現在位置:
  1. asahi.com
  2. ライフ
  3. 教育
  4. 教育問題
  5. 記事

処分限定「見せしめだ」 大分汚職、07年度以前未解明

2008年8月30日

印刷

ソーシャルブックマーク このエントリをはてなブックマークに追加 Yahoo!ブックマークに登録 このエントリをdel.icio.usに登録 このエントリをlivedoorクリップに登録 このエントリをBuzzurlに登録

写真記者会見で採用取り消しなどについて説明する大分県教委の小矢文則教育長。左は麻生益直教育委員長=29日午後4時37分、大分市、阿部峻介撮影写真採用取り消しについて説明する大分県教委の記者会見には大勢の報道陣が集まった=29日午後4時20分、大分市、阿部峻介撮影

 「不正は以前からあるはずなのに……」。今春採用された教員の一人は、勤務する大分県内の小学校で、県教委が同期21人の採用取り消しを発表したことを知り、「見せしめだ」と憤った。

 今春採用の3人が勤める佐伯市の小学校に孫が通う女性(61)は「(来週から)2学期も始まるのに、該当者がいたら子どもにどう説明するのかしら」と戸惑う。

 県教委の29日の記者会見では、取り消しが08年度分に限られたことに質問が相次いだ。07年度以前の「不正合格者」は見逃されることを指摘されると、小矢文則教育長は「根拠づけるデータがない。どうしようもない」と語気を強めた。

 県教委の教育行政改革プロジェクトチーム(PT)の作業は難航した。事件で押収されたパソコンの仮還付を7月末に受け、削除や上書きされた得点データの復元を始めたが、作成日時がわからないファイルもあった。

 「答案があれば一番いいのだが……」。今月24日、PTのメンバーは漏らした。元義務教育課参事、江藤勝由被告(52)の証言も得て、復元データが実際の得点かどうか、裏付けを急いでいる最中だった。

 教育委員の一人は慎重論を唱えてきた。「実際の得点がわからなければ、絶対に不正があったという保証がない。人の人生を軽々しく狂わせるわけにはいかない」

 県教委は会見で、江藤元参事らの証言と、復元データに矛盾がなかったと説明。県警の復元データとの照合で一致したことも根拠とし、「厳密な証拠として耐えうる相当程度の確実性が認められる」との弁護士の見解も紹介した。

 PTは過去10年間の人事担当者ら101人から事情を聴いてきた。

 「不正はありません」

 元高校教育課職員は約2時間の聴取で繰り返した。それでも、「義務教育課でこんなに不正があったのに、高校教育課でないはずはない」「世間は納得しない」と畳みかけられた。最後は「ウミを出し切るために協力してください」と懇願調だった。

 「経歴や同僚を詳しく調べていて、あらゆる角度から突っ込んできた」と振り返る校長がいる一方、口利き依頼者の名前を問われて「許してほしい」と断ると、それ以上追及がなかったと明かす調査対象者もいる。

 29日に公表されたPTの調査報告書は、不正の背景の一つに「教員の色濃い身内意識」を挙げた。

 教員の集まりは校長会、指導主事会、義務教育課長会などきめ細かい。県教委によると、大分県教職員組合の組織率は小中学校とも約88%と、全国的にも高い。

 報告書は、こう指摘する。

 「学校を中心とした社会で生活し、仲間からはずれることを特に心配している」「教員の社会では、仲間の異動や昇進の際のお祝いやお礼が根強く残っている」

 採用試験を担当したことがある県教委OBは、調査の限界を感じている。

 「徹底的にウミを出すつもりなら、外部の人間が調べる必要がある。今回わかった不正は氷山の一角にすぎない」

検索フォーム
キーワード:


朝日新聞購読のご案内

[PR]注目情報

ここから広告です

広告終わり

ジャンル別の最新情報はこちら
  • 大学
  • 中学・高校
  • 専門学校