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スペシャルインタビュー 桑田佳祐 30年目の夏を語る
サザンオールスターズのデビュー30周年にあたる2008年は、バンドにとっても、大きな節目のタイミングになった。
8月16日から2週にわたって、4日間開催される「真夏の大感謝祭」に先駆けてリリースされるニューシングル
「I AM YOUR SINGER」は、彼らからファンに向けてのダイレクトなメッセージであると同時に、
ライヴの大きな軸の楽曲となっていくのは間違いないだろう。
この新作について、そして新作制作の背景について、さらには夏のライヴについて、桑田佳祐に聞いていく。
 
「休止宣言は30年目の“ロープブレイク”という感じですね」
サザンオールスターズ


■このタイミングでサザンオールスターズとしての活動を休止しようと思ったのはどうしてなのでしょうか?


桑田:ちょうど今、サザンが30周年なんですけど、長年活動してくると、マンネリの部分も出てくると思うんですよ。
これまではなんとかやり過ごして、先送りにしてきた面もあった。あえて休止とは言っていないけれど、これまでもサザンとして活動していない期間も結構あったし、ガス抜きした時はあったんですよ。

■確かに、ソロ活動をやっている期間もかなりありますよね。

桑田:今回、30周年を迎えて、ライヴをやらせてもらうことはとてもありがたいことなんですけど、このまま31年目、32年目とサザンをコンスタントにやらなきゃいけないんじゃないかっていう空気を感じちゃったんですよ。でもちょっと待てよと。

30年という節目のタイミングだからこそ、ぶっちゃけた話をしたくなった。「ここで1回、サザンを止めてみたいんだけど」って。

■これまでと違って、あえて休止を宣言したのどうしてなんでしょうか?

桑田:何も宣言をしないというやり方もあるんでしょうけれど、ファンのみなさんやスタッフやメンバーに宣告しないと、示しがつかないタイミングにきてたんですよ。
プロレス用語で言うと、30年目の“ロープブレイク”という感じですよね。「ロープ、ロープ!」って。
これまではなんとか5秒以内の反則の範囲内でやりくりしてきたんだけど、いよいよロープブレイクが必要になってきた。

■活動休止はバンドを大切に思うからこそ、そして音楽を真摯に作りたいからこその決断でもありそうですよね。

桑田:楽しく仕事がしたいってこともあるし、3年前に『キラーストリート』というアルバムを出したんですが、その時にサザンとしてやりつくした感じはあったんですよ。
また新しいものを作っていくにはそれなりの時間が必要かなって。
充電も必要だろうし、もしかしたらソロ名義でやらせてもらう時間が必要かもしれないし。

■今回はあえて期限を決めていませんが。

桑田:今まではソロ活動をやる上で、おおよそ期限を決めていたんですよ。
でもそれは今となっては、ソロ活動のためにもサザンの活動のためにもならないんじゃないかなって。
ソロ活動をやるにしても、一切遠慮せずにやっていきたくなった 。
こういう宣言って、メンバーにとっても何かを突きつけてる部分もあるので、不安もあると思うんですよ。
逆に言うと、ある種、シビアになってくる。サザンにぶらさがってるだけじゃなくて、自分なりの音楽、生き方を作っていかないといけないわけですから。
そういう意味ではチャンスだと思うし、僕も含めて、一人一人が自らを磨いていって、本当にやりたくなった時に、やればいいと思っているんですよ。



「ファンの方の糸による操り人形のようなサザンって、いいんじゃないかなって」



■休止宣言の反響は尋常ではなかったのではないかと思うのですが、「I AM YOUR SINGER」はそうした状況を踏まえて作ったのですか?


桑田:休止宣言が思いの外、世の中にインパクトを与えちゃって、僕自身もびっくりしたんですよ。テレビや雑誌でもたくさんとりあげられたんだけど、まるで追悼番組のようなのがいっぱいあった。そんなつもりじゃないんだけどなって。
自分たちで発表したものがあれよあれよという間に大きな花火になっていって、非常事態、異常事態ではあったので、その中でどうしたらいいのかなって思いながら作っていた面はありますね。
だからこの曲に関しては、テクニックとかじゃなくて、お手紙ですよね。


■ファンに対してのメッセージということですね。


桑田:結局、一番大事なのはファンの人達ですから。
僕らみたいなグループが30年間やってきて、ここに立っていられるのはファンの人達のおかげであり、スタッフのおかげだから、そういう方達にお礼を言いたかった。
歌でそういう意思表示をしたかった。ただ、恋人同士でも親子関係にでも当てはまるものにしたいということも思っていました。そういう関係での感謝もあるだろうから。

■真夏の野外ライヴの光景が見えてくる歌という印象も受けました。

桑田:日産スタジアムのステージにサザンが立って歌っているイメージに向かって、作った歌でもありますね。
30年目を迎えたロープブレイクの直前のサザンがあそこで何を歌うのか。
どういう演奏をするのか。そこはすごく考えました。
始めはバラードっぽかったんですよ。テンポもかなり遅かった。でもどうもハマらない。

