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【わが道わが友】日本郵船会長 草刈隆郎氏(5)辛抱強く規制改革の壁突破へ

2008.8.30 03:26
このニュースのトピックス財界

 オリックスの宮内義彦会長から議長を引き継いだ政府の規制改革会議とのかかわりは、前身の規制改革・民間開放推進会議時代を含め、通算で5年になる。最近は、不正な派遣労働や格差などの問題と結びつけて、規制緩和を悪玉視する向きもあるが、これは間違いだ。悪徳行為を根絶する仕組みやセーフティーネットはつくらないといけない。だが、規制改革を進めなければ日本の産業は伸びず、退化してしまうだろう。

 日本の医師のレベルは高い。医療が産業として拡大する余地がまだまだあるのに、規制が理由で患者が海外に渡っている。命を預かる医療の特殊性は言うまでもないが、規制が産業としての発展を押さえ込んでいる。端的に言えば「官が権限を放したくないから」という一点に尽きる。

 かつての優秀な官僚群は戦後の復興を先導し、産業の立て直しに重要な支え棒役を担った。しかし役割を終え、本来外すべき支え棒が、むしろ年を経るにつれて根を張り、絡みついている。この弊害は非常に大きい。そうした“官製市場”の典型が農業だ。

 農業経営は、いまも基本的に「土地を持つ耕作者が従事するもので、それ以外の人はやってはいけない」という発想だ。農業生産法人も、役員の半数以上が耕作者であることを条件とするなど規制が多く、産業として魅力のあるものになっていない。しかも、農業従事者のうち65歳以上の高齢者が6割にも達する。このまま10年たったら日本の食糧安全保障はどうなるのか。補助金も一定程度は必要だが、有効に配分されていない。規制を解いて工夫しないと農業は縮小する一方だ。

 規制改革で、もう一つ私の思い入れが強いのが保育分野だ。日本の労働人口は平成42年までに1000万人以上減るとの試算がある。労働力の維持に外国人や高齢者の活用が指摘されているが、外国人の受け入れ環境整備の歩みは極めて遅いし、高齢者にしても中核となる労働を担うには無理がある。そうなると期待できるのは女性しかいない。改革会議で保育を担当する白石真澄・関西大学教授や翁(おきな)百合・日本総合研究所理事は、非常に活動的な方で心強い。女性の働きやすい環境づくりに、規制緩和による保育の質と量の改善は緊急の課題だ。

 官製市場の壁は厚い。ねじれ国会という環境もあり、規制改革への取り組みに停滞感が強まっている。政治の推進力がなくてはわれわれは何も仕事ができないのが現実だ。既得権を取り払おうとするわれわれの仕事への応援が非常に少ないことも自覚している。だがメンバー15人の結束は固い。時を待ち、辛抱強く壁を突破していきたい。私は70歳になったら、仕事はすべて引退すると決めている。それまでは国を良くするために微力を尽くしたい。(池田昇)

 ※次回9月2日からは、宇宙航空研究開発機構理事長の立川敬二氏です。

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