余録

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余録:ストリートビュー

 普段、どちらを向いて寝ているか、思わずベッドや布団の向きを確かめた人もいるのではないだろうか。ドイツとチェコの研究グループが今週、論文誌に発表したデータは不思議だ▲放牧中の牛がどんな方向を向いているか。世界各地で8500頭以上を調べると、多くが南北を向いていた。チェコで野生のシカ2900頭以上について、雪に残された「寝床」の跡などを調べた結果も同じで、多くが頭を北に向けていたというのだ▲詳しく調べると、地図上の南北より地磁気の南北に同調していることもわかった。渡り鳥やコウモリが地磁気を感知することは知られているが、牛やシカもそうなのか。だとすると、私たちはどうなのか。考えたくなるのは人情だ▲論文には別の驚きもある。研究に「グーグルアース」のデータが使われたことだ。衛星などで上空から写した写真を公開しているもので、自宅の屋根を見てみた人もいるだろう。そこからこんな成果を生み出したのは、発想の勝利というべきか▲グーグルアースの先には懸念もある。最近、議論を呼んでいるのはグーグルの「ストリートビュー」だ。上空からではなく、道路から撮影した写真がネット上に公開され、自宅や車、街の様子などがリアルにわかる。どうやって写しているのか、プライバシーが侵害されているのではないか、不安に思う人がいるのは当然だろう▲人間も地磁気を感知しているのか。南北を向いてすわっている時と東西を向いている時で脳波に違いがあるという報告もある。さまざまな場所で人間のデータを集めると、手がかりが得られるかもしれない。ただし、プライバシーは要注意だ。

毎日新聞 2008年8月30日 0時02分

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