高度医療評価制度、初の承認を報告
今年4月に創設された「高度医療評価制度」の最初の適用対象となっていた「腹腔鏡補助下肝切除術(部分切除と外側区域切除を除く)について、厚生労働省は8月27日の中央社会保険医療協議会(中医協、会長=遠藤久夫・学習院大経済学部教授)で、同技術を先進医療として承認したことを報告した。先進医療費用(自己負担)は44万9000円(1回)、保険外併用療養費(保険給付)は73万4000円。実施できる医療機関は、岩手医科大附属病院に限られる。
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今回、先進医療として承認された「腹腔鏡補助下肝切除術」の適応症は、原発性肝癌、転移性肝癌、肝良性疾患で、先進性について厚労省の宇都宮啓企画官は次のように説明した。
「従来は、お腹を開いて肝臓がんの大きな切除を行っており、術後の平均在院日数が15日だった。しかし、腹腔鏡を使って、より小さい切開創にすると、患者さんの負担は軽減され、平均在院日数は7日になる。今回の技術は、肝臓を切離する前に肝臓の離断面をラジオ波で前凝固するところが新しい。侵襲性が低く、患者さんの負担が少ない」
説明に対し、遠藤会長は「未承認の医薬品、医療機器のうち、対象となったものは何か」と確認。宇都宮企画官は「ラジオ波の凝固」(医療機器)と回答した。
遠藤会長は「未承認があるのが一つの特徴なので、次回からは、未承認であるのが『薬』なのか『医療機器』なのか、承認の理由が分かるように示してほしい」と求めた。
この日の総会では、適応症を甲状腺髄様癌とする「PET遺伝子診断」を「第2項先進医療」として承認したことも報告された。甲状腺髄様癌は、遺伝性と非遺伝性(散発性)に大別され、遺伝性かどうかで治療法が違う。報告によると、「PET遺伝子診断」は、約97%以上の遺伝性症例で遺伝子変異を証明できるという。
【高度医療評価制度】
高度医療評価制度は、薬事法の承認などが得られていない医薬品や医療機器を用いた医療技術でも、一定の条件を満たせば保険診療との併用を可能にする仕組みで、「薬事法の承認前でも保険診療との併用を認めてほしい」との要望を受けて創設された。現在の制度では、治療の一部に未承認薬などを使うと、保険が適用される部分も含めて原則として患者の自己負担となる(混合診療の禁止)。
しかし、薬事法の承認などが得られていない医薬品や医療機器を使用した医療技術であっても、厚労省医政局内に設置する「高度医療評価会議」で、同技術の安全性や有効性などが認められれば保険診療との併用が可能になる。ただ、薬事法上の“縛り”がない代わりに、実施できる医療機関の基準が厳格になっており、「特定機能病院」など高度な医療を提供している一部の病院に限られる。
このように、「高度医療評価会議」(医政局)で承認された後、「先進医療専門家会議」(保険局)で先進医療として承認する流れについて、厚労省は通知の条項から、「第3項先進医療」と呼んでいる。これに対し、薬事法の承認などを受けた医薬品や医療機器を用いた医療技術を「先進医療専門家会議」(保険局)で承認する従来の流れを「第2項先進医療」と呼ぶ。
更新:2008/08/29 03:22 キャリアブレイン
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