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もういい加減、海外NGO活動はやめませんか?―「ペシャワール会」伊藤和也さんの悲劇をくりかえさないために

難波和郎2008/08/29
アフガニスタンで支援活動中に非業の最期を遂げた「ペシャワール会」の伊藤和也さん。この事件を聞いて、私は改めて、外国でのこうしたNGO活動に疑問を感じた。日本社会では彼らの行いは必ず賞賛され、通常、批判は批判であるというだけで採りあげられない。だが冷静に考えればこれはおかしいのではないか。マザー・テレサの「愛はまず手近なところから始まります」という言葉を受け止めるべきだ。
アフガニスタン NPO・NGO NA_テーマ2

 「ペシャワール会」の伊藤和也さんが非業の最期を遂げ、彼の無事解放を待ち望んでいた人々には残酷な結末となった。何よりご本人が無念だったろう。自分の死以上に、自分に期待してくれた人々のもとに無事に帰れないことは、何よりもつらいからである。

 彼の仕事は立派である。戦乱で荒れたアフガニスタンの土地を自分の学んだ農業の知識によって回復させようとした。その志半ばでたおれたのである。悲劇である。

 彼の志に水を差すわけではない。だが、私は外国でのこうしたNGO活動には疑問を持っている。特にそれに従事する人々の純粋な熱意と善意に対して危惧を抱くのである。危ないからやめなさいと言われてやめますというような人々ではない。自分の信念を貫く意志の強さと行動力を持っている。だから危ういと思っている。

 少し意地の悪い見方をしてみる。このようなNGO活動をする人の中に顕示欲と賞賛を受けたい気持ち、また、人々に感謝されたり尊敬されたいという欲望が見え隠れしていないだろうか。活動内容は頭の下がることばかりである。日本では、彼らが活動報告をすれば必ず「偉いですね」「立派ですね」という賞賛の声がわき起こる。そこには批判を受け入れるゆとりはない。批判は多国籍企業の横暴と軍隊を派遣した国、そして政府要人など偉い人々の無策に集中する。自分も現地へ出向いて活動するつもりがなければ、黙って彼らを賞賛するのが無難であると考えられているのかもしれない。

 だが冷静に考えればこれはおかしい。

 海外だけでなく、日本にも問題は山積みだ。農業問題だけをとっても、荒れた土地は多いし、食料自給率は先進国の中では壊滅的である(関連サイト)。亡くなった伊藤さんはまず日本で活動するべきだったのではないか。今の日本でなら、少なくとも銃弾に倒れることはなかっただろうし、ご両親を悲しませることもなかった。世論には今回のできごとを美談にする動きもあるが、「命を粗末にした」と私はあえて批判したい。

 だが、日本には彼の熱意と野心に応えられるだけの仕組みがなかったのかもしれない。

 NGOの中には、そのあふれんばかりの熱意と善意に支えられた行動力のために、独り善がりな考え方に陥る団体も多い。そして彼らは普通、他者からの批判を許さないのである。だがアフガニスタンのことはまずアフガニスタンの人に任せるしかないのではないか? あるいはそれが出来ない事情も国際社会にはあるのだろうが、面倒でも私たち日本人は選挙を通じてしかその事態を変えることは出来ないのではないか。それもりも大事なのは、今ある自分たちの日常をいとおしむ気持ちだろう。

 マザー・テレサが初来日の時に述べたと言われる言葉を思い出す。

 「日本人はインドのことよりも、日本のなかで貧しい人々への配慮を優先して考えるべきです。愛はまず手近なところから始まります(1981.4)」
◇ ◇ ◇
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【参考サイト】
ペシャワール会
日本アフガンNGOネットワーク(JANN)
日本アフガンNGOネットワークによる、アフガニスタン復興支援に関する要望書 2007年12月13日

ご意見板

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[36593] 海外撤退は賛成しませんがいい記事です!!
名前:大沼裕人
日時:2008/08/29 23:27
確かに
「日本にも困っているやつはいるだろう」という思いは、
もっともなご指摘です。

ですが・・・どちらが重症なのかを考えて海外を選択したということでしょう。

佐藤某氏のように、編集権にまで嘴を挟むのより100倍ましです。
[返信する]
[36585] 新聞社のプライドは?
名前:佐藤折耶
日時:2008/08/29 20:15
いくらなんでも、こんなものがトップ記事というのには、心底呆れました。
最近のJANJANは迷走しているとは感じていましたが、いくらなんでもこれは論外でしょう。
こんなんでは田中記者などの優れた記者の意欲がなくなってしまうのではないでしょうか。

[返信する]
[36581] NGOが国境に縛られなければならない理由はない
名前:末光健志
日時:2008/08/29 17:45
人の生活も、企業の活動もボーダレスになっている時代に、NGOの活動やボランティア活動などが国境に縛られるべきだとする記者の意見に驚きました。

彼は、自分の持つスキルに照らして、自分をもっとも必要としてくれる人たちのところで、自分でリスクを背負ってでも国際協力活動をしたかったのだと思います。

私は海外で生活しても日本人としての自覚や誇りを失うことはありませんが、海外の友人と日本の友人を国籍だけで区別して日本人だけを優先することも決してしません。
[返信する]
[36580] ペシャワール会のアフガンでの活動は日本のNGOの最良の成果です!!
名前:佐藤弘弥
日時:2008/08/29 13:12

九鬼信さんの記事『「ペシャワール会」伊藤和也さんは国葬にすべき』の最後に、私は

「もう時期国会がはじまりますが、今回の伊藤和也氏の悲劇が、?あらぬ方向に利用されたりしないよう、連日流されるアフガンの状勢に関する報道には、注意をして見極める「メディア・リテラシー」という視点が大事・・・」書かせていただきました。

