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大野病院事件、検察が控訴断念

2008年08月30日

 産婦人科医に無罪が言い渡された県立大野病院事件で、福島地検は控訴を断念した。福島地裁判決は「検察側は、その主張を根拠づける臨床症例を何ら提示していない」と述べ、罪となるべき事実について立証の甘さを指摘。その意味で控訴断念は半ば予期されていたことで、地検が「新たな証拠を出せない」としたのも納得がいく。

 だからといって医療界がすべて正しかったのかというと、疑問も残る。具体的には、警察からの鑑定依頼を断ったある専門家が、弁護側からの鑑定依頼は受けて公判で証言した点だ。医療のような専門性の高い分野では、より多くの専門家に意見を聴く必要がある。なぜ捜査に協力しなかったのだろうか。

 亡くなった女性(当時29)の父、渡辺好男さん(58)が病院側に、医療スタッフの話を聞かせてほしいと訴えたが、「忙しい」と断られたということもある。

 今回の裁判は、警察・検察に対しては慎重な捜査を、医療界には「より開かれた医療」の実現を、それぞれ求めたと言えるのではないか。(北川慧一、高津祐典)

                   ◇

 無罪が確定する加藤克彦医師(40)は「ほっとしています。2年6カ月は、とても長かった。これからも、地域医療に私なりに精いっぱい取り組んでまいります」とのコメントを出した。

 一方、亡くなった女性の父、渡辺さんは「1人の命が亡くなったことを重く受け止め、医療界は変わっていってほしい。裁判が続かないからといって、落胆はしていない。今後も真相究明に向けて活動を続けていきたい」と話した。

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