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2008年8月30日

◎減税先送り これでは景気回復おぼつかぬ

 政府が発表した総合経済政策は、総額が十一兆円と規模が大きいわりに予算措置を伴う 「真水」部分が二兆円ほどしかなく、迫力に欠ける。肝心の減税について、定額減税の年度内実施が盛り込まれただけで、実質的な「先送り」では、評価のしようもない。これでは消費刺激の効果に乏しく、景気回復はおぼつかないだろう。

 定額減税は公明党が強く主張してきた低所得者向けの所得税・住民税減税で、どちらか というと弱者救済の意味合いが強い。効果を疑問視する自民党との間で調整が難航したが、公明党への配慮を優先する方向で決着した。規模や実施方法は今回の事業・予算に含まれておらず、年末の抜本税制改革時に検討される見通しである。もし公明党の顔を立てる程度の小規模なものに終わるとしたら、やらぬよりはましという程度の効果しかないだろう。

 自民党が減税に及び腰なのは、いわゆる財政再建論者の抵抗が強いためである。財政再 建論者が減税の効果を否定するのは、あくまで弱者救済にスポットを当てた小規模な減税を想定しているからであり、今回の定額減税に多くを期待できない理由もそこにある。しかし、定額減税を小渕内閣が実施した「定率減税」クラスの本格減税として思い切るなら話は違ってくる。景気回復に伴って廃止された定率減税のように、所得税で二兆五千億円、個人住民税の課税ベースで八千億円もの減税を実施すれば、景気刺激に絶大な効果が期待できるはずだ。

 政策決定を受けて政府は、予備費や〇七年度決算の余剰金などを活用した補正予算を編 成するという。赤字国債の追加発行なしで済むなら、それはそれで結構なことだが、私たちが繰り返し主張している「霞が関埋蔵金」の活用はどうなったのか。町村信孝官房長官が埋蔵金について、「すべて今後の検討課題」などと明言を避けたのは、納得しがたい。

 埋蔵金があるなら、それを減税の原資とし、国民に返すべきだ。家計が潤わぬ限り、個 人消費が増えることはなく、景気回復の道も開けない。

◎全国学力テスト 早くも不要論が出るとは

 二回目となる全国学力テストの結果が公表され、学力改善の課題や都道府県ごとの成績 がほぼ前年と同様な結果を示したことで、早くも一部に「税金の無駄遣い」などといった学力テスト不要論がせり出してきたのは残念である。

 石川県、富山県とも、昨年の成績をもとに学校ごとに学力向上プランを策定し、底上げ をめざして授業の改善に生かしている最中である。今回のテストで、昨年と大きく異ならぬ課題が浮かび上がったことは、改善策をより一層確実に進めていかねばならないことを示している。学力向上策の成果が出るのは少し先になるだろうが、その成果を把握する意味でも、全国レベルで成績を公平に比較できる学力テストは必要である。

 学力テスト不要論の背景には、テストの成績を市町単位で公表しない理由としてよく使 われる「学校の序列化や競争の激化を生む」といった考えもあるかもしれない。しかし、経済協力開発機構が一昨年、加盟国の高校生に実施した学習到達度調査で、日本の科学的応用力の順位が二位から六位に下がったように、応用力を中心に、国際社会でも日本の子どもの学力低下がはっきり示されている。

 そんな中で、教える側、学ぶ側双方に、健全な競争の刺激を与えることは意味があり、 また、教育の課題を地域ぐるみで共有するためにも、テスト結果を公表する自治体がもっと増えていいだろう。

 今回の学力テストでは、石川、富山とも、前回と同様、いずれの教科でも全国平均を上 回る結果となった。石川では、小学校の応用的分野で、国語、算数とも昨年より大きく順位を上げ、富山では、いずれの教科も五位以内の成績を維持した。福井も含め、北陸の成績は全国で群を抜いているが、結果を分析し、学校教育の改善を進めてほしい。

 全国的に共通する課題は、基礎知識の活用力である。石川県では対策として、大学教員 ら支援アドバイザーの学校派遣を始めたが、テストによって問題意識が高まった結果と言えよう。今後も学習指導に生かしていきたい。


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