五輪商戦まっただ中だった7月末の家電量販店の売り場=東京都千代田区
24日に閉幕した北京五輪の「特需」は、事前の期待には及ばなかったようだ。デジタル家電は健闘したものの、業界の予想には届かず。旅行業界もあてが外れた。景気の減速で消費者の財布のひもが固くなるなか、五輪の経済効果としては、試算値がある84年のロサンゼルス大会以降で最低水準との推計も出ている。
■デジタル家電は健闘
特需の目玉商品であるデジタル家電は、以前からの買い替え需要への上乗せがカギだった。調査会社BCNによると、国内の五輪商戦中(5月1日〜8月22日)の薄型テレビの販売台数は、前年同期比で約25%増。DVDレコーダーも約14%伸びた。
開幕前には、メーカー側には「今回は期待できない」との声があった。06年のサッカーワールドカップのドイツ大会の商戦では、メーカーの期待が大きすぎて、デジタル家電の在庫が積み上がった。「その教訓から、テレビメーカーが発注を控えた」(半導体メーカー幹部)という。
しかし、ふたを開けてみると、松下電器産業は7月の薄型テレビ出荷台数が前年比4割増。シャープも「テレビとレコーダーをセットで買う人が多かった」(片山幹雄社長)と、売れ筋の販売は大幅に伸びた。
7月21日から開幕直後の8月10日までの3週間で、次世代のブルーレイ・ディスク型が牽引(けんいん)したDVDレコーダーとテレビは、それぞれ4割も販売を増加。「燃料高で海外旅行者が減った分、テレビに消費がシフトした」(第一生命経済研究所の永浜利広・主席エコノミスト)という。
ただ、田中繁広・BCNチーフアナリストは「五輪効果による販売の伸び率は5%で、期待よりは弱かった」とみる。五輪効果での上乗せは少なく、市場自体の伸びが押し上げたという分析だ。