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妊婦搬送中死産:発生1年 看護師確保が課題 県立医大・小林浩教授に聞く /奈良

 ◇5月開設の「周産期センター」

 昨年8月に救急搬送中の橿原市の妊婦が医療機関に相次いで受け入れを断られ、搬送中に死産した問題から、29日で1年がたった。県内の周産期(出産前後の母子共に注意を要する時期)医療の危うさを改めて浮き彫りにした問題以降、県内の産科医療はどう改善されたのか。県立医大の小林浩教授(53)に現状を聞いた。【上野宏人】

 ◇輪番制調査で患者の動き把握

 今年2月、産婦人科の夜間・休日の1次救急に開業医らが協力する輪番制が始まった。2~4月に実施した輪番制の実態調査では、妊婦の病状や救急車利用・入院の有無などを分析、小林教授は「初めて患者の動きが把握できた」と話す。

 調査によると、1次輪番を利用した149人のうち入院患者は21人だった。年間約80人、週2人のペースとなり、「これなら患者の多い奈良市で入院できる病院を1カ所造れば産婦人科の救急に関しては解決できるはず」と小林教授は今後を見通す。

 一方で、県内では年間185人の母体搬送があり、このうち43人が県外に搬送された。小林教授は「1~3次救急の役割が明確になり、医大が受け入れる年約40人の1次救急患者でベッドが占有されなければ、県外搬送は減る」と予測する。

 しかし、中南和地域では1次輪番はまだ、休日・夜間のうち半分ほどしかカバーできていない。お産ができる病院も限られている。医大での分娩(ぶんべん)は、県の資料によると497件(05年)から635件(07年)と急増。朝患者が退院したベッドに午後には別の患者を入院させるなどし、ベッド稼働率は約160%まで上がった。

 今年5月、医大に総合周産期母子医療センターが開設され、稼働率は120%まで下がった。センター専属の医師は3人増え5人、医大産婦人科の医師も計17人から20人となり「厳しい状況に変わりはないが、医師1人当たりの負担は多少改善した」と評価する。

 同センターの最大の課題は看護師確保という。約20人が不足し、このためNICU31床のうち9床は使えていない。「他科からの応援など運用で乗り切れるよう頑張っているが限界がある」と言う小林教授は今後も、県内の産科医療の実態を明らかにする調査を継続しながら、今後の改善に生かしたいという。

毎日新聞 2008年8月30日 地方版

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