政府が総合経済対策を決めた。焦点だった「定額減税」は年度内の実施が盛り込まれた。バラマキ批判も覚悟しての自民、公明両党の合作である。財政健全化はどうした。総選挙狙いが露骨すぎる。
原油価格の高騰で中小企業が倒産しないよう資金繰りを後押しする。高速道路料金の引き下げ、燃油高騰に苦しむ運送業など個別業種向けの支援策も拡大する。このほか住宅ローン減税の拡充、公立小中学校の耐震化などを急ぐ。
決定された総合経済対策は、事業規模にすれば十一兆円、うち中小企業の資金繰り支援は八兆円という。これに基づいて政府は本年度補正予算案を編成する。規模は二兆円程度になるという。
経済対策には、与党の公明党が求めていた中・低所得層向けの定額減税の「年度内実施」が盛り込まれた。赤字国債の発行に直結しかねないことで政府・自民党は即時実施に難色を示し、規模や方法は「年末の税制抜本改革で検討する」ことで妥協が成った。
いずれも後退局面に入った景気のてこ入れを大義名分にする“大盤振る舞い”だが、近づく総選挙を意識しての、いかにも集票目当てのバラマキ感がぬぐえない。
所得税、住民税から一定額を差し引く定額減税は、高所得者層に手厚い定率減税に比べ、税金を納める中・低所得者に恩恵がある。公明党はこれを「譲れない一線」として強硬に主張した。
財政規律の必要性を強調してきた福田康夫首相も、波乱含みの臨時国会の乗り切りへ、公明の主張に大幅譲歩した。自民の執行部にも、次の総選挙で公明の協力を仰がねばならない事情があって、結局、要求を受け入れた。
小泉政権以来の「改革」路線が風前のともしびであるように見える。年末の税制論議に向けて早くも、赤字国債の増発も視野に第二次補正予算が組まれるだろう、と公言する与党幹部たちもいる。
それにしても一時的な“痛み止め”のようなバラマキが、さしたる景気浮揚をもたらさず、財政赤字を増大させるだけだったことは記憶に新しい。そんな過去の反省はどうしたのだろうか。
旧来の自民党政権は不況になると赤字国債を発行し、公共事業に巨額の予算をつぎ込んだ。その結果、国債発行残高は五百兆円超にまで積み上がっている。いつか来た道をまた歩もうというのか。
福田政権に国家経営の確たる指針が見えない。大丈夫か。
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