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【社説】

記録的豪雨 水害の常識を捨てねば

2008年8月30日

 東海・関東地方を激しい豪雨が襲った。道路が川に変わり、いたるところで住宅が浸水、交通機関も不通となった。従来の水害対策を根底から見直す必要があるのではないか。

 雨で一寸先も見えない。愛知県岡崎市で最大時間雨量一四六ミリを記録、市内の全十四万世帯に避難勧告となった。東海豪雨の最大時間雨量九七ミリ、二〇〇四年九月に三重県宮川村(現・大台町)に土砂災害をもたらした台風21号の一三九ミリを超える。

 停滞する前線を暖かく湿った空気が入り込んで刺激し、積乱雲の群れを発生させ、今回の大雨を降らせたとみられている。

 わが国では一九九六年から時間雨量五〇ミリ以上の集中豪雨の発生回数が急速に増えている。

 地球温暖化との関連を疑う声もあるが、確たる根拠はない。しかし、集中豪雨の頻発が当たり前になった今、これまで水害対策の常識とされたことを、徹底的に再検討しなければならない。

 七月下旬、神戸市・都賀(とが)川で児童が死亡した事故が示すように、集中豪雨で川は一瞬のうちに増水する。首都圏や名古屋圏などアスファルトとコンクリートで覆われた都市の市街地では、行き場のない雨水が道路、低層の住宅や地下施設にあふれた。

 市街地の雨水を下水やポンプで川へ流せば、川の水位をさらに上げ堤防決壊の危険を大きくする。また市街地を流れるのは中小河川が多く、治水安全度は低い。

 従来の治水の中心は、増水しても安全に川で流すことだった。このためダムによる洪水調節、河床しゅんせつで流水量を増加、堤防強化などを進めてきた。

 これらの整備だけでは壁に突き当たるのも明らかである。

 道路や公共施設の敷地に雨水の浸透施設や、豪雨が過ぎてから放流する一時貯留施設を設けるのは対策の一つである。東海豪雨を経験した自治体で施工済みだ。

 洪水や土砂災害の情報や警報はきめ細かく気象庁などが提供するようになった。浸水予想のハザードマップ整備も進んできた。これらを基に自治体は人命を第一に考え、空振り覚悟で早めに避難を呼び掛けるべきだろう。

 高度成長期以来、防災への配慮を無視した安易な市街化区域の指定も目立つ。これからの指定に慎重を期すのは当然だが、指定済みの区域でも浸水を繰り返したり、急傾斜地の近くなど危険個所は、見直しを急ぎたい。

 

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