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NIKKEI NET

社説2 勝つために語ったオバマ氏(8/30)

 米民主党大会で大統領候補に指名されたバラク・オバマ上院議員の受諾演説は、選挙に勝つことにこだわる内容だった。アフリカ系米国人が2大政党で初めて大統領候補になった歴史的事実に対する微妙な扱いにそれが見てとれた。

 オバマ氏は「変革」を掲げる。それを象徴するのは、ケニア人男性とカンザス州出身の白人女性との間に生まれた自身が大統領候補になった事実だが、それを強調する戦術は、選挙戦のなかで有利にも不利にもなりうる。

 このためか、受諾演説の冒頭に近い部分でオバマ氏は、4年前の民主党大会での自身の演説を振り返る形で比較的あっさりと触れた。さらに締めくくりの部分で「私には夢がある」の一節で知られる公民権運動の指導者キング牧師の有名な演説に言及したが、その程度にとどめる計算が感じられる扱いだった。

 11月の一般投票に向け、オバマ氏に必要なのは、ヒラリー・クリントン上院議員との激しい予備選でできた民主党内の亀裂の修復である。クリントン支持者のうちオバマ支持になったのは半数以下とする世論調査の結果もあり、受諾演説は修復を目指す重要な機会とされていた。

 したがって演説の冒頭部分で大会運営関係者に続いてクリントン氏の名前を挙げて謝意を表した。共和党が来週の党大会で大統領候補に正式に指名するジョン・マケイン上院議員に対する批判にも多くの時間を割いた。いずれも11月に勝つために不可欠と考えたからだろう。

 米大統領選挙の見通しを立てるうえでいくつかの通説がある。例えばそれぞれの候補者の支持率は党大会の後に跳ね上がるとする党大会効果である。9月の第1月曜日の米国の祝日「労働の日」明けの世論調査の数字で11月の結果がわかるとする説もある。

 オバマ氏の支持率は党大会効果で上昇するだろうが、共和党のマケイン氏がオバマ氏を抜く結果が出た民主党大会前の世論調査もある。共和党大会は「労働の日」に始まる。党大会効果を考えれば、今回は「労働の日」明けの世論調査を見ても11月の結果を予測できないのは確かだろう。

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