サザンオールスターズ
 

朗々としたバラードも、頭にかぶりものをかぶって、「マンピーのG★SPOT」みたいな曲をやるのも違う。
で、色々とイメージしていって、最終的にこの感じになりました。

■デジタルの要素もあって、ファンタジックで近未来的な雰囲気も漂ってる曲ですよね。

桑田:そういうテクノっぽさ、スペイシー感が合うんじゃないかなって。
肉体的にズドンと行くんじゃなくて、ボタン1個でおもちゃがピューッと動いて、みんなの前に出てきて、踊るみたいなイメージ。
この曲だけ、ひとつのパッケージショーとしてあるというのが30周年のライヴの絵面としてはいいかなって。
国民的ロックバンドとか、肉体をもったカリスマとか、朗々と歌い上げるアーティスト・サザンじゃなくて、ファンの方の糸によって歌わされてる操り人形のようなサザンって、すごくいいんじゃないかと思ったんです。
操り人形としての悲しみも多少はありますけど、いい意味で、ファンの方、スタッフの方の糸の中で動いてきたというのが似合うなって。

■「I AM YOUR SINGER」という言葉の中にもそういう感覚がありそうですね。

桑田:“SINGER”ってあんまり人格がなさそうじゃないですか?
「あれが食いたい」とか、「女と寝たい」とか、言わなそうだなって(笑)。
そのマリオネット(操り人形)っぽいところもいいんですよ。
北島康介がTシャツに“I AM THE SWIMMER”と書いてたらしいけど、そういう誇りもあるだろうし。
30年やってくると、シンプルに考えたくなりますよね。
ビッグなアーティストというよりも、シンガーであったり、ギタリストであったり、ドラマーであったりという方が自分に対して説得力は持ちやすいし、プライドを持ちやすい。
ファンがサザンに望んでるのもシンプルなことだと思うんですよ。
そういうシンプルな期待に対して、“イエス、アイ・アム・ユア・シンガー”って言いたいなって。


「ライヴではお客さんの気持ちに応えつつも、まずサザンを楽しむことが一番かな」



■2曲目の「OH!! SUMMER QUEEN〜夏の女王様〜」はサザンオールスターズならではのエロティックな魅力のある曲ですね。70年代的な要素もありつつ、80年代的なシンセも入りつつという。


桑田:今って、なんでもありなんだけど、だからこそ、聴く側もうまく嗅ぎわけるでしょ。
微妙な古さも新しさも伝わりやすいし、そこも含めて、しっかり聴かれてしまう。
だからこそ、さじ加減が大事だと思うんですよ。この曲に関しては、パンチが効いてるとか、ちょっとエッチな感じとかいった、いわゆるサザンの良さの王道を本人達が楽しんでやってる感じがうまく出せたなと思ってますね。

■歌詞はどんなことをきっかけにして作っていったんですか?

桑田:資生堂からCMのお話をいただいて、“夏美人”といったキーワードをポンと投げかけられて、作っていきました。
これも広い意味でのコラボレーションだし、他人からそういう要素を投げ込まれるのは幸せですね。
CM映像を見て、水着のお姉さんが海岸でたわむれるのっていいな、やっぱり好きだなって思いながら、書いた曲でもありますね(笑)。

■バンドのグルーヴも気持ちいいですね。

桑田:これは今年、サザンとして最初にやった曲なんですよ。ドラムがいい音で録れたなって。
いいスタートが切れて良かったなって思っていますね。
こういうマイナー・コードのロックって、何年かやってなかったので、この慣れ親しんだ感じに向かって、ワクワクしながらやっていく感じはありましたね。 あと、この曲もライヴというキーワードはありました。
「I AM YOUR SINGER」と対極にある曲かもしれないけど、どちらも日産スタジアムに気持ちは飛んでるという。

■その「真夏の大感謝祭」はどういうものにしようと思っていますか?

桑田:きっとファンの方達も“この夏はサザンと一緒にお祭りをやろう”って燃えてくれていると思うんですよ。
だからサザンは真夏の操り人形でいようかな、夏祭りの青空教の神主でいようかなって思っていますね。


サザンオールスターズ

■このライヴが終わると、しばらく間があくわけで、そういう意味でも特別なステージになりそうですね。

桑田:お客さんはいろんな気持ちを持ち寄ってライヴに来てくれると思うんですよね。
もちろんその気持ちにしっかり応えたいし、僕も自分のできることはめいっぱいやりますけど、ともかくまずはサザンを楽しむのが一番かな。
きっと水を撒いちゃうんだろうなとか、ケツを見せちゃうんだろうなとか、予想しているファンの方々もいると思うし、実際にそういうこともやるかもしれないとは思うんですよ。
90パーセントは記号化されたサザンを楽しんでもらって、10パーセントぐらいは首かしげてもらいたい。
“あれ? どうしちゃったの?”って。
それぐらいの宿題というか、謎かけは残しておこうかなと思っています。

     取材・文:長谷川誠  

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