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天声人語

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2008年8月29日(金)付

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 釣れた釣れた、さあ帰ろうという時に、水の底から「置いてけ〜置いてけ〜」の声。江戸に伝わる「置いてけ堀」だ。霞が関村の農水堀にも、昨年来、通りすがりの政治家があれこれと置いていった。地位に名誉、将来まで。あの声がまた、聞こえてきた▼農水相、太田誠一氏の政治団体が、家賃いらずの秘書宅を「主たる事務所」と届け出て、事務所費や人件費を計上していた。この支出に実体があるかどうかが問われている。氏を「育てる会」なる団体は、実のところ、どれほど育てたのか▼農水相といえば、安倍内閣で「政治とカネ」の鬼門だった。事務所費にしても、多くの政治家が釈明に追われた因縁の費目だ。それを踏まえたはずの、改造内閣の身辺調査。ザルどころか真ん中に大穴である。残り少ない信頼の水が、音を立ててこぼれている▼この際、太田氏は堂々と領収書を示し、歯切れよく説明してほしい。口が重い人ではない。中国製ギョーザの中毒事件では「消費者がやかましいから(国内対策を)徹底していく」と言い放った。そう、国民は政治家のカネ繰りにも余計な関心を寄せる、いや、やかましい▼耳を疑う「集団レイプをする人はまだ元気があっていい」は5年前。古傷の再録は本意ではないが、大臣という地位を得た後の「生傷」がいけない。選んだ人の眼力も怪しい▼「安心実現」内閣だという。民の心配ごとが山とある時、危機感を欠いた「慢心失言」内閣では、有権者からおいてけぼりを食らうだろう。秋風に乗り、政権末期のにおいが漂う。

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