桜井淳所長は、"水戸"での雑談の中で、よく、日本の研究者は、米国の機械学会(American Society of Mechnical Engineers ; ASME)や原子力学会(American Nuclear Society ; ANS)の技術基準について、その意味も考えず、鵜呑みにする傾向があり、好ましいことでないと苦言を呈していますが、その傾向は、比較的まともな原子力機構や大学の炉物理研究者にも共通しており、どうしても、根源的な問いかけをして、これまでの根拠なき定義からのパラダイム転換を図ろうとしており、具体的には、原子力研究施設(原子炉・試験炉・臨界集合体・核破砕ターゲット・核変換炉)や核燃料サイクル施設(濃縮ウラン貯蔵容器・濃縮ウラン輸送容器・燃料加工施設・新燃料輸送容器・新燃料貯蔵庫・軽水炉炉心・使用済み燃料貯蔵プール・使用済み燃料輸送容器・使用済み燃料中間貯蔵施設・核燃料再処理施設・プルトニウム加工施設)の核的安全評価法について、未臨界の定義となる技術基準の物理的根拠の考察をしていますが、たとえば、タンクに軽水炉燃料棒を正方配列したTCA(Tank-type Critical Assembly)炉心のように、タンクに、徐々に、軽水を補給し、深い未臨界状態から臨界にする場合、事前に、モンテカルロ計算の臨界固有値計算をしておき、水位と実効中性子増倍率keff(effective neutron multiplication factor)の関係を求めておき、効率的に、臨界にしますが、計算でも求めることができますが、実験中に、炉心近傍に設置された中性子検出器によって、keff値に対応する体系の中性子数がわかるようになっており、keffが低い値から0.9くらいまでは、中性子源からの中性子によって決まる中性子数と増倍によって、徐々に増加する程度ですが、keffが0.98までは、それまでよりも多く検出され、0.98から臨界1.0までは、指数関数的に急増加し、0.99では、中性子数は、臨界の時の約100分の1になり(炉物理教育では、理論的根拠はないものの、反応度ρ=(keff-1)/keffの逆数を目安にするとしています)、0.99がいかに深い未臨界か良く分かり、米国の技術基準では、安全余裕度を考慮して、0.98以下としたり、0.95以下としていますが、0.98には、炉物理的な根拠があるものの、0.95には、0.98より小さいからより安全という程度の説明しかなく(安全評価上は何の問題もない)、明確な炉物理的根拠は、見出せず、桜井所長は、OECD/NEAの不確定会合(
http://wwwndc.jaea.go.jp/JNDC/ND-news/pdf90/No90-02.pdf
)の結論がでる前に、独自の論理(OECD/NEA不確定会合は、0.95を基準に議論を進めていますが、桜井所長は、その根拠の不確定から、基準とは認めておらず、新たな定義のしなおしを模索しています)でのパラダイム転換を図ろうとしています。