これはこの悲劇が、プロパガンダとして喧伝される危険性について警鐘を鳴らしたつもりでした。つまり、今回の悲劇が、政治的に利用されれば、「アフガンへ地上部隊は危険。だから海上給油で対テロ。際貢献がベターな政策」となります。また国民意識のレベルで、本記事もその傾向が多分に見受けられますが、「だからNGO活動は危険」という短絡的な見解が多勢を占めて、「ペシャワール会」のような地元に溶け込むような地道な市民レベルの国際貢献を結局「否定」することになり、最後には「バッシング」にまでにエスカレートする危険があることを指摘したものでした。

この「ペシャワール会」の現地のリーダーは中村哲医師ですよ。彼の長年に渡る貢献は、それこそマザー・テレサとは行かないかも知れませんが、今後ノーベル平和賞を受賞するかもしれないような人物です。このJanJanには、「ペシャワール会」の地道な活動と中村哲医師の肉声。現状報告が添付されていますので、是非このNGOがどのような形で、国際貢献をしているかを、確信していただきたいと考えます。

最後にマザー・テレサの「言葉」が引用されていますが、この引用は、もし中村哲医師がリーダーシップを執っている「ペシャワール会」に向けられたものだとすれば、それは間違いであり、著しく「ペシャワール会」と中村医師と志半ばで亡くなった伊藤和也さんの名誉を毀損する可能性がある記事ではないかと思います。

マザー・テレサがこの言葉を言った真意は、この言葉は、日本でもアメリカでも言った言葉だと思いますが、漠然とマザー・テレサの診療所に入ってボランティアをしたいという若い女性に向かった発したものです。もしもマザー・テレサが、中村哲医師の行動を称して、「あなたは危険な地域からは徹底し日本で活動をすべき」とアドバイスなど送るでしょうか。

またマザー・テレサは、自分の身を投げるようにして、祖国のアルベニアから18歳でインドにやってきた女性でした。彼女がボランティアに飛び込んだきっかけは、インドの修道女の女性でした。考えてみれば、これは今回亡くなった伊藤和也さんの動機と似ていると思います。

朝日新聞(8月27日)に彼の志望動機を綴った手記が記載されています。
その中に、こんな文章があります。
『・・・私が、アフガニスタンという国を知ったのは、2001年の9・11同時多発テロに対するアメリカの報復爆撃によってです。 ・・・「アフガニスタンは、忘れさられた国である」

 この言葉は、私がペシャワール会を知る前から入会している「カレーズの会」(アフガニスタンの医療や教育の支援活動をしているNGO)の理事長であり、アフガニスタン人でもある医師のレシャード・カレッド先生が言われたことです。今ならうなずけます。

私がなぜアフガニスタンに関心を持つようになったのか。

 それは、アフガニスタンの復興に関係するニュースが流れている時に見た農業支援という言葉からです。

 このこと以降、アフガニスタンに対しての興味を持ち、「風の学校」(海外で協力活動をする青年を育てるNGO)の設立者である中田正一先生(故人)の番組、偶然新聞で見つけたカレーズの会の活動、そして、カレーズの会の活動に参加している時に見せてもらったペシャワール会の会報とその活動をテーマにしたマンガ、それらを通して現地にいきたい気持ちが、強くなりました。 ・・・ 』
(http://www.asahi.com/national/update/0827/TKY200808270302.html)

こんな動機で入ったのが伊藤さんなのです。彼は4年間で、現地の言葉を覚え、現地に溶け込みました。彼を死なせてしまったことを、現地の人も「恥ずかしい」とまで言っている。彼の行動は、日本のNGO活動の最良の成果だと思います。

それでも、難波和郎記者は「NGOの中には、そのあふれんばかりの熱意と善意に支えられた行動力のために、独り善がりな考え方に陥る団体も多い。そして彼らは普通、他者からの批判を許さないのである。だがアフガニスタンのことはまずアフガニスタンの人に任せるしかないのではないか?」と主張されるのでしょうか。
[返信する]
[36576] 毎度お馴染みの決まり文句ですが
名前:紅下和樹
日時:2008/08/29 11:52
>亡くなった伊藤さんはまず日本で活動するべきだったのではないか。

これはいつも出てくる意見ですが、結局のところ、海外で活動する人たちに対する嫉妬でしかありません。

こういう意見を採用していたら、いつまで経っても発展途上国の貧窮は改善されず、テロリズムを生む原因となり続けます。さらに言えば、日本政府が行っている海外援助は、まず国内の貧しい人たちをすべて豊かにしてから行うべきだということになってしまいます。そんな状況は成立するはずもない理想でしかありません。あり得ない前提を立てて、物事を否定するのが正しい態度とは思えません。

ペシャワール会が公開した伊藤さんの志望動機を読んでみれば、農業技術の発展が活動の目的ではなかったことは明らかです。「農業の分野に関しても、経験・知識ともに不足していることは否定できません。」と伊藤さんは書いています。しかし、彼はこうも言っています。「私が目指していること、アフガニスタンを本来あるべき緑豊かな国に、戻すことをお手伝いしたいということです。」

伊藤さんはアフガンの農業を自律させるため尽力したかったのであり、すでに確立されている農業をさらに発展させることは考えていなかったと思われます。

国際赤十字社をはじめとする、国際的な海外支援の枠組みが、恐ろしく発展した兵器の脅威から人びとを救ってきたのは否定しようもありません。こうした活動が戦争をより起こしにくい世界にしてきたのです。まだその理想は達成できていませんが、どれだけ改善されてきたかは歴史を見れば明らかです。それをすべて捨てるのは、人類の歴史を後退させることです。

もちろん、活動について反省点を洗い出し、殉職者を出さないように対策を立てる必要があります。しかし、それはペシャワール会の自主的な判断に任されます。
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