないだライトチューンを頼んだ私のバイク、あれを見ると、きまじめで、手抜きを嫌い、やるべき事は徹底的にやる男と見た」
「それに、先ほどのお料理、作ってからここに来るまでの間に冷えることを見越したあの味付け、しかも、途中で加わった振動により一品一品が混じることの無いように留意した上で、万が一混じっても味を損なわず、むしろ味のアクセントとしての引き立て役となるように作ってありました。非常に繊細で、なおかつ気配りが届きながらも、きちんと先のことを考えられる人だと思います」
「どうだろう、お前の婿に考えてみないか?」
  とたんに頬を赤く染める明美。
「……その、最初にお会いした時から、惹かれるものを感じてはいました。けれど、結婚だなんて……今まで、そんなこと考えたことが」
「彼は今年二十歳になるようだ、お前が二歳年上の姉さん女房となるが、構うまい。GWに吉原さんのところに鍛冶打ちの見学に連れて行くことは知っているだろう? そのときにでもあたってみろ。うまくすれば、この休み中にももう一度ぐらいは会う機会があるかもしれん」
「……そう、ですね。彼には、大学の友達が持っていないような何かを感じますし」
  どうやら、取り込むことに決めたようだ。
元々、刀剣鑑定士になることなど考えても居ない士郎を排除しようとすることなど試みるだけでも無意味である上に、専門家としての研鑽を積んできた者でも追いつけぬほどの技量を見せられれば、このような判断を下すのは当たり前。
  しかも、知るものは数少ないとは言え、この冬には幾度も死線を乗り越え、更に、相性の良さ、アーチャー(未来の自分)の手助け、それに凛の魔力のバックアップがあったとは言え、人の身で英雄王を倒し、尚かつ、未来に置いては英雄となる可能性を持つ士郎が、普通の人間と違う存在として意識されるのは、ある意味必然といっても良い。
  現実に、聖杯戦争の痕(きずあと)に仮の手当がすまされ、学園の生活が再開された頃から、少しずつ、女子生徒の間での士郎の人気は高まってきている。これは、間桐慎二というそれまで女子の人気を二分していた男が入院していなくなり、必然的に学園内の女子の目が一成に集中するようになったために、何かと一成が頼りにしている"学園の便利屋"もまた注目を浴びるようになったためと言う側面はある。
  しかし、単なる"便利屋"に留まらぬそのお人好しなほどの優しさ、一切の手抜きを嫌う実直さ、そして戦争後に出てきた精悍さにより、多少は見る目のある者を中心に、周囲の注目を集め始めているのが今現在の衛宮士郎である。
  ましてや、わずか二年--この年代の二年とは非常に大きいものなのだが--とは言え、士郎達より年が上の明美ならば、そのような人より優れた点がよりよく見える。
  ならば士郎に惹かれずにはいられないのもある意味当然ではあった。
  むろん、士郎が凛のことについて惚気の一つもしていれば、この父娘も、このような選択はしなかったであろう、しかし、衛宮士郎という音に聞こえた朴念仁がかようなことをするわけもなく、よってこのような展開となったのである。
「彼が婿として跡を継いでくれれば、きっと国内だけではなく、広く海外でも活躍してくれるだろう。或いは、明治の頃に散逸した幾多の名刀の在処もはっきり出来るかもしれん。いや、彼の目利きならば、日本刀のみならず、海外の名剣、魔剣の類もきっちり鑑定し、まとめてくれるに違いない。期待してるぞ、明美」
「はい、頑張ります」


  さて、一方の士郎はと言うと、その夜、
「あ、すいません、行く前に家に電話一本入れといていいですか? この時間なんで、留守電に吹き込むだけで済むと思うんですけど」
「ああ、少しぐらい時間がかかっても構わないよ」
と、許可を貰って電話を掛けていた。
「もう一時過ぎてるもんな……」
  と、つぶやきながら、留守電に切り替わるのを待つ士郎だが、その前に電話が取られると、電話越しに、聞き慣れた愛しい少女の声が聞こえてきた。
「あれ? 遠坂、まだ起きてたんだ? ごめん、今晩帰れないかもしれない」
「え? いや、そうじゃなくって……」
「ば、俺がそんなことするわけないだろ! 俺には遠坂しかいないんだ!」
「……え、ええと、その、実はコペンハーゲンで飲んでた人たちが大喧嘩始めてさ、仲裁に入ったんだけれども……、え? いや、大丈夫、けがなんかしてないって、それで、何とか止めることは出来たんだけれども、結構な騒ぎだったんで警察が来ちゃってさ……、うん、そう、これから事情聴取。関わってた人数多いから、時間も大分かかりそうだし、うん、大丈夫だって、……うん、使っちゃいない。そう言うわけだから、帰りは明日になるから。……うん、それじゃお休み」
「そっかエミヤん、そう言えば、彼女と同棲中なんだっけ、よ! 色男!」
「うわっ! ネコさん、聞いてたんですか?」
「そりゃああんな大声で『俺には遠坂しかいないんだ!』なんて叫んでればね」
「あ……」
  気が付くと、周り中から暖かい視線が送られている。
  喧嘩していた当事者などは、「すまんなぁ、俺達のせいで愛しい彼女の元へ帰るのが遅くなっちまって」などと、頭を下げてくる始末。
「さぁさ、お巡りさんが待ってるよ、さっさと行った行った」
  と、まぁ、お人好しな正義の味方は、何も知らずに頑張り続けているのであった。
「彼女待たせちゃいけないからな、事情聴取が最初に終わるようにいっとくよ」
「!……」




  後書き

  と、言うことで、士郎君の周囲に第一の地雷散布が終了しました。
  ちなみに、永山父娘は、士郎君を過大評価しています。例えば、朴念仁なところなんて今はまだ気が付いていません。今彼らに見えているのは学園一、いや、冬木一(多分)の便利屋として活躍しまくっている衛宮士郎と同じ面だけ。ましてや凛の言う「へっぽこ」な面なんてのは……。更には士郎の抱えている歪みなんてのは絶対に……
  さて、当初の予定では、士郎君が鍛冶場に行くのも春休み中にしようと思っていたのですが、よくよく考えると、春休みってそんなに長いわけでもないので、GWにのばすことにしました。
  まぁ地雷の時限式安全装置が解除されるのは夏休みの予定なので特に問題はないのですが。
  一応春休み中のエピソードには、後一本を予定しています。

  ご意見・ご感想をここのBBSにて頂けたら幸いです。
  特に、私が気が付いてないであろう未熟なポイントの情け容赦のない指摘を頂けるとしでもSSがマシにできるはずなので、そのあたりよろしくお願いします。

MISSION QUEST

2004/10/03 初稿up
2005/01/23 一部修正

 
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